石垣島で家庭菜園を始めた。

   



 やらないでおこうと思っていた。絵以外のことは石垣島でやらないつもりだった。家庭菜園のことである。絵ばかり描いていて、運動不足なので、身体を動かした方がいいということがある。これも長く絵を描くためである。と一応言い訳はしたい。
 何で言い訳をしなければいけないのかよく分からないが。決めたことを変えるということは余りしたことがない。それなのに石垣でも畑仕事を少しはやってみたいという誘惑に負けたわけだ。

 お隣の家は元々は農家だったそうだ。つまり、石垣では中心市街地にも農家の人が住んでいたのだ。馬小屋なども庭にある。しかし、年をとられて体調も悪いそうだ。なかなか、庭の草刈りもできないようであった。そこで、家庭菜園に使わせてもらえないか、お願いした。

 草刈りもできなくて気になっていたそうで、喜んで貸してくれることになった。と言っても、庭の隅の方の30㎡ほどである。やってみてやれるようなら草刈りぐらいは全体をやってもいいと思っているが、それはもう少し様子が分かってからだと思っている。



 顔を合わせれば少し話をするくらいの関係ではあるが、それ以上のことは何もわからない。お隣だから、長く仲良くさせて貰いたいと思っている。土地を探している頃から、いろいろ様子を聞かせて貰ったこともあった方である。

 家庭菜園も運動不足の解消ぐらいのつもりでいる。石垣では絵を描くだけの暮らしなので、せいぜい歩くようにしているのだが、それでもどうしても運動不足になる。
 先日も書いたことだが、開拓移民の人達のことを読んで、石垣島の土を耕すことで触れてみたいという気持になった。本を読んでから、畑や放牧地が少し違って見えている。マラリアの恐ろしい島に開拓に来なければならなかったという人が開いた畑だ。


 土を耕してみなければ、そこの土地のことは分からない。どうすれば良い土ができるのか、そういう石垣島の土のことが分からなければ、田んぼの絵を描くことなどできない。私の絵の描き方はそういう描き方なので仕方が無いところだ。

 今気になっているのは11月収穫型の稲作のイネの勢いのなさである。絵を描いていれば、イネの勢いのなさは分かる。しかし、その理由は未だ分からない。分からないとどうも、腑に落ちて田んぼの絵が描けない。

 石垣ではいまから、トマトやキューりの植え付けだそうだ。ジャガイモの種芋もでている。その辺りからと思い、苗を買ってきた。堆肥はよみがえり堆肥というものが、石垣の堆肥センターで作られているので、それを買ってきた。

 よみがえり堆肥は、石垣の牛の糞尿を集めて、堆肥にしたものだろう。堆肥センターは石垣の中央部の開南地区にある。1袋15キロ360円でホームセンターで売られている。始めて使うので、どんな堆肥なのかは分からないが楽しみである。

 堆肥センターは10年ほど前にできた。サトウキビの畑などで使って貰おうという計画のようだが、なかなか売れないと聞いていた。農家には堆肥を入れるという栽培方法が普及してないようだ。牛糞をそのまま畑にまいて、耕している農家はある。
 価格的にもトン単位になるとキロ10円という。高くはないと思うので、上手く活用して貰いたいものだ。どういう使い方をすれば良いかをホームページなどでも公開しているといいのだが、探したのだがどこにもでていない。

 サトウキビで堆肥を使う農法が普及すれば、赤土の流出もいくらか収まるはずである。石垣島の赤土はともかくよほど腐植質を使わなければ、改善できないと思われる。このあたりはこれから試行錯誤してみたいと思う。



 畑の準備を始めて驚いたのは、土がカチンカチンということだ。日干しレンガ状態である。土を耕すというよりも削るという堅さだ。植え穴をひとつ掘るのに、30分かかり腕が痛くなった。この土を耕作可能な土にするということには興味がある。長い間、雑草に覆われていた土なのに、これほど堅いということは小田原ではありえないことだ。

 何でも見ているだけでは分かるものではない。この土で栽培するのだから、よほど独特の栽培体系が必要なはずだ。日照が極めて強いということも、こういう土になってしまう原因かもしれない。感触は隆起珊瑚礁混じりなのに、酸性土壌という感じがする。

 辺り一面ススキの小さいような草が覆っていた。これは石垣ではどこの空き地にもよく生えている雑草である。ススキよりは背丈は低いのだが、根は地面の中で絡みつくように密生している。これをどけなければ耕作どころではないだろう。

 まず刈って、出てきたらまた刈って、すこしづつ減らそうと思っている。完全に掘り起こすことは不可能だ。しかし、取り除かない限り作物は十分にはできないはずである。一度除草剤で枯らしてから始めるという考えもあるのだろうが、ひとまずは刈って、刈って様子を見たい。

 硬い土をレンガを削るような感覚で、鍬ですこしづつ畝をたてた。80センチ間隔5本。長さが4メートル×5だから20メートルの畝たてをした。一時間ほどやった。地面に印を付けた程度の浅い畝である。それが限界であった。今まで経験したことのない堅さである。

 作物を植えるところだけ、穴を掘ろうと思う。翌日穴を掘った。穴を掘るといっても簡単ではない。ひとつのアナに30分はかかる。穴を掘り、掘り出した土というか岩の削りかすのようなものと、堆肥を混合して作土にするつもりである。

 植え穴に堆肥を入れ、土を混ぜて水を入れてしばらく置いておく。ここまでは昨日行った。しばらく時間を空けて、苗を植え付けようと思う。苗を買うのが少し早すぎたようだが、仕方が無い。ポット苗をしばらく管理しておく。

 ジャガイモは沖縄むき品種というのが売られていたのでそれにした。やはり切って乾かすことにする。ジャガイモも植える深さに土を掘るのが、手間取りそうだ。大体こんなに堅いところに植えて、作物ができるものだろうか。

 ブロッコリーとインゲンは種をまいてみようと思っている。今年はできるかどうかの実験ぐらいだろう。それくらい土の様子が分からない。それでも種をまくというのは楽しみなことだ。

 


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