山口洋一ミャンマー大使
ミャンマー(ビルマ)の国営紙は22日、「国際社会はミャンマーに余計な口出しをせず、援助や貿易、投資、技術移転などで側面的な支援を行うべき」などとする山口洋一・元ミャンマー大使が書いた記事を翻訳し、転載した。山口氏は95年から3年間、日本のミャンマー大使を務めている。大変な大使がいたものだ。確かに、国際社会はアウンサンスチー氏を実態がもう一つわからないまま。持ち上げて報道する姿勢があるのかもしれない。とは言え、ノーベル平和賞まで受賞している訳で、一方的に否定できる根拠は、あるのかどうかは更に疑問だ。ビルマについては、小学生の時から関心があった。「カチン族の首かご」と言うアジアの不思議を、日本兵が体験した話だ。世界ノンフィクション全集で読んだ。カチン族という首刈族というか、食肉人種と思われる人達の王様になった、日本兵の話だ。情報収集のために一人で残った妹尾隆彦一等兵が、素晴しい善政を引いて、慕われる。所が後半は急に文体も変わって、複雑な政治バランスの中、日本軍の後ろ盾が利用されていたらしい事が見える。知らぬが仏。
というような、ビルマの多民族的な複雑な政治状況を感じさせる名著。いわゆる後進国等アジアには一つもない、と言う事を子供ながら知った。それ以来ビルマの事は、あれこれ気になった。青年団主催の「ビルマの竪琴」をやはり小学生の時に大久保に行く山の中の河原に張られたスクリーンで見た。みんなが泣いているので、余計何とも嘘くさい話だと思ったぐらいだ。この記憶からしても、ろくな小学生ではなかったようだ。単純にアウンサンスチー氏は平和の旗手ではない。イギリスにいたスーチー氏。死んだご主人はイギリス人。イギリスの植民地だったビルマ。欧米式民主主義になればそれで良いとは、単純すぎる。チトー死後のユーゴスラビアの混乱から戦闘状況に至る姿を見れば、軍事独裁政権だから即悪という単純な見方も、疑問だとは思う。
とは言いながら、この山口氏、軍事政権に洗脳されてしまった、と思える。軍事政権と同化してしまったのだろう。そのたぐいの事、人当たりと言うか、接待にはビルマ人は極めて有能らしい。日本の甘チャンなどいちこのような気がする。
「ミャンマーの軍事政権が一般市民、まして外国人のジャーナリストに向けて、無差別に発砲を命じることなどありえず、恐らく不幸な偶然が重なった結果に違いないと深く思いました。」こんなコメントをしている。ひいきの引き倒しだ。撃たれた映像を見れば明らかに外国人がビデオ撮影している事を、認識した上で発砲している。
撃たれた長井さんのやろうとされたことは、真実を伝えようとした行為だ。日本人として感謝の気持ちが、深い。冥福をお祈りしている。山口氏はミャンマーの軍事政権が民主的で、デモの実態も小さなものだとか。主張するなら、何故、長井さんを撃たなければならないのか。外国に真実を報道してもらう事こそ重要なはずだ。山口氏と同じ日本人じゃないか。それどころか、海外のメディアを国外退去させ、報道管制を引いている。やましい所がないなら、全てを報道してもらった方が良いに決まっている。ミャンマー政府は民主化運動の背景にアメリカの差し金があると考えている。一方アメリカおよび日本は、背景に中国がいると考えている。
民主的な選挙によって選ばれた政権にクーデーターを起こし、軍事政権は成立した。それ以来、選挙も行われていない。そんな状況を日本の大使が評価出来る状況と考えている。日本の外務省はどんな考え方をしているのだろう。中国派の系列は皆そのような思想を持っているのか。単純な善悪判断でなく、大人の論議としてのアジア外交を外務省はどのように考えているのだろう。天木氏のように骨のある人もいる訳だから、現職外交官の本音を聞いてみたいものだ。