イネ作りコロガシを行う意味

      2025/04/24


 
 一番田んぼ2回目のコロガシをやった翌日の状態の写真。現在、縦横縦横と4回のコロガシが終わった。今年は1週間置きに縦横を行い、4週間で8回のコロガシをやる予定。田植え2週間後に1回目を行った。土壌がゆるくて、深くて大変だった。回を追うごとに、土壌も安定して楽になった。
 
 今年の1番田んぼのイネ作りは12月15日の田植えで始まっている。現在20日が経過して、イネは7葉期から8葉期になっている。今やらなければならない作業は中耕除草のコロガシである。コロガシとは田車で土壌を攪拌して歩くことである。
 
 田車によるコロガシの目的は大きくは2つある。雑草の初期除草と土壌を攪拌して酸素を入れることである。特に機械による深い代掻きは土壌を攪拌しすぎていることが多い。そのために土壌が還元かしやすいことになる。深い代掻きを生かすためには、コロガシを行い酸素を供給し、土壌を還元化させないで、好気性発酵に持って行かなければならない。
 
 コロガシというと、転がして田んぼに田植えのための線を引く木製の古い農具もある。線引きをするのは今はこのコロガシではなく、櫛の大きなような農具の方が、早く正確に引けるので、農の会では大櫛線引きで田植えの線は引いている。紐でやる人も居るが、大櫛の線引きで線を引いた方がはるかに早くて合理性がある。
 
 コロガシは自給のイネ作りでは必ずやらなければならない作業である。除草という意味だけならば、草が生えてこなければやる必要はないのだが、田んぼの良い土壌を維持するためには不可欠である。石垣の田んぼはあまり雑草は生えないので、その意味ではコロガシはやらないでも良い。
 
 しかし酸素を含んだ活性化した土壌を作るためにはコロガシを8回行う。江戸時代には転がし8回は言われたと書かれている。鍬で荒起こしを行い、代掻きを行ったために、土壌は今よりあらい。そこで何度もコロガシを行い、土壌を細かくすることで根が土壌に広がった。トラックターで代掻きをした場合のコロガシ8回の意味は少し違う意味になる。
 
 田んぼでは稲が終わった後には、緑肥が蒔かれていたり、刈り取った後の稲藁が撒かれている。稲の刈った後の根のついたイネ株もある。特に石垣島の「のぼたん農園」の田んぼでは、1年3回の収穫をするので、稲わらなど3回分が田んぼの表面にすべて撒かれている。これをすべて漉き込み肥料にする。その他堆肥なども、収穫前に撒く。
 
 実際には強烈な日射のためにとろけてしまうものも多いのだが、それでも田んぼの地表に多く積み重なっている。さらに、アカウキクサ型医療に発生している。そのすべてを、代掻きで土壌の中に漉き込むことになる。これが稲の肥料になって行く。有機物が肥料になるためには、良い発酵をさせなければならない。ここが肝心な所だ。
 
 良い発酵を促進するためには土壌の中に酸素を入れる必要がある。攪拌しないで居ると、土壌の中の酸素が使われてしまい嫌気的な発酵になる。メタン発酵になることもある。そこで攪拌し酸素を含んだ水を土壌の中に入れてやる。すると良い発酵状態になり、土壌が活性化する。
 
 実際にコロガシをすると、その翌日には稲がピンと立ち上がることが多い。その翌日には葉色があがってくる。黄色っぽい緑から、一段階緑が濃くなる。田んぼ全体を見たときに緑が濃くなる。この感じをよく観察して覚える必要がある。コロガシ効果は速効性がある。もしそうならなければ何か問題が起きている。
 
 コロガシは稲が根付いたら早く行う。手植えで5葉期前後の苗を田植えした場合は、1週間後くらいが普通である。一日目に縦を転がす。稲がある程度安定しているようなら、翌日横を転がす。そしてその1週間後に2回目のコロガシを行う。やはり、一日目縦、翌日横と行う。
 
 できれば、これを田植え後の4回行うことが基本になる。何故4回、縦横を考えれば8回も行うかと言えば、それくらいの良い効果を経験してきたからだ。田植え後頑張ってコロガせば必ず田んぼの稲は良くなる。転がして良くならなかったことはかつてない。
 
 コロガシを行えば根を切ることになる。稲は田植え後1ヶ月ぐらいの間は、根を切ることは良い効果を生むことになる。初期の根は切られることで分根をし、より根量を増やして行く。それが分ゲツの増加に繋がる。しかし、最高分ゲツ期以降は田んぼに入らない方が良い。上根が田んぼ一面に張り始めている。この根は切らない方が良い穂を作る。
 
 田んぼの表面には日光が当たり、光合成細菌などの微生物が沢山生息を始める。そして、トロトロ層が形成されて行く。この微生物が作り出す肥沃な土壌を地中に入れることで、稲の肥料にすることが出来る。田植え後1ヶ月ぐらいの間、時には2ヶ月ぐらいの間。稲に肥料与え、分ゲツを促進する意味でコロガシを行う。
 
 またコロガシをすると、水田の水が濁ることに成る。濁り水が田んぼの土壌をよくする。米は田の土をかきまわすことによって収量が増 すのだといわれている。合鴨農法などは濁り水農法である。濁り水の方が微生物の増殖が進むのではないかと推測している。
 
 コロガシは畝取りをするためには欠かせない作業になる。しかし、民間稲作研究所の稲葉さんのように全くコロガシなどしないで、有機農法で畝取りをしている方も居るのだから、イネ作りは総合的なもので、それぞれのやり方で進めるほかない。田んぼの土壌の作り方が違うのだ。
 
 私のやり方は自給が目的で、できるだけ外から持ち込まずにやる農法である。田んぼで肥料まで生産して行くやり方である。以前はひこばえ農法はやっていなかったので、緑肥農法であった。今はアカウキクサを肥料とする農法を目指している。まだ、アカウキクサを十分に繁殖させるところまで完成はしていない。すこしづつ見えてきているところだ。
 
 コロガシで良い土壌を作ると言うことは、具体的にはどういうことになるかと言えば、田んぼを荒起こしをして、その後代掻きをする。土壌の中に大量の腐植が漉き込まれることになる。その有機物は微生物によって発酵して分解する。酸素があれば好気性菌による分解になる。
 
 分解して行くことで稲が必要とする肥料になる。可給態と呼ばれる吸収できる肥料分に変って行く。それと同時に、土壌が攪拌され、水の通りが良くなることで、深くまで酸素が入って行く。稲の根が酸素を呼吸し出すことが出来るようになる。酸素によって発根が促進されることになる。
 

 土壌を反転、攪拌して新しい水と混ぜ合わせることで、肥料成分を可給態(稲が吸いやすい形)に変える。水面にあるアカウキクサが土壌に漉き込まれることで窒素分を地中に漉き込むことが出来る。その窒素分を稲が吸収できる形の窒素分に、発酵作用で変えることができる。

 
 雑草があり、それを埋め込むことが出来れば、それも肥料分になって行く。堆肥などを追肥で入れるとすれば、入れた後転がすことで、土壌と堆肥が混ざり、良い土壌を作ることになる。田んぼには落ち葉や藁や雑草などを表土に入れて、馴染んだ段階で転がして漉き込むと、土壌の腐植を増やすことが出来る。
 
 特にひこばえ農法の場合、1年に3回の収穫を行うのだから、かなりの肥料分が必要になる。その肥料を田んぼで生産しながら、イネ作りを行うのだから、何らかの形で、追肥をして行かなければならない。追肥とコロガシを組み合わせることで、効果的な土壌作りが可能になる。
 
 コロガシを行うときには水をどのようにするかを考える必要がある。流し水でおこなうのが基本となる。また深水で行う場合と、淺水で行う場合とがある。雑草やアオミドロなどが地表や水面に有り漉き込みたいときは、淺水で行う。アカウキクサを漉き込むときは完全に水を落としてコロガシをする。
 
 以上のようにコロガシは、様々な意味で、効果の高い土壌をよくする作業なので、必ず行いたい。稲が元気になる初期の田んぼで行う、唯一の方法と考えて良い。
 

Related Images:

おすすめ記事

 - 稲作