中国牛乳事情
案外忘れられているが、中国では以前も悪質な混合粉ミルク事件があった。日本への波及はこのときは無かった。安徽省阜陽市では、2003年4月から10月にかけて悪質な粉ミルクを飲んだ多数の赤ちゃんが発病、死亡するという事件が相次いだ。そのときは13人の乳幼児が死んだことに対して首謀者の刑罰が、懲役刑8年。その後2005年には、浙江省の粉ミルクメーカー及び販売業者19人が逮捕される事件が続く。今回は石家荘三鹿集団股フェン有限公司が起こした事件。今回は、規模も大きく粉ミルクそのものが輸出されたり、お菓子に使われて、加工食品に加えられた。世界に広がり世界中の人が食べた可能性があるような、大規模なものになった。中国の混沌とした社会状況が、この粉ミルク事件だけ見ても垣間見える。日本も、汚染米の問題ではすっきりと、わかった気持ちにはなれない。最初太田大臣の失言した。「食べても問題ない」この気持ちは農水全てにあっただろう。消費者がやかましいから、一応作った基準に過ぎない。
以前から、富裕層は輸入の粉ミルクしか使わなかった。当然の事である。中国の食品事情を知るものほど、怖ろしくてやたらのものを食べることなど出来ない。以前中国を一緒に旅行した、中国通の人達は、実に上手く選択して食べていた。10数年前に行った時は、何しろ、2週間分の食糧を担いで出かけた。そのときは、絵を描きに行ったのだが、鍋窯持参の完全に出稼ぎスタイルだった。公式な芸術交流団だったので、普通運べないような大きな物や重いものが運べた。衛生観念が基本的に違う。例えば、みんなが歩いている床がまな板になる。川は洗い物の流しになる。道はゴミ溜めになる。公衆トイレはほぼ糞尿の池になる。ホテル以外でものを食べることなど、怖ろしくてできなかった。何しろアルコールの紙で、出てきた箸や食器を先ず拭いてから使った。それでも全員がすごい下痢になった。私だけ、このときは例外的にキヨーレオピンを予防として呑んで凌いだ。交流団だから、一期一会で食べざる得ない場面を引き受けた。
その頃が一番食べ物の状況が悪かったのではないだろうか。中国は格差社会の見本みたいな、不思議な社会主義国家だ。一部の富裕層に都合のいい、社会主義とでも言うのだろう。土地の私有制はないといいながら、野心的な人物は理解できない便法を駆使して、たぶん地方行政府とも連携して、企業が自由に活動する。そうした流れ、何でも利益を上げるものが、いいネコだ。と言うような気分から、食品分野でも、安全とか衛生とかが軽視されている。なぜ、2004年に乳幼児が多数死ぬような事件が起こり、その後も繰り返されるのか。使うほうに、社会一般に食品の安全と言う意識がない。消費者がやかましくない。平気で怪しいものを使う。命が一番安いものなのだ。メラミン入り食品は日本でも多数出てきている。安ければ使おうと言う精神があるところどこにでも、広がる。
中国では生乳というものはほとんど飲まれていない。この生乳を飲む、コールドチェーンは、そう簡単な社会システムではない。富裕層は顔の見える関係で、これもルール違反らしいが、農家直接配達の牛乳を飲んでいる。これが衛生的かどうかは別にして、それしか生乳を飲む方法はない。郊外に少数乳牛を飼う農家が存在し、自転車あるいは、小さなトラックで、早朝搾りたての牛乳配達をする。何処にも冷蔵は入らない流通。こうした農家の実状を見学させてもらうと、日本人の衛生観念から言うと、ちょぅっと飲めない。別段無理して牛乳など飲まないでもいい。結局は食は自己責任としか言いようがない。怪しいものを食べる時には、それを思い出したらいい。消費者がまだまだやかましくないから、怪しげな食べ物は何処にでも、農水省の中にも存在する。
昨日の自給作業:草刈2時間 累計時間:2時間