有機稲作の葉色の変化の考察
出穂期の苗床田んぼの様子。8月7日朝
有機農業の田んぼを探すには、周囲より葉の色が濃い所を探せば一目瞭然である。田植えの直後から一貫して葉色は濃い。その理由は窒素が多いいからだと片づけられてしまう事が多い。しかし、長年様々な農法で有機農業をやってきた結果、どうも窒素投入量ではないという事が分かった。欠ノ上田んぼの農法は窒素成分に限って言えば、投入窒素量はむしろ少ない。極端に言えば、無肥料の田んぼでも色は濃い。ただし、無肥料と言っても冬の間緑肥を作り漉き込んではいる。緑肥が出来なければ、ソバカスを反当り15袋ほど撒いている。この緑肥が田んぼで分解され窒素成分になり、色を濃くするという事が考えれられる。緑肥というものが田んぼの中でどのような変化をしているのか考えてみなければならない。この田んぼは苗床を作った田んぼである。わずかに黄色い線が4本残っている。ここが苗床ではなく管理通路だった部分である。この通路は年によって、3本になったり、4本になったりしている。そして穂揃い期を過ぎた状態でも、通路であった場所は見てわかる色の違いが残っている。苗床に肥料を入れているからという事ではない。ソバカスは入れているが、苗床部分だけに入れるという事はしていない。
この田んぼは今年は菜の花を緑肥に使っている。だから窒素固定と言っても、マメ科植物の根粒菌とは関係がない。通路と苗代部分の耕作の違いは、苗床部分は3度代かきを徹底して行っている。通路部分は田植え前日に1回代かきをしている。この代掻きの違いが葉色に現れていると考えられる。早い徹底した代掻きによって、緑肥は腐食を速め、稲が利用しやすい形になるのではないだろうか。又田植え前日に行う、一回代掻きでは十分に緑肥の腐食が進まず、イネが利用しにくい状態になると思われる。この田んぼは苗代後なので、葉色の違いが明瞭に出るが、有機の田んぼでは色ムラが出ることが多々ある。それは肥料分の多少より、代掻きの違いによると考えた方が良いようだ。
苗代を作るために、他の田んぼ部分より1か月以上早くアラオコシ代掻きを丁寧に行っている。これは播種日の朝の苗代の状態である。ここに、バラ蒔きで種をまく。あるいはセルトレーや、苗箱を置いている。一番左と、2番目の苗代が欠ノ上田んぼの苗代である。この土の状態に浸種して鳩胸状態まで発芽した種籾を、ばらまいてゆく。ばらまいた上から、ぼかし肥料を入れている。そしてその上から燻炭を撒く。その上から穴あきビニールを被せる。発芽しても、水やり程度で水は辛目に管理する。他の3本の苗代はそのままでセルトレーや苗箱などを置いて、利用している。
発芽してきたところ。まだしばらくは水やり程度である。
稲の成長に合わせて、徐々に水を深めてゆく。水を早朝一度入れても、すぐに止めて、乾かす。苗代の水やりはとても細やかにやらなくてはならない。観察のための通路部分を楽に歩けるように、代掻きをしない。
8月29日朝5時30分曇り。穂揃いが終わっているが、いまだ苗床通路の後が残っている。
今年は、猛暑の為に早く土壌の肥料成分が消化されたと思われる。有機農業でやっている田んぼを見て歩いたが、色が周辺の田んぼと変わらないところも多かった。そこで、穂肥は特に必要な年と考えた。1反に窒素成分で2キロ検討でソバカスを13葉期、田植えから8週目に与えた。その結果穂が出てから、15枚目にあたる、最後の葉の止葉の色がそれまでの葉より一段濃くなった。穂が黄色く色好き始めてからも、葉の色が濃くなるという事は初めて経験した。ここでも通路部分と苗床部分では緑の戻りが違った。根が活性化していない通路部分では緑の戻りはほとんどなかった。有機農業では穂揃いの時期になっても、根の活動が活発なのだと思われる。稲刈りの時でも、止葉は緑が残っている。穂に付いているすべての籾が黄色く変わった後でも、止葉は緑を維持している。このように稲刈りのころまで根が活性化している状態を作り出すことが、有機農業の特徴ではないだろうか。