白保の宇田川さんのお宅で、金城弘美さんと仲田かおりさんの唄を聴く事ができた。

   


 和やかな唄の夕べであった。仲田かおりさんと金城弘美さんという、石垣を代表する唄者の唄を、その地元である白保で聞くことができた。

 絵を描きに行く帰り、自動車で石垣サンサンラジオを聞いている。思わぬ案内があった。白保海岸の清掃をして、その後お二人の唄を聴くことができるということである。なんとも素晴らしい話なので、早速出かけてみた。海岸の掃除も楽しみだし、唄を聴くことができるのも、余りある楽しみである。

 海岸は清掃はしなければと前から思っていたところだった。一人でやっても良かったのだが、みんなでやれるというのは又別の楽しみもある。絵を描かせていただいていている。掃除ぐらいしなければ罰が当たるというものである。

 何でこんな良い活動があるのかと思う。おききした訳でもないので、間違いはあるのかもしれないが、分かる範囲で忘れないうちに書いておきたい。違っていたら又訂正することにする。

 ちょうど一年前、宇田川さんという、浅草の方が白保に家を作った。これはたまたまお隣にいた方からの又聞きである。その落成記念に唄会を開いたらしい。おとなりに座られたかたはいかにも東京から越して見えた方だった。話がさらにそれるが、まずその方のことを書貸せて貰っておく。

 名前も知らないその方は会社を退職してからやることもないので、困り果てたのだそうだ。川崎のあざみ野当たりに住まわれていたということである。葉山の方に越せば、もう少し暇を持て余さないで暮らせるかと考えた。房総の方や茨城の方も探したという。私が小田原だと話すと、そうそう小田原にも行ってみた。と言うことだった。

 結局の所、納得できる場所が無く、最終的に石垣に引っ越すことにしたのだそうだ。5年前のことだ。唄を聴くのが楽しみで、あちこち唄を聴き歩いているらしい。三線も習いに通ったのだが、ダメだったそうだ。古典民謡の先生について行けなかったらしい。まるで私の5年先を行っている。

 来て一番つらいのは暑さだそうだ。暑い間は外にもでない。暑さとの戦いだと言われていた。なんとかこの暑さだけには耐え無ければならないと、苦しそうだった。
 私の場合、この点では暑い時間は絵を描きに出ている。日陰で風に吹かれていると、なんと石垣の夏は過ごしやすいのかとほっとしている。山の上の日陰で風に吹かれていれば、暑い夏も又いいものだ。夜は冷房を入れて寝るほか無い。

 そもそも夏の百姓仕事で暑さには耐久性がある。石垣の夏が暑いとは少しも思わないので、この点では引っ越し5年先輩とは違う感想である。トゥーラバーマ3連夜にも行ったそうだ。夕暮れコンサートはいつも行くそうだ。私とほとんど同じだったようだ。私が八重山民謡の蘊蓄を語ってしまったので、すっかり引かれてしまった。申し訳ないことをした。



 宇田川邸の広い庭のある家で、大勢の人が集まって唄を楽しく聴いて、盛り上がった。白い雲が名残惜しげに、屋根の上で唄を聴いている。島の雲はいつでもいい形をしている。

 そこで又聞きの話に戻るが、今回は2年目なので、ただ唄を聴いて飲むというのも何だから、海の清掃をまずやることにしようとなったのだそうだ。その後ご苦労さま会の楽しみということで唄会を楽しもうということらしい。その意気やよし。

 前回は地元の新幸人さん、金城弘美さん、仲田かおりさんに声がかかったらしい。今年は、新幸人さんが都合でこれなかった。皆さん宇田川さんは親しくされているようだ。そう思うと宇田川さんは一体何者なのかと思うが、私には宇田川さんというお名前すら、間違っているのかもしれないという範囲である。50前後の大人の風格のある方だ。一緒に掃除をしたときに地元の方では無いなと分かった。

 なんとも美しい、沖縄家屋である。広い庭には鍾乳洞がある。鍾乳洞と行っても、クースの保存のために、作ったものらしい。なんとも風流なことだ。巨大な石組みのある鍾乳洞である。そこで4年もののクースがお祝いに出た。残念ながら、車なので飲むことができなかった。みんなが美味しい、美味しいと飲んでいたので、うらやましい限りであった。



 美しい白保海岸である。日本一の珊瑚の群落がある。海岸は珊瑚の海岸である。まだ砂にはなっていない、珊瑚のかけらが広がっている。そこを清掃させて貰った。ほんの少しだけれど、役に立ったというだけで嬉しかった。

 やっぱり、石垣にもごみを入れるボランティア袋があるようだ。役所が提供してくれたらしい。私も、この袋を貰って置いて、時々海岸清掃をさせて貰えればと思う。何かしないと、石垣の風景様に申し訳が無い。自分の袋でもいいのだが、家のごみとして出すと、ゴミ袋が多くて持って行ってもらえないような気がするのだ。

 海岸にはマイクロプラスティクの基になるプラスティクごみが無数に落ちている。一時間ぐらいの間に、軽トラ一台では積みきれないほどのごみが溜まった。多分掃除をしてもきりの無いことなのだろうと思う。それでもやらない事には始まらない。
 許してくれるなら、ブラステックごみを海岸で燃やしてしまいたい。そうすれば、一人で100人分くらいの作業になる。環境活動でそんなことをするわけにも行かないとは思うが、正直なところ、燃やす以外に解決法は無い。

 プラスティクのごみ処理が旨く回らないのであれば、燃やすべきだ。燃やすとしてもいくらか人体に悪影響はあることだろう。それでも海にこの調子で広がることを思えば、燃やしてしまう方がまだましである。

 屋根の上にはオオコウモリが楽しげに行ったり来たりしていた。全く怖がる様子も無く。自由な楽しんでいるような飛び方であった。コウモリは羽音無く飛ぶというが、オオコウモリはバサバサ音を立てて飛んでいた。フルーツコウモリでエサがフルーツだから音を立てても関係ないのかもしれない。

 地元の唄者が、子供の頃からの知り合いの中で唄を唄うということは、又別の素晴らしさがあるのだと思う。仲田さんも、金城さんもいつも以上に素晴らしかった。存分にその人の唄を唄われていた。

 どこかゆったりとしているのだ。実力のあるお二人なので、力みが無いとさらに良さが出るのかもしれない。二人の個性が強く出た唄会だったとおもう。


 宇田川さんの家は、沖縄の古民家風のものだ。幅5軒の赤瓦の家。広い庭に向かって、その縁側から張り出して舞台があつらえてある。ひんぷんの前がみんなの席である。

 テーブルが5つ並べてあり、その両側に並んで座れるようになっていた。お菓子や飲み物を用意してくれてある。何という接待であろうか。唄を隅の方で聴かせていただければ充分だったのだが、ずいぶん贅沢な時間を過ごさせて貰った。

 これからは恒例にできればと言われていたので、来年も期待をしてしまう。今度は一日ごみ拾いをさせて貰いたいと思う。何か手土産くらい持たなければ申し訳が無いだろう。

 - 石垣島