「小さな田んぼのイネ作り」 田植えで注意すること ⑦

   

6月1日、2日と田植えである。良い田植えをするためには事前準備が重要である。先ずは体調を整えることだ。この大切な日体調が悪くてというのでは、どうにもならない。それは、お昼のお弁当だって同じくらい大切だ。昔はごちそう係が早朝から起きて準備をした。田植えは一年の一番の記念行事のようなものである。ゆったりと味わってやらなければ良い田植えは出来ない。できるだけたくさんの人に楽しんでもらわなければならない。昨日は上野さんと杉山さんが田んぼの畑の花壇の整備をしていた。この心意気である。25人来るとして、25人の人が陽だまりガーデンに座れるように、テーブルとイスも並べた。
昨日午後代掻きをして、すぐ水を抜いた苗床田んぼ。一晩では水が抜けきらない。田植え日は明るくなったら、すぐに田んぼの調整をしておかないとならない。
田植えには田んぼに線が引かれていなくてはならない。15番田んぼと14番田んぼと1番田んぼにはすでに線を引いた。みんなが集まりやるぞという時に、線を引き終わるのでは、気分がそがれてします。紐を張って行うというところが良くあるが、このやり方にすると一番遅い人に併せるほかなくなる。しかも両側に紐を操作する人が必要になる。数人でやるとすれば、田んぼに線を引くほかない。大勢の場合でも、自分の速度で田植えをするには線がある方が良い。線引き道具は本に出ているので確認してもらいたい。線は30㎝角の正方形のマス目のように引く。大きな櫛状の線引きを作る。線引きは技術が必要だが、遠くに目標を置いて、一気に引く。理想を言えば、脚で線を踏まないで引くこと。この交点に稲を植えてゆく。その結果、植えた稲の本数を調べれば、田んぼの面積が正確に出ることになる。1本のイネが占める面積が、30×30㎝で0,9㎡という事になるから、3333本で3畝という事になる。正確に線が引いてあれば、田植えが終われば、数えてみることだ。1株のイネで54グラムのお米が取れれば、畝取りの稲作という事になる。1つの株に22本の穂があれば畝取りである。一つの穂に120粒が実れば畝取りである。1粒の玄米の重さが0.02グラム以上あれば、畝取りである。
すでに、1番、14番、15番は線が引いてある。今日は2番、12番、9番、7番、8番、10番と田植えを進める。植えてすぐ水を入れられる順番を考えておかなければならない。
何故田植えの時から、こうした目標を明確にするかと言えば、最高に元気な株からとれるお米が、最高の品質のお米になるだからだ。生命力のあるお米というような、曖昧な目標がある。力のあるお米とか、美味しいお米とかいうのも同様に曖昧である。有機農業で栽培して、万作にしてこそ良いお米になる。勢いのないイネに実るお米の種子では、次の世代を最高のイネにする力はない。次世代に命を繋ぐのが、種子の役割である。自然の摂理に従う、有機農業による種子は生命力が強いから、何十年も死んでしまうことなく生きている。江戸時代の塗り壁の中から出てきたイネの種子を播種して発芽したくらいだ。有機農業で、最高の活力を示した稲の種子こそ、本当の生命力の強いイネになる。6俵ぐらいしか取れない、稲作の種子と10俵とれる稲の種子とで、較べてみればわかるはずだ。だから、良いお米を作ろうと思えば、畝取りを目標にしなければならない。自然の摂理に従う元気な活力のある稲が、畝取りにならない訳がない。畝取りにならないのであれば、生育を阻害する要因がどこかにある。そこに合理的理由があれば、それはそれでよいが、探求心不足であれば自給の稲作とは言えない。
田植えは苗床に稲の苗があった時と同じように植えるのが、一番である。苗取りの時に、どのように稲が生えているかを観察して、それと同じような状態に植えるのが理想である。深すぎず、浅すぎず。深いと分げつはしにくくなる。浅いと浮き苗が増える。よくできた稲は20センチの根がある。この長い根がイネが地中深く入り、浮き上がりを止める。そして、株元はちょうど地面と同じになり、次に分げつしてくる株の邪魔をしない。これは難しい目標であるが、極力そのつもりで植えてゆく。初めての人はどちらかと言えば、深くなる。深くしないと、しっかりと植えられないからだ。線を引かれた地面にわずかに水がきている状態が植えやす。土壌に粘りがあれば、根に指を添えて地面に差し込んみ抜いた時には土壌が株元に戻り、根をしっかりと支えてくれれば一番良い状態である。もし土が戻らないようなら、指で両側から摘まんで根を地中にしっかりと止めてやる。間違っても深くならないようにする。良くある悪い植え方は、棒で穴を空け、そこに苗の根を落とし込んでいた。水を入れたとたんにすべてが浮いた。何故そんなことをしたかと言えば、土に触りたくないからだそうだ。子供は田植えはさせてもらえなかった。それぐらい難しいし、後々影響する作業だからだ。
田植えは水口側から植え始めて、植え終わればすぐ水が来るようにする。そうすれば、水が濁らず線が見えやすい。田植えは終わり次第すぐに水を入れる。いつまでも水を入れなければ、苗は弱ってしまう。しかも植えたとたんに水が来るので、株痛みがない。田んぼ全体に水が充分に廻れば、そばかすを撒くことが出来る。ここから先は次回。

 - 「ちいさな田んぼのイネづくり」