自治体消滅

   

瀬戸内の島 10号 瀬戸内を行くフェリーの中で描いたもの。瀬戸内の土の色は魅力がある。

2040年には自治体の半分が消滅する。日本創成会議の報告である。全くその通りだと思う。この予測は、私の肌感覚では、だいぶ前からの現実である。もちろん過疎地に人が全くいなくなる訳でもないが、集落が消え、自治体が消えることは確かだ。今の日本の方向は、世界との無理な競争に明け暮れている。それ以外生き残る道はないと、あえいでいる。墜落しかかった飛行機が、無理にエンジンをふかしているのだから、空中分解の危機が迫っている。何とかソフトランディングの道を探す以外にないことに気づかなければならない。誰にもそう感じられているのではないか。何故、自治体が消滅するのか。若い女性がまずいなくなるのだそうだ。若い女性が一番、暮らしの場所の移動の可能性が高い。田舎が嫌いということもあるのだろう。若い女性が自由にどこに行っても良いと言われれば、その時代の流行しているところにゆく。そういうことに一番敏感なのだから、当然である。田舎で百姓やりたいという若い女性は特例である。

都会の方がいいというのは、世界中の傾向だろう。田舎の人間関係に辟易するという人が普通。ふるさとの風景はいいのだが、ふるさとの人間は嫌だ。こういう人には良く合う。田舎にはパチンコやキャバレーがないから、若い者には住めないと言ったのは田中角栄氏だ。世界のどこにでも行ってみたいという夢を持つのが、若い人でなければ困る。しがらみとか、生活とか、親とか、資産とか、そこで暮らしてゆこうかなと引き留めるものがあるから、何とか田舎でも我慢した人が多いのだろう。しかし、若い女性は一番身軽だ。都会で、生きて行ける可能性が一番あるのかもしれない。実はこの女性が減少する地域の予測図には、西湘地域も入っている。私の住んでいる辺りは当然入っている。私は当然そうだと考えているが、現状では、私が越してきた14年前は、70軒だった集落が現在86戸である。このほか自治会には入らない家が2軒あるらしい。小田原は人口減少だが、久野舟原は人口増加である。これはなぜか。

小田原市全体では、2040年では若い女性は38%減少するとされている。50%を越えると地域が消滅するとされているらしいので、危ういところまで行くということだ。仙台の一部や安曇野市と同じ位に推計されている。こういう推計以上に減少すると考えた方がいい。政府のやり方では、切り捨てられているからだ。女性の登用とか、少子化対策とか、待機児童を無くすとか、口先では言うが、現実を見ればその反対のことが起きている。弱者がさらに追い詰められてゆくのが今の経済競争重視の結果と想像しておくしかない。転がり落ちている球は、落ちてからしか戻すことはできない。人口減少を本気で留めるなら、中途半端なことでは、到底無理である。フランスが成功例として最近いわれる。様々な、政策的な対策を徹底したということだ。そうした政策の効果が上がった背景に、フランス社会の地方尊重の精神があることも見て置く必要がある。そもそも、人口密度の低い農業を重視した国なのだ。

日本の場合、人口減少を前提とした地域の再生を考えるべきだ。人口が今の半分位に成ったとして、日本人がこの国土に暮らすにはちょうど良い加減だ。悲しむのでは無くこの事態を受け入れ、生かすべきだ。人口が半分になれば、今の食糧生産でも、自給率は80%になる。健全なものだ。どうやって減ってゆくなかでバランスを取り戻すかだ。その人口減少過程では、困難なことも多々あるだろう。しかし、それを乗り切れば、むしろ今より良い状態が生まれる。今減少を嘆いているのは、国際競争力の衰退と、地方の消滅である。人口が半分になってGNPが同じなら、一人当たりは倍増である。地方に暮らせる条件を作れば、必ず暮らしたい人は増える。山の中で暮らしてきたが、その暮らしの魅力は、計り知れない。あの魅力がある以上、暮らせるならそういう所で暮らしたいという人は増える。地方で暮らす人の役割を問い直すことではないだろうか。

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