9条の応援歌

   

今、9条の応援歌という、展覧会に出す絵を描いている。描いているといっても、頭の中で描いている。あれこれ頭の中で考えている。描いているのだが、なかなか紙に筆を入れるところまで進まない。
私の場合、描き出した時は、終わりのようなもので、一応の結論が出なければ描き出した所でしょうがない。私の住んでいるこの場所を描きたいと思っている。
それが、9条の応援になると思っている。先日、9条の署名しているところの絵があって、解り易くてすばらしい。という意見を聞いた。驚いた。励みになるということなのか。共感するという事なのか。9条に興味のない人はその絵を見てなんと思うだろう。そういうやり方は絵がやることではないと思っている。

先日事故で、命を奇跡的に取り留めた若者が、久し振りに見た景色を、その美しさに感銘を受けたという、手紙を呉れた。私が描きたいのはそういう命が初めて出会う景色だ。私の絵に生きて行く切実な魂が初めて触れる、感謝に満ちた風景を作り出す事で、見た者が平和な日々の実在を感じる事ができるような絵、を描きたいのだ。それが絵という方法の、優れたやり方だと思っている。

9条の応援歌展を主催するのが、葛飾美術研究所、カツビといわれてきた仲間だ。私もこの会の末席にいたつもりだ。それは今も絵を描き続けている誇りでもある。まだ金沢にいた頃、北陸学生美術展という物を企画した。長野県、富山県、石川県、福井県の学生に呼びかけて、美術展を開催した。従来にない新しいことをやりたいということで、この地域で美術に関心のある学生、全てに呼びかけ、大学紛争中で、何故美術を志しているのか。そんな事をテーマにして絵を並べ、語り合った。こんな時代に絵を描いているとは何事だ。そうじゃない、今だからこそ絵を描いているのだ。

当然、金沢美術大学にも、話に行った。政治的志向の強い私達とは、どこか一線を引いて、彼らは近づいてこなかった、美大生にもこの輪に入ってもらおうという考えで、いわばオルグしにいった。

その時最初出合ったのが、冨田さんという彫刻の学生だった。冨田さん達は、野外彫刻展というのを企画していて、かなり積極的に、活動をしているグループだった。当時美大の彫刻は有望な人が沢山いた。当然、私達趣味で絵を描いている、と見られている者を相手にしたくないという、気分があった。しかし、山本さんというこれまた、当時大活躍していて、新聞社に作品が買い上げられ、社屋に前に飾られていて、注目の的だった人とも知り合う事になった。2人は対等に話を聞いてくれた。彼らの真剣さに出会う事で、私が受けたものは大きく、それが、フランスに行くきっかけになっていった。

それから、6年が経ち、お互いに色々活動を続けていて、東京で再開することになる。たまたま、お互い銀座の、今は無くなった、史染抄ギャラリーで個展をやった。なぜか山田さんというオーナーと意気投合して、そこで10回ぐらい個展を続けた。聞いてみると、山本さん達は葛飾で、共同アトリエをやっているという。そこで、クロッキー会もやっているので、来ないか。と誘われて、参加するようになる。そのアトリエは、まさに学生時代の金沢が、持ち込まれたような、熱気にあふれた空間で、すっかり引き込まれる。クリスマス会の楽しかった事。
作家が共同で、生活をともにしながら、切磋琢磨してゆくというのは、理想ではあるが、普通実現するわけがない。それを、今も続けているのが、カツビの仲間達だ。この現代稀な活動はあちこちで記録されている。

その仲間が、こんど、9条の応援歌展をやらないか。と誘ってくれた。二つ返事で、是非やりましょうという事で、「守ろう九条の応援歌」展です。どんな展覧会に成るのだろう。久し振りに会える人達はどんなだろう。

「好文画廊」中央区日本橋浜町2-24-1℡03-3669-1957  
5月26日(金)から、28日(日)11時から7時(日曜は5時まで、)

 - 水彩画