第2回 水彩画 日曜展示
第2回 水彩画 日曜展示
4、「名蔵アンパル」田んぼに水が入る
2020.2
中判全紙 クラシコファブリアーノ
5、「名蔵アンパル」田んぼが始まる
2020.3
中判全紙 クラシコファブリアーノ
6、「名蔵アンパル」田植えが始まる
2020.3
中判全紙 クラシコ ファブリアーノ
名蔵湾を望むバンナ公園のすぐ下の場所から描いている。田んぼから、名蔵アンパルという湿地に続く姿に惹かれる。描いている場所はバンナ岳の裾野に広がる牧草地である。若い方が管理をされていて、とても気持ちの良い方である。
田んぼに水が入ると水が反射して、景色に光が差し込み空間が動き出す。動きが空にまで繋がり、一つの舞台のような情景が生まれる。この空間の舞台のような場所に何故惹きつけられるのかは、生まれた境川村の藤垈からの景色にあると思っている。
甲府盆地が北側に広がるのだ。藤垈の集落の一段高いところにある向昌院は標高400メートルほどある。半日は日陰にある寒い場所だ。その日陰から甲府盆地に光が差し込み、反射して盆地の中を廻るような光景が、私の景色の原形なのだと思う。
美しいと思うことには理由がある。子供の頃に眼に焼き付いた景色を思い出しているのかもしれない。記憶の中にある景色に安心のようなものが宿っている。これでいいと言うような、許されるような感じと言えばいいのだろうか。
甲府盆地の向かいの奥には衝立のように御坂山系の山々が連なる。その裾野はまさに裾模様のように、農地が季節ごとの彩りを見せる。盆地の中央には笛吹川が帯のように流れている。帯を囲むように田んぼが広がる。朝霧の日には甲府盆地はすっかりと白い湖水の下に隠れてしまう。
夜になれば、甲府の街の明かりが宝石のように輝いた。真っ暗闇の中に空の銀河があり、そして地上には街の明かりの銀河だ。おばあさんはこの景色が美しいと行って、寝ている孫をわざわざ起こしては一緒に見ようと言った。
子供の頃に見ていた空間に対する意識が、心の底に強く残ったようだ。同じような光景に出合うと催眠術にかかったように惹きつけられる。そしてこの空間きらめくような光の舞台を描き止めたくなる。記憶をたどる旅のようなものである。
始めて石垣島に来たとき、バンナ公園から眺める名蔵アンパルの景色に魅了されてしまった。それが石垣にこの後住みたいと考えたことになる。特に田んぼに水の入る2月頃には石垣に来ては絵を描くようになった。だから、今年の2月から3月に描いたことは4回目になるのかと思う。
以前よりは少しはましにはなってきたが、まだ見ているものになったとは言えない。三枚を並べてみたかったのは、すこしづつ見ているものに進んでいるように感じがするのだ。ここを描いたのはこの三枚だけではない。たぶん今年も10枚は描いた。
石垣で描き始めてから、50枚はこの場所で描いた。おかげですこしづつ観ている世界に絵が近づいたことが分かる。もしこのまますこしづつでも進むことが出来れば、10年すれば期待できるかもしれない。そう思うと希望が湧いてくる。