シャープが台湾企業に

   

シャープが業績不振の末に、台湾の世界企業ホンハイに買収されることになった。そういうことはこれからは普通に起きるのだろう。4年前に一度ホンハイに吸収されることが合意されたのにもかかわらず、撤回されたことがあった。あの時ずいぶん悪く言っていた。そして韓国のサムスンから支援を受けた。その後もサムスンが吸収するという話もあった。その都度日本の技術が海外流出するというような反対論があった。企業と国家というものの関係をどう考えていけばいいのかと、この吸収で思うことだ。産業革新機構というものが、シャープを支援するという話が出てきた。その背景にある考えは、日本の企業を海外企業に買収されることで、日本の先端技術が、中国に流れることを抑えようという考えがあるようだった。しかしそれは取りやめになった。

産業革新機構は官民共同出資により設立された投資ファンド。その目的は関連性の高い技術・事業の集約や取締役の派遣など、経営への参加・助言も行う。産業活力再生法に基づいて設立。という事であるが、その官民共同のシャープを維持すべきという力より、ホンハイのシャープの企業価値の見方が強かったという事なのだろう。日本政府はシャープの件では産業革新機構を後押ししないと表明している。そういうことはこれからもあるだろう。日本の企業とか、日本の技術力という見方がおかしいのであろう。企業とか経済は国境を越えている。中国をいくら敵視しようとしたところで、技術は国境を越えている。それは軍事技術においても少しも変わりはない。アメリカが日本に最先端の軍事機器を輸出するかどうかは揉める。日本の潜水艦技術がオーストラリアに流出するとも言われている。軍事的に優位という事が国家という枠組みのことであり、企業の優位というものは国家を超えているという現実。政府もそう考えているから、シャープの支援をしなかったのだろう。

経済は地球全体に動くものである。日本政府は日本出身の世界企業を後押しすることで、日本全体の景気を浮上させようとして、なかなか結果を出せないでいる。企業は日本一国の経済よりも、企業そのものの利益を追求する。時には国家に損害を与えても、企業が利益が上がることであれば動いてゆく。仮想敵国の有利に働く取引も行う。それが今回のシャープのホンハイの買収である。そのように政府が考えなかったかが少し不思議である。JALの支援は税金を使って行った。銀行の支援も政府がした。東電の支援も政府が行っている。シャープという電気製品の会社は支援する価値がないのか、支援する根拠が見いだせなかった。ホンハイはその技術にそれだけの価値を見たという事だろう。中国の軍事産業にその技術を売れるという判断もそこには加わっている。日本政府の判断が正しかったのか、間違っていたのかは、数年後に出てくることだろう。

世界経済はすでに曲がってしまった。日本企業が特出して有利に動けるというようなことは、まずないと考えなければならない。シャープに象徴的に見られるように、IT技術や、液晶技術において、世界市場に於いて遅れ始めている。本当の原因はわからないが、想像するに日本人の独自性の様なものが薄れてきている可能性はある。日本は何千年も独特の国として存在した。独特の自給的世界を作り上げ、細やかな感性を醸成した。それが工業製品の開発においても、他の国にはない心配りのある製品を生み出したのだろう。所が暮らしが変わり、日本人もそうした潜在的な資質が衰退した。他にないものという事では、物足りない国になり始めている。その為に新産業の創出が滞っているのだろう。日本人が日本人らしく生きる。その為には日本の水土に根差した、暮らし方を見直す必要がある。暮らしの日々をしっかりと見つめなおさない限り、日本の衰退は年々顕著になることだろう。

 - Peace Cafe