田んぼの干しと間断灌水

   

今年も田植え以来、深水管理できた。そのおかげもあって、ヒエは生えない。コナギは出ないわけではないが手に負えないほどではない。それはソバカスを撒いて転がしをしているということも効果をあげている。田んぼでは草の出ない土づくりが大切。コナギの出にくいとろとろの土になっている。表土が日を追って細かくなり、今は水の中で手が土に触れるとほこりが舞い上がるような感じである。微生物のふんが表面を覆っているような状態ではないか。腐食が溶け出してもいる。7月後半に入ると、状況に応じて、難しい水管理をしなければならない。頭を悩ますところである。自然農法では、干しは基本的に行わない。そのことをいろいろ考えてきたのだが、ひとつ大きな要素が分げつの問題だと、思い至った。一般の農法では、田植えをする苗の数が多いい。だから1本の苗が、2次分げつまで進み、3つの株になれば人株が20分げつくらいになりすでに十分である。自然農法では、植える苗が1本2本である。当然、3次分げつか、4次分げつまで必要とする。最後まで穂数が不足しがちである。

自然農法で過繁茂で困るなどということはないのだから、無効分げつを止めるという発想の干しは必要としない。野生のイネのことを連想して考える。水位が高くなり、水が覆った河畔で稲は成長をしてきた。徐々に水が引くという合図で、稲は穂を形成するのではないだろうか。稲が十分に成長して、がっしり株になれば、幼穂の形成が始まる。この時期からただ水が満水ではない状態を作り始める。分げつが20本にもなっていれば、完全に水をひかせてから水を入れる。加減は難しい。天候なども見ながら、ともかく稲にだんだん水は来なくなるということを知らせてゆく。それは同時に稲の根元が固まってゆくことでもある。これも稲の実り方で必要度が違う。倒れるほど稲が実りそうもないなら、水はできるだけ切らずに合図を送る程度の水の引き方を続ける。それもだいたい、8月21日の出穂あたりに向けて逆算してゆく。分げつが足りないとか、十分がっしりしている場合は、間断の灌水をたまに水を切る程度にする。今年のように、日照不足で株が柔らかい場合は、水は落としにくい。

同時に、しっかりした株で、背丈もあまり伸びていない良い状態のイネであれば、水は切らないでもいい場合もある。深水と、ひたひた水を繰り返す程度で行く。深水とは8センチ以上の水である。このように、逆のことを同時に考えることになる。ひたひたとは、土にひび割れが起こらない程度である。この時期葉の厚さと幅が増してくるのだが、株を握って感触で硬さを記憶しておく。硬くなったら十分の生育をしたので、干しを強くしてゆくという感じだ。どうしても田んぼの中央部の株は、日照が不足しがちで柔らかいので、それも考えて握って覚える。葉の色の観察も大切である。葉は色を濃くしてくる。黄緑から深緑になってくる。自然農法独特の葉色の変化である。この葉色の濃くなる感じもシグナルである。葉が濃くなるには日照が必要である。光合成をする力を蓄えたのだ。これが慣行のイネと一番違うところである。葉色が増していつまでも成長を続けるのが、自然農法のイネの特徴なのだが、これを穂を作る方向へ転換するのが水管理になる。

稲にはいつまでも株の成長を続けようとする性質がある。これを終わりにするというより、同じ生育の途上で幼穂が形成される気がする。分げつをしながら、株の背丈をのばしながら、株の中に穂が延びている。成長期に穂も作られる印象である。だから、強い干しは良いことがない。水を浅くしても草が生えなくなったので、水を浅くしてゆくぐらいの感じではないか。7月後半のイネは一番生育量が大きい。今年の収穫量がここで決まるといってもいい時期である。分げつが20になっていないなら、干しはしない。そして分げつを増やしながら、幼穂の形成をしてゆく。そのためには葉の光合成と、根の活力である。大きな葉を出すことと、根が活性化していて、どんどん伸びるようにする。水管理は難しい。

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