辺野古と名護市漁協
名護漁港の正組合員96名のうち91名が総会に参加し、議長を除く88人の賛成で辺野古の埋め立てに同意した。一方、宜野座村(宜野座村)、金武(金武町)、石川(うるま市)の3漁協は反対のようだ。この背景にある状況は複雑で、沖縄の問題はなかなか想像しがたい。ここには日本各地にある、地域の衰退と、補助金によって政策を進める政府の手法があることはまちがいがない。沖縄県知事、県議会、名護市長、名護市議会とも県外移設を求めている。名護漁港の組合長古波蔵(こはぐら)広組合長は「本当は代替施設に来てほしくないし、沖縄県全部が反対して来ないならば一番いい。しかし国が国策として持って来たらどうするかという話で、そうなれば一番損するのは漁民だ」と話した。同意書について「納得いく補償額でないと出さない。うちの同意が必要ならば、我々の申し上げる額を『分かった』と国が英断してくれればいい」
沖縄本島では北部やんばる地区が開発の手が入っていない。沖縄北部地区開発事業という問題がある。経済を発展させるためには、基地を受け入れて、十分な補償を得ようという考えがあると想像される。防衛施設庁が東村で修学旅行生を受け入れる施設を作る事業等々である。普天間基地の辺野古移設問題も名護市の経済問題として意識される。名護市は北部の中心都市である。住んでいないものには、実際の奥深いところはよくわからない。しかし、迷惑施設を公共事業や補助金と引き換えに強行することには問題があるだろう。本来進めるに当たっては沖縄の長期的な展望が必要なはずだ。それが北部開発事業では、不十分に思える。米軍基地の沖縄負担の軽減ということが言われても、本土ではどこにも肩代わりしようというところはない。沖縄が長い間米軍に占領されていたという歴史も本土では認識が浅い。沖縄がどれだけ不当な犠牲を強いられているのかを理解しないと、この名護漁協の全員に近い埋め立て賛成に至る背景は理解できないだろう。日本全国の過疎地域が抱える共通の問題がある。これから人口減少が進み、さらに深刻化するはずだ。
沖縄の地域振興はすべて基地の問題と絡んでくる。普天間基地の辺野古移転に伴い、北部地区の開発計画が政府から出されている。それを以前の名護市は受け入れていた。それが反対になり、民主党政権になり全体の構図が変わった。ところが、政府が自民党に戻り、沖縄の対応も変化を始めている。原発再開と地域振興を抱える全国の過疎地域は同じ問題を抱えている。結局のところ、過疎地域振興が、原発補助金に依存している。原発リスク、基地負担、それどころではない現実との板挟みではないか。東京の電力のために、福島の地元地域が被害者になったという論理は、おかしいと思う。補助金がもらえても、嫌だという施設を受け入れない。反対をすべきなのだ。結局のところ、経済優先意識が日本をだめにしてきている。公共事業が減って地方に仕事がない。だから基地工事であれ、原発工事であれ、ともかく仕事がほしいということではないか。
私は沖縄本島に行って、一番魅力を感じたのは、今帰仁城址(なきじんぐすく)であった。名護市からさらに北部に行き、やんばるに行く途中の半島にある。そばに、すばらしいちゅら海水族館がある。これは海洋博に伴ってできたものだ。名護から見ると、本部町があり、さらに奥に今帰仁村がある。さらに奥の地域となると、手付かずの自然が残されたやんばる地域である。こうした自然の価値を日本全体で、どのように生かすかを考える必要がある。日本全体として沖縄の自然を大切にできるのか。自然の価値が、どのように保証される必要があるのか。医療や老人施設を充実させた特別地域にするというのはどうだろう。世界から医療の研究や、高度医療を受けるのために人が集まるような地域に出来ないだろうか。若いうちは本土で働き、老後は沖縄で過ごす。政府はそのための税制や設備の充実を行う。老人の増える時代、沖縄のような自然環境の魅力ある地域を生かす方法はある気がするのだが。