新銀行東京の失敗
この銀行ができたころ、確か貸し渋りという言葉が、良く書かれていた。竹中大蔵大臣が、銀行の不良債権をどうにかする。忘れもしない。政府が多額の税金で一企業である銀行を救済した。そうしなければ日本が倒産する。訳のわからない理屈がまかり通った。企業も、銀行も、土地というものが値上がりするという前提で、考えていた。土地だけでなく、経済は拡大する前提で考えて、自転車操業をしていた。所が値上がりするどころか。一気に何分の一かに値下がりした。このとき土地を資産価値と考えてきた仕組みでは、当然不良債権のやまと言う事になった。そこで、銀行は、自己資本率を上げるために、どんどんお金を引き上げた。貸しはがし。そのことで、健全経営の中小企業までもが行き詰まった。そこに出てきたのが、無担保融資の銀行という発想だった。新銀行東京はこうしてスタートしたはずだ。
無担保での銀行経営などありえない。まして、貸し渋りの時代だ。成り立つわけがないと思った。金余りで、融資先は何処の銀行もも探してはいるが、ろくなところはない。この頃から、サラ金に銀行が手を出し始めた。おなじみのサラ金の裏には銀行がいる。銀行としては、表には出ないが、いい貸し手がいないのだ。当時は銀行批判が渦巻く、税金を注ぎ込んでおいて、銀行は何をやっているのだ。石原都知事はいかにもスタンドプレーヤーとして、華々しく新銀行構想を語っていた。無担保でも、可能性のある中小企業を育てようという訳だ。想像通り、預る金利より、貸出金利が大きいような、状態が続いたようだ。石原氏のようなワンマンに付き合える人はいない。当初協力した人達は、次々に止めた。王様の耳はロバの耳。
農業でも融資と言う事がある。認定農業者に成ると、農地購入に融資がされる。税金での利子補填がされているのだろう。利子がないとしても、2000万借りて、農地を購入して、もせいぜい2000㎡か4000㎡。ぎりぎり農家になれる土地面積。この土地で農業をやって、月々10万円返す。利子がないとしても。18年かかる。つまり、40歳で新規就農しても、もう定年。土台、土地も家もある農家が、経営できないから、止めてゆく状態。この中で、生活費とは別に、毎月10万円捻出する農業は、とんでもない農業だけだ。面白くない農業だ。しかもほとんどが失敗する農業。こんな不安定なことを提案すると言う事が、信じがたい。本質はここにない。大抵は農業では返済できないので、他の仕事で稼いで返す。このからくりなら、農地を無利子で購入出来る、スキームが可能になる。
新銀行東京は止められない。400億円の追加税投入が一番安い選択だそうだ。それでも、止めるのが一番いい選択。止めるという選択は、誰にとっても一番難しい。あそこで止めていればと言う事は幾らでもある。続けて良かったより、はるかに多い。続けて良かったはめったにないから、しみじみしている。傍から見ればすぐ分かる止める選択が何故出来ないか。全てがおじゃんになるような、絶望感が伴う。私なら、人生の選択として、絵を描く事を選んだ。これはもう12,3の頃だ。延々とやってきた。これを止めるのが一番、この選択だ。死んだ方がましだ。と言う事になるが。前向きに考えれば、無駄な事などこの世に何もない。
新銀行も経済情勢の読みが狂った。石原都知事の先の見通しが間違った。この先の、世界の経済見通しも大いに暗い。一番いい選択は、新銀行東京の失敗を認め、その責任を取って、都知事を辞任する。そして新銀行東京も止める。それが傷口を広げない唯一の道だろう。