絵を描く為の指の「お手上げ体操」

   



 わかばの水たまりはこの奥の日陰にある。普段はだいたい泥の中に寝そべっている。人が行くと、立ち上がり外に出てくる。身体は泥まみれで臭いのだが、これが水牛には気分が良いらしい。カバと同じでは無いだろうか。泥が濡れている間は日向で餌を食べていても、快適ないようだ。

 「お手上げ体操」のことを書いておこうと思う。年寄には役立つことだと思う。老化の第一に手の震えというものがある。仕方がないもののように思われているが、食い止めることは出来る。酒を飲みすぎで震えが来ていると言われることがあるが、そんなことは無い。

 絵描きにとって右手の自由な動きは大事なものだ。無意識に動いているのだが、意識化のものが反映して、自由自在で無ければならない。手の動きが硬くなったり、震えたりするようになれば、絵はそうしたものになって仕舞うのだろう。

 目は緑内障で徐々に衰えているのは受け入れるほか無いが、どこかで悪化が止まることも期待できる。衰えは視神経の劣化なのだろうから、劣化の速度が遅くなることを願うばかりだが、悪いなりに安定してきて、絵を描くことにはまだ差し支えは無い。

 目の次に大事なものが右手である。特に右手の指の微妙な動きは絵にかなりの影響があるに違いない。年齢と共に、指の動きがギクシャクしてくることがある。震えが来る人もいる。字を書こうとするとヨレヨレゆれてしまう年寄もいる。

 祖父は卒塔婆を書くのに酒を飲んでいた。普段は震えるわけでも無いのだが、字を書こうとすると、震え出す。そこで酒を飲むと震えなくなると言って、昼間から酒を飲んでいた。おじさんもかなり手が震えたから、そうした血統かもしれないと思っている。

 二年前ほどから、なんとなく手にしびれを感じるようになった。これはまずいと、手のしびれを取るような体操を考えて、毎日している。それで今ではしびれはない。指は万全に動いている。絵を描く手の微妙な動きは、間違いなく若い頃より自由だと思う。

 若い頃はまだ訓練が行き届いていないために、もう一つ微妙な動きの反応を自由に引き出すことが出来なかった。こういう線を引こうと思っても、その線が引けないと言うこともよくあった。今は引きたいと思う線が引けるから、随分絵の自由の幅が広がった気がしている。

 この手が老化で衰えたら困ると思っている。今の状態が少しでも長く、出来れば死ぬまで続いて貰いたいと思っている。中川一政氏の書の線の引き方を見ると、死ぬまで衰えというものは全くない。だから、人によっては絵を描くという意味では手の動きが少しも衰えずに、100歳を迎えることができる人もいると考えられる。

 そのために「お手上げ体操」というのを考え実践している。お手上げは、手を頭より高く上げる体操と言うことである。手を高く上げれば、手の毛細血管に血液を戻すために心臓に負荷がかかる。五分間も上げていることは訓練が無ければかなりきついことになる。

 朝の動禅体操の中の動きに手を強化する動きを加えた。まずスワイショウである。スワイショウは手をでんでんタイコのように身体の周りに振り回す体操である。身体の軸を腕を回すことで軸にねじりを与える体操である。

 スワイショウにおける手の動きを、自分の手で自分の首に空手チョップをするように動かすようにしたのだ。実際には首まで手が届き、空手チョップすることは無い。その手前で止まる。手の平を上を向けて首の方向に向けて振り回すわけだ。

 スワイショウは左右に行い一回として。60回行う。これは手の先まで遠心力で血液を送ることになる。腕の疲れなども回復できる。スワイショウは気が向いたらいつでも少しだけでも行うと良い。身体全体の活性化に役立つ。

 寝転んで足を壁に付ける体操をしている。これが「お手上げ体操」の中心になるものである。この時手はまっすぐに上げて行う。足は家具のへこみの丁度良い高さに踵を当てて、動かす。踵がぐりぐりと痛いが。足裏治療ではこの痛さが目に良いと言うことである。足は4つの動きを40回づつ行う。

 足を左右にくりくりと開いたり閉じたりする体操を40回。それに合わせて上に揚げた手も閉じたり開いたり。次に足先を左右に振るように40回。手も同じように40回。次は足全体で握って平いて、を40回。手も握って飛来手を40回。最後に足を先だけを歩く馬のようにパカパカやる。手も同じに動かし40回。

 160回の間、手は挙げたまま動かしている。この間どこかで手が疲れてくる。血が行かなくなる感じである。それを頑張って手の動きで血を戻すようにする。すると何とか回復して、160回まで出来る。これが楽に出来るように成ったら、50回を目指しても良いかと思う。

 蹴り上げ体操では、やはり手を頭より上に上げて行う。一回蹴り上げる都度、頭の上の手を強く握る。これを30回で一組で、3回に分けて行うから、90回行うことになる。手を心臓より高い位置で握ったり、閉じたりすることは手の毛細血管の活用になる。

 直接手のしびれの回復に効果があったものは八段錦の中の7段の動きを自分なりに変化させた動きである。七段錦の動きで手を突き出すところがあるのだが、ここで、左手を前に出し手首からさきを三回大きく回す。3回目に上に開いた手の指を小指から順番に握る。右手でも同じ動きをする。

 最初は前に出した手をきれいに3回回すことも難しかったが、繰り返す間に、回せるようになった。指をきっちりと順番に握ることも最初は出来ないが、徐々に出来るようになった。出来るようになった頃に、少しあったしびれが感じられなくなった。

 たぶん若い頃であれば、こんな動きは何でも無く出来たのだろうが、身体の神経が鈍くなるのか、どうしても動きがぎこちなくなる。その点を「お手上げ体操」を行うことで、回復させることが出来るようだ。

 そして指先体操の一番が、キーボード打ちである。毎朝、1時間キーボードをカチャカチャ打っている。頭と連携して指先が動いている。これは頭の訓練でもあるが、指先の訓練でもある。できるだけ早く打つようにしている。考える速度で打てるようにと思っている。

 

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