AIJ2000億円事件
企業年金運用会社のAIJ投資顧問(東京)が顧客の預かり資産、約2千億円の大半を消失させた。旧社会保険庁(現・日本年金機構)OB石山勲氏が複数の年金基金の幹部に、AIJに資金の運用を委託するよう勧めていた。厚生労働省によると、2009年当時、614の厚年基金があり、三分の二近くの399基金の理事などに646人の社保庁OBなどが天下っていた。この事件の裏には、旧社保庁の腐敗が広がっていることが見えてきた。どこまで真実が明るみに出るのか、闇は深そうだ。企業の年金担当者が、何億円もAIJに委託したということである。稚拙な犯罪に何故専門家が引っ掛かったのか。この事件は年金を扱う企業の専門家が、ころっとだまされている所である。他人の金に真剣味がない。日本人の劣化がここまで来てしまったと言えば、分かりやすい事だが、それだけではなさそうだ。金融庁はこれから他の年金運用会社を調べると言うが、金融庁の天下り先などになってはいないのだろうか。これは第三者機関が、徹底して調べるべき事件である。
この時代どこのファンドでも、利益など出ていない。それが、AIJだけ10%を超える利益が続いていて、不自然と思わない訳がない。背景に収賄が生じていないだろうか。腐った行政職員のむさぼりだ。AIJに年金資産の運用を委託していた74の厚生年金基金のうち、少なくとも3分の2程度に、同庁OBらが天下りしていたことも判明している。石山勲氏は、かつて社保庁に勤務し退職後、某総合型理事に天下り後、コンサルタント会社である東京年金経済研究所を設立。約5年前まで4年間、AIJ投資顧問が主催するセミナーで講演し、コンサルタント料を年間約600万円受け取っていた。AIJ投資顧問は同研究所に出資し、一時AIJ投資顧問の役員を同研究所役員に就けていた。AIJと企業年金側を仲介していた旧厚生省(現厚生労働省)と旧社会保険庁(現日本年金機構)のOB(74)が、自らが経営する年金コンサルタント会社の実質的な経営を全面的にAIJ側に委ねていたことが分かっている。
天下りを各企業が何故うけいれているか、どのような役割をしているか、見えてくるようだ。わかりにくいが、厚生年金基金は、厚生年金そのものではない。特別法人として設立される、企業年金制度の一つである。3階建ての年金構造のうち、基礎年金(1階部分)、厚生年金や共済年金(2階部分)に上乗せした給付を行う組織。1996年度に1883あった基金は2010年度には588に減少している。上乗せ部分は5,5%の利率で運用する前提があったらしい。そんなことが出来ない時代になり、崩壊してきている制度ともいえる。この企業年金の運用の組織が、社保庁の天下り先として、準備されていた。年金にまとわりつく利権集団。消えた年金。グリンピアの無駄遣い。時代の変化が起きているのに、年金制度の変化に対する対応など、全く行っていない。
石山氏は企業年金に天下りした旧社保庁職員らに、AIJを勧めていたことも判明してきた。AIJが、こうした“天下りネットワーク”を持つOBを顧客拡大の「広告塔」に利用するため、積極的に便宜を図っていたとみられる。旧社会保険庁から基金に天下りした運用担当者も同様で、役所時代の人脈を生かした情報交換と称した。利権世界を構築していたのだろう。運用先の危険性を見抜く「監視役」としては機能しなかった程度ではない。東京年金経済研究所はAIJとコンサル契約を結び、年数百万円の報酬を得ていた。つまり、第3者の振りをして、AIJを推薦していたということだろう。2000年代前半から、OB人脈を使ってセミナーを年2回ほど開催。AIJのほか3社程度の投資会社も出席し、各社の担当者が基金関係者に自社の投資商品をアピールした。代表が「いずれも私が厳選した投資会社」と、AIJなどを推薦。AIJの顧客になった基金のうち、3分の1程度が出席していたという。知らなかったですまない話だ。