トランプ関税とは何か。

アメリカは自由貿易立国で、世界をリードし、世界で一番豊かな国になった。そして、トランプ氏は関税障壁を高くして、自由貿易を止めようとしている。政策としては馬鹿げているものにしか見えない。アメリカを作り上げた自由貿易を止めることは、アメリカが第2次世界大戦前に戻ると言うことを意味する。
何故自由貿易立国を止めるかと言えば、アメリカが資本主義の先頭を進み、資本主義の限界に達したと言うことなのではないか。端的に言えば、豊かな国になりすぎて、貿易赤字が膨大な国になった。それはアメリカが製造の国ではなくなったと言うことを意味している。
アメリカが世界一の豊かな国になり、労働費が高くなったことが、畝う三品の競争で負けている原因ではないのか。農業分野でも1000万人もいるという不法滞在の外国人労働者に格安に働いて貰っている。それをアメリカから排除するとすれば、アメリカの農産物輸出は減少するのではないのだろうか。
アメリカ人の労賃では割に合わないというので、アメリカの製造業は縮小され、海外から生産品を買う国になったのだ。アメリカはサービス分野で貿易赤字を穴埋めしている国になった。電気通信業、保険業、銀行業、販売業、観光業や輸送業などが盛んな国になった。
貿易赤字を縮小するために関税を上げるという主張が、トランプ氏の表向きの考え方なのだ。関税を上げると言うことで、輸入製品が高くなり、アメリカの製造業が復活するというのも、表向きの理由に加わっている。ただそう言うことは起きそうにもないという見方が、トランプ関税によって起こる不景気論の見方だ。
一方で関税は、誰が払うのかと言えば、製品の購入者である。アメリカで暮らしている人達である。アメリカの自動車の方が、25%安くなるのだから売れるはずだ。アメリカの自動車産業は復活すると一応は言われているが、その程度ではアメリカの製造業は復活できない可能性の方が高いという意見も強い。
そしてその輸入業者が払った関税がどこに行くかである。トランプの主張では、関税収入で所得税を廃止すると主張しているのだ。アメリカの所得税は上位1%の富裕層が40%を担っている。というほどに富裕層負担が大きいことになっている。その富裕層の一人であり、利益代表であるのがトランプ氏だ。
トランプ氏の本音は馬鹿高い所得税を廃止したいというところが本音になる。アメリカの高額所得者はどれほど税金を負担しても、仕方がないほど大きな所得があり、また自由主義経済の恩恵を受けている。トランプ氏はそもそも不動産業者ではないか。
アメリカには世界中から製造品が押し寄せているのだから、それに関税をかけて所得税をなくせば、富裕層が得をするという所がトランプ氏の本音。関税は製品購入者が負担するもので、消費税と同じものになる。アメリカの消費が落ち込むことになる。
アメリカの製造業が復活するという建前はあるが、その前にアメリカに暮らす人たちは馬鹿高い関税を払わなければならなくなるのだ。消費が落ち込むと言うことになるだろう。消費税がそうであるように、関税も定食区社ほど負担が大きくなる。アメリカは不景気が始まると言うことだ。
この時点でアメリカの経済はおかしくなるはずだ。急に中国製品が倍になり、それでもアメリカの製品では対抗が出来ないのが現実になる。仕方がなく高くなった外国製品を買う人もいるが、そもそも変えない人が増加するだろう。いわば25%の消費税負担がアメリカ人すべてに押し寄せる。
ものが売れなくなる。日本の消費税問題によく似ている。消費税の導入の目的は、結局の所法人税の値下げであった。企業の活動力を上げて、貿易立国を目指そうと言うことが、アベノミクスである。所が法人税を下げた分だけ、企業は内部留保を増やして、ひどい経済不況に陥り、消費税不況と言えるような、庶民の暮らしが、税で搾り取られることになり、実質収入源が続いた。
アメリカの富裕層が所得をさらに増やしたところで、それがアメリカの経済が回わり始めるとは到底思えない。1%の富裕層の消費量は、あくまで1%の消費増加に過ぎない。富裕層が今以上に贅沢のしようもない。すでに贅沢三昧なのだ。
企業は法人税の下がった分を、新製品の開発や、労働費の値上げに回す。それが新産業の創出というアベノミクスの第3の矢につながるはずだった。所が企業はすでに進取の精神がないために、守りに回り投資やら、貯金やらに利益を貯め込むことになった。
日本は長期停滞に入り、活力のない国になってしまった。トランプ関税はアメリカに同様の結果をもたらすだろう。アメリカの富裕層は所得税がなくなり、さらなる富裕層になるだろうが、何かを生み出すということはないだろう。さらに投資をして、せいぜい不労所得の増加を図るぐらいのことになるのが落ちだ。
トランプ関税で、中国の製造業と戦いに勝てるだろうか。ここがトランプ関税政策の主目的である。中国はアメリカに売れない製品を他国に回すほかない。中国が不景気になるのは間違いない。しかし、アメリカ以外の国すべても影響を受けて、アメリカとの関係を見直さざる得なくなる。さすがの日本も
アメリカと距離を取り始める。
アメリカと距離を取り始める。
それは中国との関係を深めると言うことになる。中国の覇権主義が盛んに大本営から発せられているが、アメリカの一国主義のひどさよりもましに見え始めていないか。中国の方が、最近穏健主義に見えてきた。軍事大国を中国は目指すと言うが、アメリカの軍事大国は群を抜いている。
アメリカの貿易赤字問題とは、日本などは小さなもので、中国とのあまりに不均衡な貿易赤字が問題なのだ。アメリカの輸出品は農産物である。大豆、トウモロコシ、小麦、綿花、果実、鶏肉など。そして、原油、液化天然ガス、有機化学品、鉱物性燃料などの資源輸出。そして軍需産業。
アメリカの主要産業を見ると、トランプ関税の結果、アメリカの輸出産業が好転するとも思えない。結局の所、トランプ関税はアメリカ経済の縮小をもたらすだろう。世界の政治的バランスもアメリカ離れを起こし、新しいアジアを中心とした経済が生まれることになる。
コンピュータ-革命は、アジアの時代への転換を意味するのかもしれない。産業革命が欧米の時代を作ったように、次の時代はアジアの時代になる可能性が出てきている。日本はいつまでもアメリカの属国でいる場合ではなくなっているのだ。その結果は意外に早く来ることだろう。