中国は日本をどう見ているか。
日本の民間団体「言論NPO」と中国の「中国国際出版集団」が行った世論調査の結果が、NHKニュースに掲載されている。対象が2700人くらいと言うから、それほど精度の高いものでは無いと思われるが、ある程度お互いの見方が表われている気がする。
現在の日中関係について、「悪い」「どちらかといえば悪い」と答えた人の割合は、日本は54.1%、中国では22.6%でした。また、相手国にどのような印象を持っているか聞いたところ、「良くない」「どちらかといえば良くない」と回答した人は、89.7%に上ったのに対し、中国は52.9%にとどまりました。
日本人が中国に対して良い感情が無いことはアンケートの結果を見るまでもなく分かっている。その悪感情の大半は誤解に基づいていると考えている。例えば、中国は覇権主義的だと見られているが、日本人は中国の覇権主義を、かつての日本の大東亜共栄圏のような侵略思想と同類に見ているのだろう。これは違っている。
中国には民主主義が無く、国民は自由な精神で自分の生活を行うことの出来ない社会である。ウイグル弾圧のようなことが日常茶飯に行われている。北朝鮮と同類の国だと見ている人が多数なのだろうが、これも違っている。
アンケートから2014年アベ政権になってから、中国の印象はさらに悪くなっていることが分かる。その原因は中国を日本の仮想敵国にしたと言うことにあると考える。日本の防衛を琉球列島を中心に自衛隊を配備し、敵基地攻撃ミサイルを配備する方針に変わった。そのために尖閣諸島をあえて問題化するように進すめられているし、世論の誘導も行われている。
世論調査でも日本では中国の悪印象の原因は尖閣問題が第一に挙げられている。中国側での日本の悪印象の原因は侵略の歴史を認識せず、謝罪をしないと言うことになっている。これは両国ともに、政府の方針によって作り上げられた悪感情だと言うことが分かる。
中国で反日教育が何故必要なのかを考えなければならない。習近平政権の不安定さがある。香港に対して議員の資格剥奪まで行う背景には、国内への見せしめ効果があるのだろう。国の経済を国家資本主義として進めるためには、企業をどう国の言いなりにさせるかにある。いつか企業は国を超えるものだからだ。香港の経済体制は、不都合な真実なのだ。
日中関係の重要性について聞いたところ、「重要」「どちらかと言えば重要」と回答した人は日本では、去年と比べて8.5ポイント減少して64.2%となり、2005年の調査開始以来初めて7割を下回りました。中国では逆に、去年と比べて7.7ポイント増え、74.7%となっていて、両国の国民感情の隔たりがうかがえる結果となりました。
この結果が一番気がかりなところである。中国にとって日本の重要度がいくらかでも高まっているという所には希望がある。背景には米中関係の悪化があると思われる。アメリカと対立する中で、他の国との関係を改善させたいという気持ちが出てきているのではない。
一方で、中国が重要とは考えない人が増加しているという日本人の感じ方を見ると、日本人が客観情勢では無く、感情的に外交関係を捉えていることがよく分かる。尖閣問題などで脅かしに来る中国人は嫌いだから、外交関係もできるだけ疎遠にしたいと言うことになる。
世界情勢から見れば、日本にとって中国の存在の重要性は年々高まっている。お隣にある日本の10倍もある国が、世界一の経済成長を続けているのだ。そして、アメリカとの関係を悪くしている。中国を重要視しないと言うことがあるはずも無い。
本来であれば、平和外交が日本国憲法で決められたことなのだから、尖閣問題があるからこそ、中国との関係を重要と考えるようになら無ければならない。ところが政府も国民も平和外交など空念仏と考えているので、外交を絶って軍事力の強化以外にないと考えるようになる。
ところがその軍事力となると、すべてがアメリカ頼みである。アメリカの核の傘以外には隠れ蓑が無い。そして、そのアメリカが中国との関係を悪化させている。日本は依存するアメリカの軍事力だけが頼りにするために、アメリカが中国と対立すると言うことは必然的に中国と対立させられてしまう。外交は軍事力などと関係なく、友好関係を模索しなければならない。
今こそ平和外交が重要になるのではないだろうか。中国とアメリカの間に入る日本という立場を外交手段として使う。韓国文政権は北朝鮮とアメリカの間に入り、外交的平和を進めようと努力はした。結果的には成功はしなかったが、北朝鮮の危機的状況は一時よりは後退した。
日本は中国とも、アメリカとも経済関係が大きい。両国との健全な関係無くして成立しない関係とも言える。中国の経済成長は日本の為にもなることだ。アメリカとの同盟関係も存、中国を仮想敵国に想定する政府の間違った構想が、中国との関係を悪くしてきた。アメリカから距離を取ることが、日中関係の改善には唯一の道だろう。
現状では軍事力強化以外に国の安全保障を考えることの出来ない政府がある。これは過去の間違った考え方である。この間違った考えで日本は戦争をしてしまい敗戦をしたのだ。ところが、それにも懲りること無く、敵基地先制攻撃ミサイルの配備などの妄想を抱いている。
国の安全保障には自然災害もあれば、エネルギー政策もある。食料の安全保障。感染症を見ると、細菌攻撃など今や明日の暮らしに直結する安全保障である。サイバー攻撃は、国の経済に直結する深刻な安全保障問題である。もう軍事力だけを国の安全保障と考えていたのでは、国民の暮らしを守ることは出来なくなっている。
間違いなく戦争は経済から始まる。第二次世界大戦も経済封鎖から始まっている。強大になりすぎた軍事攻撃がますますためらわれる状況の中では、経済戦争、あるいはサイバー攻撃が現代の戦争になる。そして、対立国の企業活動の制限である。
米中対立も経済でせめぎ合っている。これから日本が関わる国の安全保障問題は、軍事力が出てくる前に、経済が出てくることは間違いが無い。経済的対立が深刻化したときに、様々な日本企業への圧力が行われることだろう。日本の輸出規制と韓国の不買運動などが一例である。
敵基地攻撃ミサイルでは無く、日本国の自立した経済状態と、経済の多極化の方が効果的であることは明らかである。食料が封鎖されれば、明日をも困るのが日本である。日本を動かそうと考えれば、必ず食糧を封鎖するだろう。日本が韓国に特殊な資材の輸出制限をしたようなものだ。
この食糧問題は、日本も自給率40%を切る国であるが、中国の将来の食糧危機も予測されている。アメリカは中国に経済的圧力をかけて、アメリカの食料を買わせている。アメリカ依存した食料を輸出禁止するのが次の攻撃になる。食料は世界的に見れば、不足の度合いは年々増している。世界の人口増加に、食料生産は追いつかなくなっている。
日本の安全保障は食糧自給であることは明らかである。ミサイルどころではないのだ。食糧不足はマスク不足どころではないことになる。政府の農業政策は国際競争力のある農業を作ることに躍起になっている。その一方で根幹となる主食である稲作農業が危うくなり始めている。
目先の米余りに目を奪われては成らない。米は備蓄して、飢餓国への食料援助に回せば良いのだ。稲作農家が採算の取れる価格を維持することも政府の役目である。米の自給さえ確保できれば、基本的なところでは日本人の暮らしを守ることは出来る。主食の生産をどうやって維持するかの構想を立てる必要がある。
そして、次なる経済封鎖はエネルギーであろう。どうやって自給エネルギーを確保するかである。再生可能エネルギーである。再生可能エネルギーの関連機器の開発は国の安全保障でもある。太陽光パネルを輸出する中国はエネルギー輸出国でもある。