石垣島の農地を見ていて気になっているのは、大型機械での深い耕し方だ。サトウキビや、パイナップルや、たばこの収穫が終わると、大型機械でサブソイラーというのであろうか、60センチくらいの天地ガエシをしているのを見る。耕してカリカリに乾燥するまでおいておき、もう一度トラックターで耕して次の作物の植え付けを行う。このやり方だと、雑草が減らせるのだろう。雑草の勢いもすごいから、除草剤だけでは抑えきれないということがあるのかもしれない。除草剤を使いたくないという考えもあるのかもしれない。しかしこの耕作法を続けてゆくと、土壌の砂漠化が進むことになる。大型機械によって繰り返される土壌の耕運によって、土壌の腐食質の減少が起きている可能性がある。ただでさえ石垣島の日照は強い、できる限り太陽光に土壌を直接さらされないようにした方がよい。石垣の農業は1軒当たりの耕地面積が4ヘクタール平均。どうしても大型機械での農業になる。重い機械の重量で畑の下層に固い層ができているのではなかろうか。この層を崩すために深い耕し方が定着しているのかもしれない。
裸地をさらしている期間の長い農業のために、赤土の海への流出が起きている。石垣では強い雨がよく降る。そのたびに川は黄土色に変色し、サンゴ礁の海も黄土色に染まる。宮良川の河口付近もすでに黄土・赤土がたまり、砂浜というよりも、黄土層に覆われた浜辺となっている。名蔵湾も同様な黄土層の流出が起きている。潮干狩りに行ってよく分かった。今名蔵ではゴルフ場が計画されている。山が切り開かれて芝生になるのだろう。このことで、名蔵湾がどういう状態になるか心配なところだ。名蔵湾の遠浅の海辺も砂浜というよりも黄土でおおわれて来ている。農業のやり方が大きく影響しているとみなければならない。田んぼがサトウキビに代わるということで、起きている現象ともいえる。加えて、森だった場所が、草地化されている場所も多くある。あるいはサトウキビ畑になったところもある。特に急な斜面の畑が深耕されると黄土の流出が起きる。耕さないという意味ではなく、浅く耕す農法の確立と、耕す時期と期間の選択は重要ではないだろうか。
牛の放牧は増えていると思う。絵を描いて歩いて居ての印象の感想である。島の人に聞いてみると、増えているようなことはないといわるので、どうもわからないところがあるが。5か所くらいは放牧牛の牧場をよく見ている。広い放牧地ではないが、少数の牛を放牧しているところもある。一定の期間だけ放牧しているところもあるのかもしれない。いつ通ってもにおいがすごいというところもある。放牧だけでは高値の肉にはならないだろうから、季節的なものかもしれない。営業としては牛が高値で売れるので、頭数を無理をしても増やすということもあるのかもしれない。それでも牧草地は少しでも広げたい農家が多い可能性は高い。そうなると、草地の拡大が土壌の劣化になる可能性もある。対策としてはたい肥化工場の堆肥を上手く利用することではないだろうか。あるいは、草を耕すのではなく、敷き藁にする手法である。土壌を保全する農法を考える必要がある気がする。それは畑作全般にも言えることで、たい肥を無料で配るくらいのことをしてもいいのでないかと思う。それが石垣の環境保全につながるはずだ。
永続性のある農業を考えないと、島という環境の維持は自然の循環が難しいのではないだろうか。なんと言っても石垣の魅力は自然環境である。上手く農業と共存してゆく必要があるのだろう。島の農業が盛んになることは素晴らしいと思うが、特に稲作を大切にすることだ。田んぼができる場所はできる限り田んぼに戻した方がいい。水田農業ほど環境保全になるものはない。黄土が山から流れ出ても、下流域に田んぼがあれば、田んぼが遊水池になり、海への黄土の流出を防ぐことができる。稲作を増やすためには、石垣のお米の販売が盛んにならなければならない。そのためには美味しいお米を生産し、石垣ブランド米を開発することも必要なのだろう。泡盛のインディカ種は有望だと思う。水田について言えば、もう少し水位を上げるべきだ。どこの田んぼもヒエが多すぎる。水位を8センチ以上にすれば、ヒエは発芽できない。そして、緑肥を必ず作る。もし緑肥を作らないのであれば、冬期湛水にする。これも、環境保全には大きな価値がある。