5、 久野の里地里山事業の具体的展開

   

以上見てきたように、久野の里地里山的要素はその農村的暮らしと密接に繋がり、成立してきたものである。よって、直接的に農業とのつながりを先ず第一義の、事業として考えるべきであろう。既に行われて要る農業に対し、未来に繋がる形で里地里山事業による、新しい活力が加えられることこそ、久野の里山事業の根幹となるべきであろう。ここが久野の事業案の骨子とも言えるところである。
大きくは4つの要素がある。

① 久野には植木の育成場やストックヤードが大きく広がる。この景観的魅力は、現在の久野の里地里山的景観の重要な要素と成っている。植木養成場は、そのままでも美しいものではあるが、植物園的要素を加味し、散在する育成場の連携を作り出すことが、重要に成るであろう。現在、小田原植木さんのように、すでに植物園構想が計られ、樹木にプレートがつけられている園もある。例えば、先ず、フラワーガーデンで登録して、久野里地里山地図を購入する。久野地域利用可能トイレ一覧なども必要であろう。参加者であることを示すプレートをつける。幾つかの苗場を繋ぐコースを作り、育成場を巡りながら、樹木の名前あてクイズなどをおこないながら、樹木の特徴などを知りながら、植木の知識を深める。月に一回程度、全体の植物園としてのガイド日を設定し、グループ単位で、コースを決めたツアーを行うなど。植木講習会など魅力あるイベントが設定できるであろう。更にフラワーガーデンや、諏訪の原公園と連携し、植物の里作りのような構想が考えられるだろう。公園には今まで見てきた植木の販売所、あるいは造園の受付けも必要であろう。参加者には造成中の里山に自分の苗木を植える、植林体験が出来るなど、里山と市民を繋ぐ工夫が出来るであろう。

② 久野地域では茶業が広範に地域で行われている、農林水産大臣賞を受賞するような、良質なお茶が生産されている。久野の茶業は、茶葉の生産から製茶までが、地域内で行われると言う特徴があり、これに地域のお茶が、ここで湧き出る良質な水で、飲める場所が加われば、より効果的なアピールが出来ると思われる。このお茶を飲める場所に加えて、更に体験的に、お茶畑を管理できるとか、お茶摘が出来るとか。自分のお茶の生産体験が出来るなど。里地里山的楽しみとしての広がりが期待できるだろう。当然久野で生産された、お茶の販売も積極的に行うことが出来る。台湾では茶園に併設されたあずまやの喫茶室で、良質なお茶を飲むことが、流行しているそうだ。茶が提供できる場所は天子台辺りの景観の優れた場所が、最適であろう。これも単独の喫茶室では成立が困難と思われるので、幾つかの以下に提案する要素との組み合わせが重要に成るだろう。

③ 峯自然園との連携。峯自然園の経営の姿が、久野川を生かした、先駆的な事例として、里地里山の楽しみ方を提案している。現在残念な事に、この事業が唯一のものとして存在している所だ。周辺に連携する施設が存在する事で、魅力がいっそうに増すのではないだろうか。久野川河畔の里地里山の整備を行い、回遊的な魅力を作り出す必要があろう。例えば、峯自然園から下流域に向けて、河岸の整備を行い、水辺の遊歩道作り、田んぼを復活し、あやめや菖蒲の水辺公園も可能であろう。加えて水車の再建などが、考えられる所であろう。小麦の生産が復活すれば、水車は粉をひくところから、パンや蕎麦の体験的活動に繋がる。石釜を設置し、ひいた粉で、ピザやパン作りなども考えられる。これには地域のパン屋さんとの連携が必要になるだろう。それぞれが有機的なつながりをもてるように工夫する必要があろう。

④ 久野ではNPOの農業体験事業が10年以上前から、展開されている。CLCAとあしがら農の会が行っている事業を、久野という地域性を加味し里地里山事業としての整備を加える。これから広がる市民的な農業体験の受け皿として、今まで蓄積してきた経験が生かされるはずである。耕作が限界に来ている農地は少なくない。この受け皿としては、農業者にとっては傾斜地で、機械化されにくく、まとまっていない農地は利用しにくいものがある。市民的な視点で見ると、この狭い傾斜地は、景観がよく、かえって最善の体験地に成る。ここを、どのように市民的な利用につなげるかは、久野の里地里山形成には大きな要素になるはずである。いずれの事業も駐車場とトイレと道具置き場の確保が、重要になる。少々離れていても、貸して頂ける場所の確保が出来る事。トイレの貸し出しなども、可能なら工夫したい所である。こうした調整を地域と連携が出来れば、より事業運営が安定し、広がりが出てくると思われる。

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