田んぼの生き物観察会
田んぼの生き物観察会を、昨日桑原の田んぼめだか池で行った。地球博物館の苅部さんが指導してくださった。今年3回目と言う事になる。専門の研究者が好意で、協力してくださると言う、贅沢な本当にありがたいことだ。子ども達も沢山来てくれたことも、とても嬉しかった。子供が田んぼに興味を持ってくれるきっかけになれば、ありがたいことだと思う。実は、3回目と言うのは、私だけの特典で、舟原と坊所を1回下見してくれている。当日が雨となり、中止となったので、下見で案内させてもらったものだけが、お話を聞く事が出来た。役得である。金井島、舟原、坊所、桑原、この4箇所を比較して見てもらえたこと、とても大切なことだと思っている。金井島は酒匂川が足柄平野に入る入り口に当たる。峡谷を抜けて大きく広がった所にある。坊所、舟原は足柄平野の箱根明星岳の西山麓の谷あいにある。桑原は酒匂川下流域の湧水の多い田んぼ。
比較してみてみるには、重要な足柄平野の代表的な形の田んぼ3箇所である。平野一帯の20箇所ほどで、田んぼの耕作をしてきて、水の違い、土壌の違い、そして生き物の違いを感じてきた。桑原ではメダカの会での生き物調査が、10年近く月例で行ってきた。どんな物が、どのようなレベルで居るのかは、おぼろげながら感じては来た。では平野の入り口の方の田んぼはどうか。また山付きの田んぼには、どんな生き物が居るのか。何となくの違いは感じているが、専門家の目で見てもらえれば又違う深い観点がある。まだ一度づつの観察ではあるが、なるほど違うものだ。と言う事は感じた。
昨日の桑原の観察では、アメリカザリガニの大繁殖が衝撃的だった。今までに無かったような、集中的な発生である。簡単に要因は推測は出来ないが、かつて無かったことだけは確かだ。ザリガニによって桑原の貴重な生態系が変わり始めている。神奈川県内では桑原にしか居ないとされている生き物にとっては危機的な状況だ。早急な駆除対策を取る必要がある。原因のほうにも幾つかの推測はあるが、即断は良くないと思う。一度集中的に駆除活動が必要なことだけは確かだ。今桑原は道路の大工事が行われている。この工事が生き物の生息地を狭めるため、生息地の改変が行われている。こうした事は、大変困難なことなのだと思う。良いコントロールがされないと、生態系のバランスに異変が起こる。
日本の自然環境を守るためには、田んぼが無ければ、多様な生物の生存は不可能になっている。かつて、湿地は生き物の宝庫であった。湿地がなくなった以上、田んぼをその代替の土地として機能させなければ、湿地に依存した生き物は居なくなることになる。その頂点がコウノトリであり、トキであり、丹頂鶴である。幸いなことに近年急速に保全活動が、成功してきている。コウノトリでは地道な田んぼの耕作の活動が生きてきている。トキでも佐渡では放鳥を控え、田んぼの自然の復活が図られている。足柄平野は今回の観察をとおして、危機的な状況であることがわかったとおもう。自然が、戻ってきていると言うのは、錯覚である。よほどの努力をしなければ、自然は失われてゆく寸前であることが感じられた。水路や田んぼの畦がコンクリート化されたことが一番の要因だろう。農業としては当然の改良だ。しかし、生き物は失われる。農家の負担では、自然水路が維持はできない。新たな保全の仕組みが出来ない以上。コンクリート化は止む得ないことでもある。