小田原ヒルトンホテル
根府川にあるヒルトンホテルの中に初めて入った。隣り合わせに知り合いの自然農法のみかん農家の方が住んでいるので、そばまでは良く行った。ヒルトンホテルは立派な建物だった。これがみかんの輸入自由化によってできたのかと思うと、腹立たしい感慨が湧いた。いきさつは記憶しておくべきものだ。みかんの圃場が巡り巡ってアメリカのヒルトンホテルになった。オレンジ輸入自由化に始まり、みかんの放棄農地が結局は増えた。TPPの今後もめぐりめぐって、農地が放棄され、外国資本のおかしなものが出来て終わることになると考えておいた方が良い。日本には食糧自給に対して、確固たる思想がない。政府も建前としては食糧自給は主張する。食糧自給を大切だと主張しなかった政権はないと思う。アベ政権は農業の国際競争力を主張している。TPPによって主要5品目は守られ、影響は少ないとしている。全ては空想のような時間稼ぎ程度のことである。食糧自給出来ない国は、亡びると考えた方が良い。
前段がつい長くなった。そんな訳で、ヒルトンの日帰り温泉に行くというのは少しためらいがあった。それでも一度は行ってみたいという誘惑には勝てず、出かけてみた。小田原市民は1日1000円という事だ。立派なお風呂だから安いだろう。1か月だと1万円で会員になれるという事だ。舟原の住民のYさんにお会いした。週2,3度は別荘のつもりで来ているそうだ。プールやスポーツジムもあり、本でも読んでのんびりするには最高だと言われていた。家から30分かかるが、何処のお風呂もそれくらいはかかるから遠いいというほどではない。1300メートルの地下まで温泉を掘ったもので、塩化ナトリウム温泉という事だが。それほど温まる感じはしなかった。サウナは良く汗の出る清潔なものだ。90度である。テレビはない。音楽は調整が悪かった。水風呂が20度くらいで生ぬるくて問題がある。全体に御影石作りでなかなか豪華である。すいている。10人入ればいっぱいのサウナであるが、平日は空いていて一人の時間も長かった。
お風呂からの眺めが良いという触れ込みであるが、夕方の時間にはほとんど海は見えなかった。3階という角度が良くないのか、天候のせいなのかはわからなかった。会員になるとプールやそのほかのスポーツジムも使えるというから、かなり割安感がある。これは個人的な違和感なのだろうが、庶民的な銭湯風ではない空気が私には合わない。お風呂はリラックスする場だから、混んでいても、少々汚れていても気楽が一番である。ホテルが気取った様子なため、着替えてでなければ行けない風呂屋では困る訳だ。畑で汚れて、汚れたまま出かけて、風呂やさっぱりして着替えて帰ってくるというのでなければ。後で分かったのだが、お風呂のスペースには別の入り口が準備されている。正面玄関のボーイさんのいるホテルスペースは気取っているが、脇の入り口から入ればそれほどの抵抗はなかったかもしれない。
風呂で考えたことをもう一度。TPPが日本の産業全体にとって必要だという考えはあるだろう。それなら、影響を受ける農業をどうするか、現実的なデーターの前で検討すべきだ。食糧自給をどうするかを正面から取り上げるべきだ。そして、みかんを止めたことが、正しい選択なのかどうかを議論すべきだ。小田原市が買い戻し、通年誘致型農業施設のセンターハウスにする機会はあった。このことも小田原市には要求を出したが、全く取り上げてもらえなかった。農業に関しては見て見ぬふりで終わっている。根府川周辺の景観は素晴らしいものがある。景観が素晴らしいから、ホテルが出来たのだろう。周年摘み取りの果樹園にすれば、都市部から人を呼べるはずだ。お茶園などもいい。お茶を摘んでその場でお茶を飲む。生の油絞り園もいい。わずかな油でも新鮮なものは、売られている油とは別物になる。小田原はそうした消費者誘致型農業の最適な場所になるはずだ。まあ、お風呂は好きだから、あれはあれでいいのだが、あんなに空いていて大丈夫なのだろうか。