凶悪犯罪の増加
殺人などの凶悪犯は増え、二千四百八十六件(7・8%増)。殺人は四百六十四件(7・2%増)、強盗は九百五十二件(6・4%増)で、警察庁は「殺人や強盗が増えた明確な要因は分からない」としている。昨年の刑法改正で強姦(ごうかん)から罪名が変わった「強制性交」は六百一件(26・8%増)だった。
凶悪犯罪が増加している。毎日の報道でも殺人事件が目立つ。人口が減少しているのに、犯罪数が7,8%も増えているという事は、曖昧に済さず原因を考えなければならない。にもかかわらず発表した警察庁では原因はよくわからないとして、終わりである。警察は犯罪の減少努力を怠っているのではない、と言いたいのだろう。殺人の原因が警察で分からないというのでは困る。原因は明確だ。家族の問題である。家庭の中の犯罪が増加している。その為に警察では防ぎ難い側面が出てきている。親が子供を殺し、子供が親を殺す。孫の祖父母の殺人も目立つ。家族崩壊が犯罪の増加の主原因である。家庭崩壊が起こる原因は社会の弱まりにある。社会の矛盾が家族に集約されてきているのだ。追い詰められた人間が、一番近い、弱い存在にその矛先を見つけてしまう。親が子供を殺してしまうなどという事は、よほど病的なことだ。社会が親という存在を病に追いやっていると考えた方がいい。
可愛いはずの子供を親が殺してしまうなど、想定外の事態が起きている。日本人の中に強く存在した家族主義。封建主義下の家族の姿が大なり小なりあった。家が個人よりも優先されていた。長男が家督を相続して、それ以外のものは家を成立させるための協力者となる。分家を作ることも、開墾などをして農地を広げる以外になかった。その結果人口増加も歯止めがあった。明治になり人の移動が可能になっても、人口を一定数よりも増加できない農村の社会状況から、移民政策が始まる。移民という名の棄民である。とんでもない不毛の地に棄民された日本人が多数存在する。満蒙開拓団なども農村の疲弊から始まったものだろう。原因は新興帝国主義国日本が、実力不相応の軍事競争に巻き込まれた結果である。今起きている事態は経済戦争の結果である。極端な能力主義が、子供たちを追いやっている。引きこもりの増加。分断の始まり。高い能力の者を作り出すことがお国の為である。軍事競争が敗戦によって終わり、今度は経済競争社会である。能力主義によって追い込まれた家族が増えている。追い込まれた人間は自分だけ以外のものが見えなくなる。
孤立させられた家族。分断された人間。地域社会の崩壊。希望の喪失。下層に位置したものには展望のない社会しか見えない。日本という国家の漂流が始まりかかっている。目標の持てない家族が精神の崩壊をきたす。その結果家族内の凶悪犯罪の増加が起きていると考えるほかない。警察庁は何故こんな明確なことすらわからないというのだろうか。分かりたくないということなのだろう。社会の在り方や、方向性に問題があるというような分析をしたくない。家族の再生が必要である。地域の再生が必要である。人間の暮らしを取り戻さなければ、家族内殺人は減少できない。どれだけ監視カメラを増やしたところで、家庭内に監視カメラは付けられない。人間の暮らしを取り戻すことは難しいことではない。過度の競争を止める以外にないだろう。他者との競争ではなく、自分を深めてゆくことに向うべきなのだろう。