安保戦略に「愛国心」

   

政府は十七日の国家安全保障会議(日本版NSC)と閣議で、外交・安全保障政策の指針「国家安全保障戦略」と、国防の基本的指針となる新たな防衛大綱、中期防衛力整備計画(中期防)を決定した。「国家安全保障戦略」に「愛国心」を盛り込むことになった。紛争当事国などへの武器や関連技術の輸出を禁じた武器輸出三原則の見直しも明記する。同戦略は平和国家、専守防衛、非軍事大国、非核三原則などの基本方針を「堅持」するといいながら、日米同盟を強化し、日本の軍事的貢献を拡大する方向性も鮮明にした。すでに国家安保会議と特定秘密保護法が実現し、来年には集団的自衛権行使の容認、日米防衛協力のための指針(ガイドライン)見直しも予定される。

日本国を日本人が大切に考え、国を愛し、よりよい国を目指すことに異論はない。しかし、軍事力と関連ずける、間違った愛国心の日本国に向いそうな危機感がある。憲法で定められた日本国の平和主義は世界に誇るべき考え方である。こういう平和主義を持つ国、日本であることを愛していると言えば言える。この一番大切な部分が安倍政権によって変えられようとしている。憲法9条の改定を目指している自民党である。その考え方は自民党新憲法に示されている。しかし、憲法を変える前に、憲法の平和主義を変えてしまうのでは、議論不足も甚だしい。秘密保護法国会もそうであったが、本当の議論が国民に示されていない。疑問点だらけで、石破氏など法の解釈を何度も間違えている。それくらい内容が複雑で、どうとでも取れる文面なのだ。悪意を持って解釈を広げれば、デモをテロとして取り締まれるほどの法律である。こういう国会運営を経験し成功させた自民党は、このやり方ですべてを無理押しに進め始めている。

軍事力と国を愛する心を結び付けるのは、戦前の教育の行った反省しなければならない間違いである。教育勅語には天皇を国家の父として、敬う。そういう愛国心が書かれている。国にいったん事があれば、義勇心を持ち皇室を支えることが、国を守ることになる。というように書かれているようだ。(何が書いてあるのか小学生に分からない文章である。)国を愛するということは、福島原発事故のような、国土を汚染しない国を作るということだ。日本を戦火にさらし、国民に人殺しをさせるような国にしないことだ。そのためにどうするのかというところでは意見が分かれる。民主主義国であるのなら、どんな国を目指すのかを、広く国民に問うべきだ。選挙で第一党になったという程度で、憲法の精神を変えてしまう権限はない。どのような日本国にするかは、現状では憲法に示されている平和個主義国家である。憲法という形で、平和主義で政治を進めるようにと、国民が政府に示している。それを無視することは、あってはならない。

今自民党が進めようとしている国家の方角の変更は、きちっと国民に問うべき内容だ。国家安全保障戦略は国民投票を行うべき内容である。日本国の目指す方角がおかしいとすれば、国を愛すべきという建前論はおかしいだろう。北朝鮮でも国を愛せよ、と強制されている。異論はすべて抹殺である。独裁国日本を誰も愛することはできないだろう。愛することを教育する前に、どういう国に日本が向かうべきかである。武力を最小限にとどめ、災害救助で世界に貢献する。世界平和を希求する国である。もちろん、軍事国家を目指したいとする人もいるだろう。だからこそ、国の方向に議論が必要なのではないか。自民党はたまたま、選挙制度のゆがみで、多数議席を占めたにすぎない。公明党の支持票を巧みに組み込んで小選挙区制で勝利したにすぎない。これで国家の方向まで強引に変えてしまう事は、許されないだろう。

自民党が目指しているのは、結果的には中国に勝る軍事大国であろう。こうした軍事力競争が結局は、戦争に至る。日本は韓国をよく観察すべきだ。朴大統領の中国への傾斜は経済戦略にある。確かに、韓国には経済至上主義という、国家戦略がある。ほぼ日本の前を進んでいる。そして、その方向の危険が徐々に迫っている。国家的破綻が起こるとすれば韓国の方が先である。経済至上主義が何をもたらすのかをよく観察すべきだ。日本は平和主義で進むべきだ。そんな平和主義を中国は認めないし、ほくそ笑むに違いない。私はそう単純には考えていない。中国も相当に苦しい国内事情がある。破綻、ほころびが来年は目立つはずだ。日本が引く態度を見せれば、中国も呼応してくる時期が必ず来る。もし、日本が軍事力で対抗するのであれば、危険な綱渡りがさらに経済にまで影響するだろう。私は平和国家、瑞穂の国日本を愛する。

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