平和主義をどうすれば守れるか
オースティン米国防長官は台湾に対する中国の脅威の高まりに合わせて、台湾軍への武器支援や訓練を拡大していく意向を表明した。
ロシアが信じがたいウクライナへの軍事侵攻を行って4ヶ月になろうとしている。世界の希望である日本の平和主義は終わろうかとしている。日本では先制攻撃を行える武力を持つことが当然必要なことかのように議論されている。軍事費も倍増することが既定路線のように言われ、実際に動き出している。
世界の軍事情勢は大きく変わろうとしている。ロシアの暴挙もあるが、中国はアメリカと匹敵するほどの経済力のある国に成りつつある。ロシアの侵略戦争は中国に一番有利に働く。その次がアメリカの軍事産業である。米中の覇権争いが背景にある。
中国がどうでるかが今後の世界を変えることになるだろう。習近平体制の独裁とそれに対する内部での揺れなどが、盛んに報道されている。それが不安を煽ることになっている。それらの報道の結果が日本の軍事費倍増を容認する世論の形成に後押しをしている。
もう大政翼賛報道の時代になっているとみた方が良い。報道には時代を武力主義の方角に進めている。その自覚が無い。強制されるのではなく、自ら大手報道は舵を切っている。戦争へ進むのはこういうことなのかと目の当たりにしている。
戦時体制というものは誰かの命令と言うより、庶民が提灯行列などしながら進んで行くものだと分かる。中国が攻めてくる前に、対中国の軍事同盟を作ることになる。中国の攻撃力を破壊すべきだというようなことが、当たり前のように言われる日は近いのだろう。軍事には不安の増幅が起因する。
中国の軍事大国化を増長させているのは、アメリカの対中国政策にある。アメリカは世界一を譲りたくない。それがトランプ主義だ。アメリカの競争力を中国に奪われるおそれを考えている。中国には経済で負ける可能性が出てきている。
日本では維新の会である。現実主義のように見える。現実に流される主義。現実を換えなければ平和はない。平和主義は極めて難しい物だ。現実とはかけ離れた理想主義だ。しかし、その理想を掲げて戦わない限り、平和など守れない。武力は使わないというガンジーのような勇気が必要である。
自由や民主主義による資本主義経済よりも、独裁の国家資本主義の方が競争力があるのかもしれないという不安である。だから、世界中が中国の弱点を例えば少数民族弾圧を繰返し主張する。もちろん大問題なのだが、それならアメリカの頻発する若者の銃乱射を世界中が批判したとして、どうか成るのだろうか。
銃規制すら出来ないアメリカが一体弱者の自由を重んじていると言えるのだろうか。中国と同じように国内問題は山積みである。事の大小はあるとしても世界中に存在する問題だ。だから内政問題には互いに口を出さないという主張も、ある意味正しいことである。
日本はアメリカの尻馬に乗って中国批判をしている。この姿は実にまずい。日本はアメリカのような大国ではない。それでもれっきとした独立国家である。まず日本の展望をもって、その上で、中国やアメリカとの関係を考える必要がある。
中国に問題が無いというのではない。大いに問題はある。しかし、中国を刺激することは得策ではないと言うことだ。政治という物はそんな一辺倒になれば、過去の戦争時代の再現になる。もっとしぶとく、巧みになる必要がある。中国との連絡体制はできるだけ太く維持する。
果たして戦争を回避する方法は、仮想敵国に対抗する先制攻撃武力以外にないのだろうか。日本国憲法にある国際紛争は平和的手段で解決するという事はもう無理という事なのだろうか。ウクライナへのロシアの軍事侵攻という、常識的には考えられなかったことが起きた以上、ここで立ち止まり考えなければなない。
アメリカはウクライナへの軍事物資の支援を続けている。ロシアは経済封鎖の影響は少ないと言われながらも、じわじわと国力を衰退させている。戦争が長引けば長引くほど、いくら資源大国であっても中規模国家であるロシアはしだいに弱まって行く。ウクライナの一定部分を占領したとしても、その戦闘状態での維持には莫大な費用が必要になる。
それがアメリカとEUおよび英国の狙いなのだろう。しかも、ロシアの暴挙に対して、漁夫の利を得る中国は長期的に見れば、経済的な優位を確立するにちがいない。あるいは遠くない日に、中国の台湾軍事侵攻も可能性はある。
中国の0コロナ政策が批判されているが、中国政府にとって、コロナ対策も政治なのだ。国民にたいしての強権を見せしめとしている。コロナという感染症問題で、国民の引き締めを計っている。上海の都市封鎖は政府の力を国民に見せている。
やるときはやるんだという姿勢が、台湾軍事侵攻にも繋がっている。この時に日本はどうなるかである。沖縄の基地、石垣島の自衛隊基地はどうなるのか。アメリカは軍事的に動くと言うことをバイデンがいくらか口にした。それを口にしなければ、日本やアジアのアメリカ支持が揺らぎかねないと感じているからだ。
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台湾侵攻は想像もしたくないことだが、その前に日本がやるべき事がある。中国にそう言わざる得ないような状況を作らないことだ。中国はアメリカに脅かされれば、強気な反応をせざる得ない。その時日本が尻馬に乗っていたのでは、自らを窮地に追い込むことになる。
中国を刺激するようなことをアメリカに言わせないことだ。中国が悪いとか、アメリカが悪いとか言うようなことは外交には関係がない。平和外交はどうすれば戦争が起きないかを模索する物だ。それはもう架空の課題ではない。今一番必要なことは中国を刺激せず、軍事侵攻など必要ないという状況を作ることだ。
台湾併合を口にする中国政府は、それを口にしなければならない国内事情がある。台湾問題は国内問題だという、当然の立ち位置がある。それを覆すことは誰にも出来ない。もし、アメリカと共々、台湾の独立を日本も進めるのであれば、それこそ戦争の覚悟をしなければならない。
私は台湾が好きである。中国になって欲しくない。そう考えているが、そのために戦争に巻き込まれることはさらに困る。台湾と中国が話し合える状況を日本は模索すべきだ。当然中国は建前ではそんな姿勢は見せられないだろう。しずかに、慎重に平和外交を進めるほかない。
少なくとも日本はアメリカに言わされないようにすべきだ。アベ氏のようにアメリカを忖度して、発言する右翼は日本の国益に反する。日本こそ台湾曖昧政策で行くべきだ。台湾が好きだからこそ、台湾が戦場にならないために、そう思う。
中国人は複雑で政治能力が高い、プーチンのような狂信的な政治ではない。すべてを見渡した上で、自分の利益になる道を採っている。台湾が独立したまま、中国の利益になる形を見付けなければならないのだろう。必ずその形はある。
読み返してもう一つのことを付け加える。反中国の軍事同盟を作ってはならないと言うことだ。それはNATOの拡大が、ロシアをウクライナ侵攻に駆り立てたことと同じだ。中国を追いつめれば、反発が高まる。これ以上敵が増える前に台湾侵攻を行おうと言うことになる。