戦争の経費
『世界を不幸にするアメリカの戦争経済』を読ませてもらった。松本さんが送ってくれた本だ。昨日のついたので、どんな本なのかな、と思い開いたら最後、夜まで読み続けてしまった。すごい本だ。と言う事は私にも判った。アメリカのイラク戦争にかかった戦費を洗い出して行く本だ。推理小説のようで、隠されている謎が、次々に暴かれてゆく。もちろん経済には疎いし、数字にも弱い。その上に、ドル建てだから、ピンと来ない。それでも、筆者のノーベル賞受賞の経済学者、ジョセフ・E・スティグリッツの判りやすい数字の展開は、興味を引きつけて放さない。この本はイラク戦争の是非を書いて居る訳ではない。誰が利益を上げているかが書かれたものでもない。
戦争と言うものがどれほどお金がかかるものかと言う事を、こと細かく分析している本だ。結論としては、2兆ドルと言う見方と、3兆ドルと言う見方が出てくる。判るのは、この巨額な費用が、反論できないような事実として、突きつけられている。怖ろしい巨額だ。もちろん、だから戦争は止めるべきだと書かれているのだが、それは一つの見方であり、主張だ。問題は誰がどう捻じ曲げようが、現代の戦争と言うものが、どれほどのお金がかかるものかだ。2兆ドルにしても、これには日本などの協力国の戦費は計算されていない。このイラク戦争の戦費が、アメリカ経済の今の危機につながっていることは、誰にも判ることだろう。必要な戦費を借金で賄う。そのお金を捻出するために、サブプライムローン等の不自然な経済政策が、無理やり行われた、と作者は書いている。
経済は、この場合戦争会計とでもいった方がいいのか。社会を分析する実に、重要な方法のようだ。これほど無理をして、アメリカに何が起きているか。イラクや中東はどうなったか。この点に言及している。アメリカ一国有利のグローバリズムの問題点。世界の対立激化。アメリカはテロ国家としてイラク、北朝鮮を上げているが、世界での評価はアメリカの方が、より危険な国家として世界から認識されるようになってしまった。これほどのお金が、成果がないどころか、世界から顰蹙を買う結果になてしまった、情けない結果を書いている。イラク国民の70%がアメリカの撤退を求めている事実。石油の高騰に寄与する、イラク戦争の巨額な戦費。これによる損出も、戦費に加えている。ただし、戦争がもたらした、アメリカの利益については、触れていない。と著者は書いている。儲けても居る。
日本においても、同様なことは起きているのだろう。この本では日本が被った経済的損失は1010億ドルから3070億ドルの間と推定される。石油の高騰が日本経済に与えた、損害。普通に農家として暮していても、ガソリンの高騰は努力ではどうにもならない、大変なマイナスの影響がある。我々の暮らしにも、イラク戦争が大きな影響があることが分かる。日本人の経済格差はさらに広がっていると、報道では伝えている。戦争は一部のものには利益を生み、全体としては大きな損害をもたらす。もしイラク戦争をしなければ、こんなことは考えても無駄なのだが、北朝鮮や、イランがどれほど、理不尽であったとしても。あるいはアフガニスタンが、テロの隠れ家になっているとしても、戦争だけは止めたほうがいい。戦争で解決できることは何もない。