中国の経済
アメリカではオバマ大統領が、矢継ぎ早に経済政策を打ち出している。日本では末期的な麻生政権は後手後手に回っている。これほど政策の速度に違いがあっても、両国の実体経済は何の影響もないかのようにみえる。沈み始めた巨艦を止めるような、兆候は何も見えてこない。農業分野でいえば、今農業改革が盛んに言われている。石破大臣も次の時代の農業の形を捜そうと、発言している。にもかかわらず、これならば何とかなるかもしれないという、方策は出てこない。たぶん企業社会でも、同じことだろう。実はその原因は、肥大化した暮らしの方にある。日本人の脆弱な暮らしを維持したうえで、農業が可能か。それはどこかの国で、泣かされている人がいる、お陰なのだ。その犠牲の上に、のうのうとしていたのだ。グローバリズムという世界の流れの中で、強者有利な方式の平等自由化を唱えてきた。日本はそれに便乗したと言えばいいのだろう。
ノーベル賞経済学者であるロバート・ルーカスは「私は米国でイタリアのコーヒーを飲み、すしを食べ、フランスワインを飲んでいる。世界中の最高のものが米国で手に入る。すばらしいことだ。ハイテク製品も衣類も何もかもだ。それにもかかわらず、世界貿易機関(WTO)の会議を妨害した人々のように自由貿易を脅かす勢力がある。だが、工業化の恩恵は自由貿易を通じて世界に広がっていくのだから、反対派が力を失っていくことを願う。だから私は、二十一世紀の世界にとって大切なキーワードは、何よりもグローバリゼーションだと思っている」。コーヒーをイタリアと言う所に、思想の甘さが現れている。この能天気な平等思想の背景には、巨大な軍事力が必要となり、経済成長以上の軍事費の伸びが必要となります。自由でも、平等でも無い証拠です。これは最近の中国の動向にも反映している。
中国では大幅な赤字予算の中でも、国防費だけは特別扱いだった。対前年比で2009年の国防予算が前年実績比14・9%増の4806億8600万元(約6兆8257億円)、21年間連続の2ケタ増加である。公表範囲で、この数字である。実態ではこの数倍はあると言われている。主に国内に向けられた、軍事力と考えたほうがいい。経済成長の背景にある、格差の拡大。周辺民族の反発の動き。中国の権力層は軍事力に頼らなければ、国内の安定がないと考えている。国内の貧困層の爆発。穀物価格は昨年石油の高騰に従って上がった。石油価格は経済活動の低下で、急落したにもかかわらず、穀物価格は以前の水準までは下がらない。アジア全般で見てみると、米不足(フィリピン)も起きている。高値で国外に販売できるので、国内の食糧不安(ベトナム)も、言われている。中国は食糧の余力が減少している。雨不足で、麦の生産が30%減ると言われている。備蓄の放出で凌ぐとしている。
競争心を煽ることで経済成長を促す、時代の思想。倫理的な行動より、ずる賢い要領を、推奨する。自由競争の建前の中で、行きすぎた能力主義や弱者を踏みにじる正義が行われる。何百年かけて培った固有の文化に基づく、人間の暮し方を崩壊させる近代化。前近代と蔑む200年前に存在した、東アジアの幸福感を安易な成長思想で見失った。確かに、江戸時代の中にある封建制の問題や、女性蔑視の思想など、克服されなければならないものは山ほどある。あえてその上で、地球を崩壊させない思想を拾い出す必要がある。花田清輝氏の言う、否定的媒介として前近代を考え直す必要がある。それが軟着陸地点。農業に生きる自給の幸せ感は、豊かなものである。決して貧困にあえぐ農民と言う、作られたイメージとは違う。自給の食糧には一日1時間の労働で可能だ。後の時間はその人間の生きたいように生きることができる。この豊かさを考えて欲しい。