小選挙区制と政治の劣化
このブログは憲法9条を宝としている。今回自民党から、憲法改定案が出てきた。困った時の憲法談義というのが政治の世界である。問題をそらそうとしているのだ。バカバカしい時代遅れの、自民党らしい案である。自民党の中にある焦りが、保守層へすり寄ろうと言うことなのだろう。それも良いが、今の社会情勢の読みがこうも外れて来ると、政治家の社会を見る目の鈍さに驚く。軍隊を持ちたいと考えている人たちも、さすがにこの案では、支持しないと思う。自衛隊を自衛軍にするという姑息さが、時代を見ていない感覚だ。戦力を持つと明確にした方が、せめて話題になる。もうこんな憲法改定案では、すぐ忘れ去られるだけだ。細部を読んでくれる人もきわめて少ないだろう。橋下氏の船中八策作戦に比べて、政治的時代感覚がお粗末この上ない。自民党は、軍隊系と反軍隊系で分かれる以外にない。曖昧にやっていたのでは、万年野党になり、社会党のように消滅するだろう。
政治の劣化である。議員定数削減をまるで、身を切る改革と思い込んでいる。そんなことを思うのは議員だけで、国民は関係がない。徹底した歳費削減をやるべきだ。経費削減を定数削減にすり替えようとしている。定数削減の行くつく先は、少数意見の排除である。少数意見が排除されると同時に、独裁政治の登場の可能性が高まる。まず、歳費削減を徹底することだ。民主党は300万円の歳費削減を出しているが、この政治のていたらくでは、ボーナスの返上のほうが、ぴったりではないか。では日本の歳費は安いのか高いのか。
日本の国会議員の年収は、給与に当たる月々の歳費と、ボーナスに当たる年二回の期末手当を合わせ二千百六万円に上る。国立国会図書館の調査によると、米国千三百五十七万円、ドイツ九百四十七万円、フランス八百七十七万円、英国八百二万円に大差をつけ世界最高水準だ。職務手当の「文書通信交通滞在費」が非課税で月額百万円(年千二百万円)支給される。議員一人当たり三人までの公設秘書が認められており、雇用手当は衆院議員に二千五百十二万円、参院議員二千六百十万円。歳費と各手当の合計は衆院議員五千八百十八万円、参院議員五千九百十六万円に上る。また「立法事務費」として議員一人につき月額六十五万円(年七百八十万円)が、それぞれの会派に交付される。(東京新聞)
それでも足りないと、多くの政治家は主張している。少なくとも給与部分は半減しても良いのではないか。政治活動の為には別に手当が出ている。この政治活動費の方で、後援会がキャバクラに行ったとかいう、バカバカしい話題が出て来る、名目のものだ。給与で連れて行けばいいのに。要するに選挙対策費と、政治活動費が、分けがたく存在する。選挙にお金がかかる現実がある。選挙活動は政治活動かどうかである。知り合いの市会議員の人は、明確に選挙は政治活動だと主張していた。もしそれが、正しい実感なら、民主主義が未成熟ということになる。政策選挙に成っていないからである。「そんな建前論を言っていても当選しなければ始まらない。」これが政治家の実感なのだろう。最近の選挙では、良くない人ともっと良くない人の中から、少しでもましな人を選ぶという状況である。選挙に行かない、選挙なぞいっても無駄だ。という気持ちが投票率の低下に現われている。
小選挙区制が、少数意見を切り捨てた結果が影響している。自分の意見に近い人が当選する可能性がない。あるいは支持政党の人が立候補していない。選挙に行く気にもなれないのが当り前だろう。まして、2大政党たる、自民党と民主党が、消費税増税を焦点に衆議院を解散したら、選択のテーマすらない。10%か15%の上げ幅ということか。両政党瓜2つである。こんな類似の2大政党なら、政界再編が本来であろう。しかし、再編したとしても、エネルギー政策ではどうなる。TPP対応ではどうなる。行政改革はどうか。小選挙区で人気投票化してきて、いよいよ政策が見えない。政策を議論することからさらに離れた。政治が面白くなくなっている。面白くないから、選挙は、広告代理店方式やら、テレビ制作会社方式、の政治に移行して、面白さの演出合戦である。政治のネット化からやって欲しい。政策は言わない方が、選挙には有利だという、政治屋の常識の打破は、ネット利用からだ。