栽培技術研究会
2016/08/10
昨年に引き続き、自然農法国際研究開発センターから、石綿研究員に来ていただき、圃場での直接指導と、自然農法の基本的な仕組の講義をしていただいた。石綿氏は野菜の育種の専門家で、自然農法の種子の生産にも携われている。植物の自然状態の総合的な把握が明瞭で、土壌と植物のかかわりに関して、示唆される点が多々ある。自然界の総合的な観点から、各野菜の特徴ある関わりが、実践に基づき研究されている。前回の講義と同様に、貴重な観点をいくつも戴いたと思う。根圏が作り出す世界のイメージが、実に豊かだ。季節による根圏の意味の変化など、極めてクリアーで、こうした土壌のイメージが形成できれば、あらゆる栽培が見えてくると思う。特にトマトのステージ分けと、温度の影響の細かい分析は役立つところが大きかった。
今回、石綿さんにとっては専門外の事ではあったけれど、水田雑草に対する考えを伺いたく、前もって質問をお願いしておいた。コナギが何故繁茂するかだ。坊所の10年やってきた田んぼで、ほぼコナギを抑えていた。方法は田植え直後の100キロ米糠散布による、コナギ抑草だ。これが成功している田んぼが、水の冷たい田に限定され、増えてこない。そこで、岡山の方の赤城さん提唱の菜の花生漉き込みによる方法を試した。これが大失敗に終わり、大変なコナギになった。やはり米ぬかのほうが良かったと反省している。しかし、何故、米糠散布で、コナギを抑える事に成功する田と、そうでない田があるのか、これを伺いたかった。すると意外にも、米ぬかはコナギの発芽を活発化しているというお話だった。コナギが抑えられるのは、秋の田の作り方にある。と言う指摘だった。これだけでは、よく内容は分からなかったのだが、水稲チームの作った冊子を分けていただいた。
地力窒素が多く、保肥力が高い土では稗がでないという事。コナギは稲に活力があり、充分に稲の根圏が広がるような状態であれば、稲がコナギを抑える事になる。秋起こしの際に養分を補給し、田植え直前に土ぼかしを施用する。土を整った肥沃な物にしてゆく。稲が初期から、活力を持つ物であれば、雑草に勝る事になる。こんな考えのようだ。肥沃であれば雑草だって旺盛になるのではなかろうか。雑草には適さない、特にコナギには適さない、肥沃をどう作り出すのだろう。コナギとの競争に稲が勝つ。こんな考えのようだが、雑草に勝てる作物などあるのだろうか。やはり、コナギの生育のステージと稲の生育をスタート時で勝るように、どのようにずらして行くか。この辺の技術の整理が必要に思う。短い時間ではこの辺りの事がうかがえず、まだ分からない事ばかりだ。
今のところ、自然農法国際研究センターの、この考えは従来の観察と幾つかの点で異なる。収量の高い田のほうが、コナギは多いい。つまり、稲が活力がある田でのコナギが目立つ。水温が低く、水もちの悪い、藁を入れない、流し水の、初期成育の悪い田。こんな田がコナギが生えない。今までの観察で、溶存酸素量の多い田はコナギが出ないのではないか、と考えている。コナギが米糠により発芽しないように観察される田も、幾つか見てきたが、米糠散布による微生物の活性化が、トロトロ層の形成に繋がる。米ぬかを散布して、臭いようでは抑草は出来ない。米ぬかを散布したときに還元的な方向に進むような土壌では、かえってコナギの発芽が見られる。改めて今年の、自分なりの試みを整理しなおして、試してみたい。