欠ノ上田んぼん7月26日
ここは直播田んぼ柿の下田んぼのCである。一応私が担当なのだが、充分なことは当然できないし、皆さんがやってくれている。今回の小田原では拾い草や畔の草刈りぐらいはするつもりだ。
小田原に来た。早速、田んぼを見て歩いた。欠ノ上田んぼの出来が素晴らしい。一番興味があった直播田んぼも、素晴らしい成長だった。直播がここまで良くなるという事が分かって、希望が湧いてくる。やはり、自給農業は楽でたくさん収穫がなければ、と思う。
それにしても、欠ノ上田んぼ全体の出来が素晴らしい。特にマンゲツモチの状態が最高の出来ではないかと思った。この姿はかつてみたこともない良さだ。このまま行けば畝取り間違いなしの出来である。現在、穂ばらみ期である。120㎝はある株姿である。茎も太くて開帳型である。しかも、乱れがない。
欠ノ上田んぼは全体に草が良く押さえられている。雑草はわずかでもあれば生育に影響する。稲作に除草は必要なことだ。稲作でも叢生栽培と言われる方がいる。たぶん、そういう栽培体系もあるのだろうが、どういう事になっているのか想像すらできない。
たぶん、収量は6俵どまりだろう。そして生命力があるとか、力があるとか、病をいやすお米というようなことになるのだろう。自給農業で一番大切なことは、最小限の労働で、最大限の収量を得ることだと思う。化学肥料や農薬や化石燃料は出来る限り使わないでという条件だ。
コロガシと手取り除草である。草を出さないうちにやらなければならない。草が出てからとるのではおそい。これからのぼたん農園でも草に苦労するようになるだろう。どうやって草を出さないかが課題になる。欠ノ上田んぼを見習わなくてはならない。
直播で畝取りできれば初めての事になる。直播をしたⅭ田んぼは、田んぼにしてまだ2年目のことである。それでもずいぶんよくなっている。管理がとてもいいのだと思う。去年悪かったところがずいぶん改善されている。まだ一部に生育の悪いところがあるので、追肥をすることにした。
柿の下田んぼはハルミである。特Aをとった神奈川県の全農が作出したお米である。全農作出のお米が奨励米になった初めてのものである。キヌヒカリとコシヒカリを交配した品種。畝取りは簡単ではないお米だと思う。完全に柿の下田んぼの栽培に適合した感じである。
有機農業に向いたお米の一つだと思う。サトジマンも有機農業向きのお米だと思う。つまり、有機農業で畝取りできる品種である。そして、充分においしいお米だとおもう。味は主観なので、なんともいえないとおもうが、欠ノ上田んぼのお米はいつも美味しいと思って食べている。
今年は梅雨明けが早かったので、初期生育がとても良かった。その意味では肥料を消耗している感じはした。しかし、これ以上追肥すれば、倒伏するだろう所まで来ている。ここは欲張らずに、この後土壌を固めてゆくことを考えるべきだろう。
倒してしまうと、作業も大変になるし、収量も無駄にすることになる。それくらいなら、少し後半終了が下がるかもしれないが、もう穂肥は入れないでこのまま土壌と水とイネの力にかけた方がいい。間断灌水である。土壌に酸素を送り込むつもりで、水を入れては落すことを繰り返す。
ただし、これからイネが花を咲かせる時期なので、きつく土壌を乾かすのは厳禁である。湿り気のある、水が無くなったと思ったタイミングで水を戻すことがコツだ。このやり方をすると、根が水を求めて深く土壌に入り込む。水を入れ続けると、どうしても上根だけが広がることになる。
水がこなければ土壌の深いところに水を求めて入ってゆく。まあ地面が割れれば、そこから酸素が水とともに供給されることになる。根の環境が活性化されて、肥料分がイネが吸収しやすい形になるようだ。この辺はあくまで観察で感じているだけで科学的な検証をしたわけではない。
昨年から、苗にヒエが混ざる現象が目立つようになった。その原因が分かった。畔にヒエが生えるようになったのだ。その種が落ちて、田んぼに広がるようだ。雑草はともかく実らせてはならない。種がこぼれれば、手に負えない。
お米は最高の出来で作られたものが美味しい。しかも、化学肥料ではなく、土と水の力で作るお米が美味しい。欠ノ上田んぼの場合、20枚の田んぼを連ねて作っている。上の田んぼの水が徐々に下の田んぼに流れてゆく。最後の田んぼでは水は外には出さない。
田んぼで水を作りながら、次の田んぼ次の田んぼへと水を受け渡す。最後の田んぼ以外は流し水管理である。田んぼの水は動いていることが重要である。最後の田んぼでも動かしているという事は必要なのだが、もったいないことなので、最後の田んぼでは水は浸透できる程度に上から流す。
この水管理は20枚もあれば、極めて微妙な作業になる。私以外にはできないと思っていたのだが、なんと今の担当の東さんは私よりも完ぺきにこなしている。初めての年でこれほどの管理ができたという事は特別な才能があるのだろう。やはり絵を描く人なので、それだけの観察眼があるという事かもしれない。
この作り方だと下の田んぼに行くほど出来が良くなる。水温のこともあるが、それよりも各田んぼで水が豊かなものになり、下の田んぼに入る。これを繰り返して、行くので下に行けば行くほどよくなる。田んぼの中で水は肥料分を増やしている。
しかも、下の田んぼに行けば行くほど、汚染物質も少なくなってゆく。川から水を取り入れた時に、いくらかの汚染物質があるとしても、徐々に減じてゆき、最後の田んぼに入るころには、最も安全な良い水になっているはずだ。そして入れた水はすべて土壌に浸透させ地下水として、環境に戻してゆく。
欠ノ上田んぼを復田して本当に良かった。1haぐらいの田んぼを作ったのだが、そのすべての田んぼが畝取りできる田んぼによみがえった。20家族以上がここでお米を自給できているのだ。農の会にはこうした田んぼグループが他にも10くらいある。他はもう少し小さい規模である。かかわり方は手伝い程度から、どっぷりはまったい人もいて、100家族ぐらいは自給の田んぼ活動をしていると考えていいのだろう。