セルフビルドとプレカット

   

最小限の家の実施計画を進めた。箱根湯本の本田大工さんに相談した。穂田さんから一度相談したほうがいいと言われていた。あれこれ実施設計は進めてはいたのだが、一番判らないのが、ローコストと材料の関係だ。材料には3メートル、4メートル、5メートルと長さがあるようだ。これが価格が比例してはいない。一番汎用のものが割安のようだ。だから、柱の長さの取り方等、合理的に利用しないと無駄が出ることになる。それに加えて、セルフビルドで、進めるわけだから、誰にでも簡単に作れる構造でないといけない。そんな相談は、やはりこう言う事を理解してくれる。大工さんでないと上手くない。大工さんは職人さんだから、セルフビルドなどと言う事は普通嫌いだ。本田さんとは、アトリエの直しで意気投合した。そのセンスが素晴しいのだ。

アトリエだから、私が気持ちよく絵が描けると言う事が何より重要に成る、これは一般的な事ではない。床材がどういう感じが良いか、など油彩の人とはまるで違う。日本画に近いが、絵を時々立てるという辺りで、これまた違う。その辺の機微を実にすっきりと受け止めてくれる人だった。それ以来なんでも相談させてもらってきた。本田さんは前から最小限の家を、相談に乗ってくれるとは言われていたので、却って迷惑をかけそうで、気が引けたのだが、結局相談した。色々貴重な実際的なアドバイスを聞かせてくれた上で、これはプレカットに挑戦して見たらと言うのだ。設計がきっちり出来ていれば、後はプレカットしてもらえれば、セルフビルドできるだろう。このように言われるのだ。それの方が、これを次にやろうと言う人にも、すぐに利用できる物になるし、たぶんコスト的にも、良い選択のはずだと言う。見積もり価格も最終設計図も、ドンと出てくるそうだ。

それで早速、大山材木店に一緒に出かけた。大山さんにも以前から相談に乗っていただいているプランだし、出来た土台も見てもらっている。大山さんの材料で、プレカットすると言うのが、多くの大工さんがやっている今のやり方なのだそうだ。木組み部分は前から、専門家に頼む方が、合理的とは考えていたが、まさかプレカットとは、目からうろこだった。作った模型が、出向いている。こんな形で役に立つとは思いも寄らなかった。床板の張り方の向きが違うそうだ。出入り口に平行に張った方が、建具の立て付けがいいそうだ。張りの材が、一番太くなるそうで、これが頭に当るようでは困る。これが案外、床下の高さと関係するのだ。床下45センチと考えていたら、あれこれ計算すると、張りまでの高さが、2メートルぐらいになるらしい。

プレカットが進んだ原因はやはりごみだそうだ。大工さんが下小屋で準備するのでは、結構ごみが不合理に出るそうだ。工場で、何棟も作るなら、ごみ量がぐんと減る。これなどは製造者責任の良い例だ。元で責任を取る事が、やはり合理的だ。端材を上手く利用するそうだ。材の価格というより、ごみをどう減量するかを考えて居ないと、大変な処理費用になるそうだ。下小屋が要らなくなる。これも大工さんにとっては、プレカットを選択する理由だそうだ。その結果、大工さんが職人でなくなる。一人で家を建てられない、大工さんが現われたそうだ。プラモデルを作っていても、本当のものとはやはり違う。でも、セルフビルド入門では、案外に良いアイデアかもしれない。プラモデル方式のようなものだろう。

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