孵化機の自作

   

孵化器の作り方。時々問い合わせがあるので、雑誌に昔書いたものを、掲載させてもらいます。図が無いと分かりにくいですが、ご容赦ください。食農教育の中に掲載されたものです。取り寄せてください。

卵の孵化は大変難しい作業です。親鳥のように卵に対する愛情と、きめ細やかな観察力が必要です。自然に生きている野鶏がどのように孵化しているかを参考に、孵化法を工夫しなくてはなりません。熱帯地方の雨季に、茂みの中の地面に巣を作り、野鶏は孵化を行います。親鳥は孵化を始めると胸の毛が抜けて、直に卵と接します。卵は足で位置を変え、上下を変えられます。卵の中では胚は常に上部に来るように動き、親鳥と肌をふれあい成長します。接触面は37、7度ぐらいで、地面側との温度差は5度位あります。最終晩は体力が落ちて少し下がると考えます。親鳥の体重や、地面からの湿度の立ちあがり、序盤は普通に餌を食べに離れますが、途中から離れなくなります。

1、種卵の準備
活力のある種卵を準備することが第一です。食品で有精卵と表示しているものには、流通、店舗での取扱いの為、孵化しない卵がありますので、種卵としては不適です。初夏、直接鶏を飼っている所を訪ねて、元気な若鶏で雄2羽に雌10羽程度の、放し飼い飼育で虫や緑餌を十分に食べた、活力のある卵が理想です。巣外卵は遺伝しますので、巣箱の中で産んだ卵にします。卵の殻がつやつやできめの細かいもの、糞などの汚れのない、卵形に整った卵を準備します。卵の表面のクチクラ層はデリケートなものです、卵は洗わないこと、また手で頻繁に触ることも良くありません。振動や衝撃に弱く、簡単に孵化しなくなります。産んでから出来るだけ早く孵化器に入れます。保存には8,8度で湿度が高い場所(90%でも良し)が最善です、保存中は一日一回上下に回転してください。私は70日保存して孵化に成功したことがありますが、一週間以内に孵化を始めてください。卵には産卵日、上下の印、親鳥の種類などの情報を鉛筆で書き入れます。

2、 孵化箱の準備
 断熱性の高い材料、今回はダンボール箱(35×45×40cm)を2重にして横扉の箱を作ります。この孵化箱で10個から20個が適正数です。箱はどこの継ぎ目もガムテープでしっかり止めます。横に中を見るための、透明の2重窓をつけます。窓は縦長で、位置は中央です。裏表にプラスチック板をガムテープで止めて置きます。中には5cmの深さのある、水盤を一番下に置ます。この水の量で、温度の緩やかな変化を作ります。その上に餅網に枠を付けたような棚を箱の底面一杯に作り、水盤を覆うように置きます。孵化した雛が動き回っても、落ちたりしない構造にします。転卵のための格子状の枠を金網の上に敷き、その上に卵を並べます。転卵の為の格子は両端を長くし、壁に穴をあけ、外から前後に引く操作が出来るようにします。天井に穴を開け電線を通します。中の空間には天井から40ワット電球(予備を準備)を吊り、電球は上下移動で、温度調整を出来るようにします。ソケットは陶器製にします。中の空間には高さが必要です。外の電線をガムテープで止め、電球の高さ調整がします。箱を覆う布を数枚準備して、上部に乗せる枚数で温度調整をします。箱の対角に3ミリの空気穴を開け気流が出来るようにします。卵から5ミリ上に温度計が来るようにダンボールの窓下の壁に穴をあけ棒状の温度計を差し入れます。箱の外にも温度計を置き、外気温との調整をします。横の扉は、ダンボール箱のふたが二重になっている状態ですが、この扉の開け閉めの具合で、温度調整を行います。

3、 孵化の実際
孵化箱を置く部屋は、室温が25度で安定している場所が理想です。季節は初夏。日光が直接あたらない場所。水などがこぼれるのでビニールを敷いてください。出来れば観察の行き届く、居室がいいでしょう。種卵は37度から39度程度で発生を始めます。卵の5ミリ上で39度が最善です。ファーンをつける場合は37,5度で全体が安定するようにし、孵化時には止めます。発生初期一週間の温度管理は重要です。湿度は箱底一杯の水盤に水を張るとおおよそ適正の70%に成ります。湿度は高いが卵の水分は抜けると言う状態が理想です。ファーンがない場合この条件を作るのは難しいです。水盤の水は無くならないように。卵は熱を発しますし、上下で温度も異なります。温度を安定するこまめな温度管理を心がけてください。上り過ぎの方が下がるより害があります。卵は6時、11時、16時、21時に、箱から出ている枠の2辺の棒を静かに押し引きして、一日に4回以上、上下を変えてください。日に一回は中央の卵と外側の卵の位置を変えてください。こうした作業時に卵は外気に触れますが、それも必要なことです。種卵は途中で追加しないでください。一週間経過したら検卵をします。周囲を暗くして、光源にかざすと、発生していれば影が映ります。新しい卵と比較してみると違いが理解できます。発生していない卵は取り出し、割って状態を観察してください。検卵が終わったら、殻を劣化させる為、35度の清潔なぬるま湯に1分漬けて下さい。発生初期の振動は厳禁です。静かに作業してください。水盤の水も替えます。卵の殻が硬そうな場合は、2週目にもう一度ぬるま湯に漬けます。2週目検卵では発生停止卵を取り除きます。心臓の動きで生きているのが確認できます。真っ黒になっている卵も駄目です。ただし、判別できないものは残して構いません。終盤になると卵から発する熱で室温が突然高くなることがあります。18日経ったら転卵は終わりです。湿度は孵化の際高めることが大切です。蒸発を高めるため、ガーゼを利用して蒸散の工夫をします。この後、孵化が終わるまで扉は決して開けません。室温は37、5度に下げます。

21日で孵化しますが、早ければ19日で孵化が始まります。孵化をしても身体が乾き動き回るまで、そのままで問題ありません。48時間、餌や水も必要がありません。先に孵ったものが暴れても、孵りかかりの卵の障害になることはありませんので、扉を開けないでください。
最終段階で卵から出られないで死んでしまうものを「死ごもり」と言い良くあります。理由を考え次回に備えることが、熟達して行くコツです。先に孵化したものを孵化箱から出しても、少し覗いて割れきれない卵があったら、35度程度のぬるま湯を洗面器に張り、その中で割れかかった卵を浸すように入れ、ゆっくり爪で一回り卵を割り、頭の側を取り去ります。薄皮で覆われていて破れにくいときは、注意深く顔のあたりを取り去り、孵化箱に戻し様子を見て、2段階で殻から出します。お尻の側はそのままにして戻します。お尻の側をはずすと出血して死んでしまいます。生き残る活力のある雛は、後は自分で殻から出てきます。
今回、上記のように、ファーンやサーモなしで試行しましたが(4、16~5、8)10個中6羽孵化しました。
①サーモスタットはEGO社製の13L1¥2600―、坂口電熱TEL:03-3253-8211

 - 自然養鶏