水彩絵の具のこと
水彩人でクサカベの絵の具工場の見学を行った。そのことは以前書いた。講師の技術者の言われていたことに、いろいろ疑問が出てきている。結論から言えば、クサカベの水彩絵の具の考え方がすべてではない、と今は思っている。コバルト系統の色の鮮やかさが好きで使ってきたのだが、これが本当のコバルト顔料が使われているのかどうかという疑問である。それくらいニュートンのコバルト系の色味が変わった。また、顔料の重さと大きさも変わった。以前より軽く、細かくなった。特に混色をするとその違いが明瞭に表れる。昔の名前で出ています。という形で、高い値段で売るために、名前を変えないだけではないか。コバルト顔料ではない気がしている。シュミンケではコバルトバイオレットはなくなったという話をその時に聞いた。シュミンケはこの点では正直なのだろう。良い色なので使っているが、但し混色は出来ない絵の具である。絵具の不安定さと、色味の良さが反比例するのだから厄介である。
水彩絵の具が塗装用の顔料の影響で大きく変わり始めている。クサカベの技術者はクサカベの絵の具はすべて、工業用の顔料を購入して作っているために、混色が可能なのだとと言われた。その工業用の顔料は世界中で作られていて、絵具に使われる料など1%に満たない量である。どこの材料というようなものでもなく、金属顔料という事だった。しかし、それはクサカベの絵の具に限ることで、クサカベの水彩絵の具が学童用から始まっていることによると思われる。口に入れても安全で、価格も安いという前提で作られている。その結果色味を犠牲にしているという事になる。どの程度犠牲にしているのかは、先入観は捨てて見直してみる必要はある。混色自由。耐光性が高いという事は、大いなる利点である。たぶんホルベインの絵の具でも同じことがいえるのだろう。舶来品に憧れはないが、使うのはレンブラント、ニュートン、シュミンケである。もうでたらめでごちゃごちゃである。しかも春日部先生から頂いた、年代物が山ほどあるので、製造年度で色味も性格も異なるという厄介さである。
水彩絵の具の良いものとは彩度が高いこと、透明性があること、耐光性に優れていること。その為に申し訳ないがクサカベの絵の具は使わない。しかし、シュミンケでもバーミリオンという色は発売されてはいるが、バーミリオン顔料は使われていない。厄介である。シュミンケやニュートンの絵の具の特徴は単一の顔料で絵具を作るものがほとんどだという事である。それは描画における絵の具の問題を簡潔にすることである。しかし、混色禁止の絵の具の方が存在する結果となっている。絵具は単独で使うという考え方で出来てているという事が言える。これは伝統的な考え方である。学生の頃勉強した考え方そのままである。クサカベの色調で絵が描けるのであれば、すべて混色に問題がないと言い切るクサカベの絵の具は優れている。しかし、クサカベの絵の具では鮮やかさが不足する。あるいは透明性が物足りないとなると、どうしてもニュートンとなる。ところがニュートンの色彩も10年ほどの間に、濁りを増した。そこで、仕方がないので、色によってはシュミンケやレンブラントを使うことになった。しかし、紫系の色が混色ができないという問題は自分の描写方法から言って負担が大きい。
結局絵の具についてはまたよく分からないところに戻った訳だ。その為に、色ごとに好きな会社ものを選ぶ以外にない状態。しかも、混色をしてしまうのだから、混色禁止の絵具がいくら良い色であっても加えることは出来ない。つまりクサカベ方式が描写するものとしてはいい。色が気に入らないところが悩みである。せめてクサカベやホルベインが単一顔料で絵具を作るようになってくれればと思う。絵具を作るときに混ぜてしまう方式が、絵具全体の彩度を落としている。加えて体質顔料の量を減らすべきだ。値段が高くなるかもしれないが、日本でも本物の絵の具が出来ることを願っている。