幸せ度ランキング
法政大学で作ったという幸せ度ランキングで、北陸3県が上位を占めた。石川県に住んだことがあるので、分かるような気もするが、冬の暗さを思うと少し不思議に思った。国民総幸福量(GNH)を尊重する国として、ブータンが良く言われる。そうなんだろうと思うが、果たして何が幸せかは難しい。小学校の5年生の時に担任の江藤先生が、「幸せとは何か。」というすごい質問をした。多分シュバイツァーの事が教科書に書かれていたのだと思う。誰も答えられなかった。先生の解答が、「幸せの判断は本人がするのでなく、外部のものがするものだ。」と言われた。これには強い違和感があった。アフリカで飢餓や伝染病で死んでゆく人自身が幸せと思うかどうかは、別問題で、そう言う状態が不幸だと気がつかない。回りが決めてあげることだ。このように言われた。はっきりとおかしいと思った記憶がある。その後50年もその質問に対する回答を考えているが、答えが出ない。
法政大学大学院政策創造研究科、坂本光司教授の行った以下がランキング 1:福井 2:富山 3:石川 4:鳥取 5:佐賀 6:熊本 7:長野 8:島根 9:三重 10:新潟11:滋賀 12:香川 13:岐阜 14:山梨 14:大分 16:山口 16:徳島 18:広島 19:山形 19:静岡21:愛知 22:岩手 22:長崎 24:岡山 25:群馬 26:栃木 27:福島 27:愛媛 27宮崎 30:茨城31:奈良 32:和歌山 33:千葉 33:神奈川 35:鹿児島 36:宮城 37:秋田 38:東京 39:福岡 40:青森41:沖縄 42:京都 43:北海道 44:埼玉 45:兵庫 46:高知 47:大阪。方法は社会経済統計を利活用して抽出した40の指標を「生活・家族部門」「労働・企業部門」「安全・安心部門」「医療・健康部門」に分け、それぞれの指標の順位による10段階評価の合計から「総合平均評点」を計算しランキングした。多分このランキングに納得できる人は少ないだろう。なにしろ、沖縄が41位で、今話題の大阪が最下位の47位である。これは維新の会に有利なのか。
大阪の人のインタビューで、「大阪は食べ物がおいしいし、おもろくていい。余計なお世話じゃ。」と言われていたが、各県に住む人の実感からは程遠い幸せ度であろう。坂本幸福感がおかしいのだろう。この手法の間違えは、そこに住んでいる人の幸せ感自体を測定する側面がないことである。それはとても難しいし、労力が必要になる。統計データーを使ってそれっぽく、もっともらしいものは作れるだろうが、GNHをGNPを越えた尺度にするには、 根拠が弱すぎる。江藤先生と同じなのだろう。幸福度を客観的にGNPのように数値化できると考えているのだろう。各県1万人づつ、幸福度アンケートを取ってみれば、少しは見えて来るかも知れない。下水道があるから、幸せなのかと言えば、そんなことはない。家が広いから幸せとは限らない。
50年も考えているのに、分からないことをこうもあっさりと、無造作に整理されてしまってがっかりである。路上生活者の幸せと天皇の幸せを、数値化できるだろうか。私はそれぞれに幸せも不幸もあると思う。天皇は日本人全体の幸せを考えているに違いない。遊行僧と自称した木喰はいわば路上生活者であったが、日本人全体の幸せを願い、仏像を彫り続けた。幸せを突き詰めると、実は、「生活・家族部門」「労働・企業部門」「安全・安心部門」「医療・健康部門」等、まったく空しいものになる。社会の幸せ度と、個人の幸せ度は大きく異なる。天皇は何不自由なく暮らしているだろうが、全く自由がない。暮らしの不自由の極に生きる木喰上人は、精神の自由の中に生きる。それぞれの幸せである。そこで、幸せを相対評価するには、せめて1万人位の当事者の声を聞かなければいけない。