何故、ホルムズ海峡が出てきたのか。
安倍氏は分かりやすく安保法制を説明するということで、ホルムズ海峡の機雷除去を事例として挙げた。あるいは子供を抱えたお母さんの日本人の救助も事例に挙げた。確かに具体的なことだから、この法律を考える上では参考になる事例だと思う。事例を上げれば、賛成に回る日本人が多いいだろうと考えたに違いない。それは人情に訴えかけようという母子の姿と、アベノミクスで、日本人はお金に弱いという成功事例を体験したからだろう。こうすれば儲かるということを説明すれば、学者の主張する憲法違反ぐらい、無視しても国民の支持は高まるだろうと考えたのだろう。原子力発電所の再稼働ですら、経済のために必要だと主張すれば、通りそうだと読んでいる。ホルムズ海峡が封鎖されれば、石油が来なくなる。石油が来なくなれば、日本の経済は崩壊する。日本の存立が脅かされる事態である。このように、紙芝居まで出して、分かり易く説明したのだ。ところが、この分かりやすい説明こそが、実に分かり易く憲法違反だったのだ。
それ以来、安倍氏の説明は分かりにくい抽象論に終始することになった。誰が考えても、石油が来なくなるからと言って、自衛隊が戦闘地域の機雷を除去して、イランや、オマーンと戦争を開始することが、三要件による日本人の生命の安全を守る活動とは思えないからだ。その前に、イランや、オマーンと国際紛争を平和的に解決するための努力を行うべきと、憲法に書いてある。その平和的努力の説明は抜きにして、母子の救助と機雷除去の話である。日本国憲法の精神から言えば、日本国の存立が、ホルムズ海峡の石油輸送に依存しているのであれば、常日頃政府がどのような平和的努力を重ねているかが重要であろう。その平和的努力を抜きに、突然機雷除去の仮想敵国にされた、イランやオマーンにしてみれば、日本がどれほど常識のない国に見えていることだろうか。自国が日本の存立を脅かす事例に挙げられ、いつでも戦力を持って対抗できるように、法律を変えようというのだ。それを積極的平和主義というのだからあきれる。
日本という国が、経済のためなら戦争も辞さないという、経済至上主義の国であるということを世界に宣伝しているのである。まことに恥ずかし安倍政権である。国民はお金に弱いに違いないと、石油を持ち出せば納得するだろうと、分かりやすいだろうと、見くびっている証拠だ。恥ずかしいのは安倍政権であって、日本国民はそこまで卑しくはないと信じたい。そこで本音である中国を仮想敵国とした、中国覇権主義への対抗説が浮上してきた。黙っていたら中国にやられるぞという脅しである。中国の人権侵害のひどさを見れば、日本人もあのように中国人から、ひどい目に遭うという恐怖の宣伝である。しかし、中国の覇権主義の根底は、経済主義である。経済的に優位に立とうとしている。膨大な人口と、広大な国土を基盤として、世界での経済競争でのし上がろうとしているのだ。またそいうした能力の高い民族だと思う。隣国の経済成長は本来であれば、日本の喜ぶべきことである。
ところが、中国の成長を喜べないのが、日本出身のグローバル企業である。独裁資本主義という特殊な経済体制の中国は、グローバル企業にはとても手ごわい相手なのだ。日本発の企業も負けてなるものかと、アメリカと組んで対抗しようとしている。それに操られているのが安倍政権なのだろう。グローバル企業の利権のために、中国と対抗する構図。だから中国は日本を占領して、日本人を奴隷にでもしかねない人たちだと、そういうイメージを作り上げようとしている。一般に日本の右翼は明治時代のように、白人には卑下して、アジア人にはえばりたいという人たちのようだ。私にはアメリカも中国も変わらない。アメリカは日本人を奴隷にしないで、上手く利用している。中国も、日本を利用したいだけだ。沖縄のどこかの島が占領されるなどと、デマを流す自民党系の人が絶えない。外国と仲良くしようという平和主義で行こう。