地方消滅の現実

   



2015年4月から19年4月までの4年間で住民がゼロになって消滅した集落が全国で164あることが総務省の調査でわかった。消滅集落は調査対象市町村の集落の0.2%にすぎないが、将来に消滅する可能性がある集落は5%近い3622集落に上る。地方の人口減少・高齢化は急速に進んでおり、今後、集落の消滅が加速する可能性もある。住民の半数以上が65歳以上である集落の割合は前回の22.1%から32.2%へと10.1ポイント上昇した。この割合が地域別で最も高いのは四国の42.9%で、中国の41.0%が続いた。「10年以内に消滅」と予測される集落は条件不利地域全体で505(0.7%)、「いずれ消滅」は3117(4.1%)で、合わせて3622集落(4.7%)に上っている。ーーー日経新聞

 こうしたニュースを目にすることはめずらしくない。政府も地方再生と々口にはしているが、有効な手段があるわけでは無く、効果が出ない。各地の消滅自治体候補では必死の取り組みが行われている。それぞれに手作り的手法で成果を上げている。

 ところが全体で見れば、どうしても条件不利地域から集落が消えて行く。そこで、政府は消滅候補地域に人員を派遣して、再生の応援をしている。しかし、大きな流れを変えると言うことを、政府がやろうとしない。あるいはやれない。

 時々、地方消滅など嘘だと言う意見を見かける。マイクロプラステックは安全だ。地球温暖化など無い。国の借金などいくら増えても問題ない。悪意があるのか、非科学的なのかよく分からないが、間違いなくこのまま行けば悪い方向にしか進まない。

 地方消滅は人口の老齢化と減少が続く日本では、当然起こるべきことなのだ。人為的に歯止めを掛けようにも、限界がある。国は恐れずに地域の将来像を明確にしなければならない。消滅しても仕方がない地域。消滅させては成らない地域がある。

 日本の国土の将来像から、地域を色分けした上で、守るべき国土象を表明する。消滅しても仕方がない地域から、消滅させない地域への住民の移転については国が責任を持つ。消滅させない地域には生活基盤を整備する。地域の部落を消滅させた後、その地域の自然の回復をどうするかも明確にしなければならない。

 令和の国土計画だ。消滅の可能性の高い集落は南の方に多い。東北や北海道ではない。中国地方などであれば、どこでも人が住めて、至る所に集落が分散して存在してきたのだ。高い山が無く、雪が多くはない。どこまでも道がある。古くから人が住んでいたのだ。

 こうした古くから人が住んだ地域をどう有効に棲み分けるか。新しい移住者をどう受け入れて、どういう生活が成り立つのか、国は研究しなければならない。こう言うときにこそ、学術会議の力を借りるのだ。政治家だけではとうてい無理な仕事だ。

 地元政治関係者も我田引水になり、利権構造が影響する。日本という国土の未来像を考え、あくまで科学的に将来像を作り上げるべきだ。国の安全保障と組み合わせて健全で永続的な国土象を議論して行く。

 素人なりの考えを述べれば、地方の残すべき集落は農業で生活が可能な地域で無ければならない。専業農家と、少なくとも第1種兼業農家は成り立たなくては成らない。副収入が一定あるとしても、主たる収入が農業という農家画題1種兼業である。

 山の中で自給生活をした経験があるものとして、意見を述べるとすれば、その地域に暮らす人が、生計を立てられる基盤が100世帯程度はあるところが、残すべき集落である。

 政府は100世帯の農業が成り立つ形を提案しなければならない。何ヘクタールの稲作を行うのか。どんな果樹を行うのか。野菜であればどういう産地化をするのか。現状に即して計画を立てる。農業でなくとも良いのだが、たぶん農業を基盤として、そのほかの産業と組み合わせる以外にないのだと思う。

 その計画に対して、政府の農業補助がどのように必要なのかを明確にする。そこまでやらない限り、このまま地方はじり貧状態が続いて行くだけになる。アベ政権のようにかけ声だけで、実質成果が何も無い状態を続けるのは、生殺しの政策である。

 稲作を行うとすれば、稲作農家の成り立つ形を明確にする。条件不利地域の稲作と言うことになる。日本の国土保全のためにどうしても守らなければならない、稲作の範囲を明確にすると言うことだろう。稲作だけを見た経済性であれば、条件不利地域の稲作は継続できない。

 では日本の国土のため、又日本文化のために、人間の暮らしのために、残さなければならない水田は、どの地域のどの範囲であるのか。どういう形で水田を維持して行くべきなのかを明確にする。水田が地域にあることは、安全保障の一つと考えるべきことだ。

 国際競争力の無い稲作など入らないという、朝日新聞のような考えもあるだろう。日本の未来を考え、科学的に総合的に議論すべき内容である。ここを国民的議論にしなければならない。方角を定めてからでなければ、日本の国土の未来像は見えてこないだろう。

 もちろん政治は大きな方角は定める必要はある。政府が方針を立てない限り、さらに東京一極集中になる。都市に人口が集中すると言うことは、世界の必然なのだ。政府が何らかの施策を打たない限り必ず都市集中が起こる。どの時代も、世界中のどの地域も同じなのだ。

 

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