安倍内閣の合憲主張の根拠

   

安倍内閣では、憲法学者の安保法制に対する憲法判断は、学者の現実離れであると断じている。私は、学問ほど尊いものはないと考えている。政治家ごときが、学者の発言を軽んずるとは身の程知らずも甚だしいことだと感ずる。憲法学者はそのときの都合で発言をしている訳ではない。様々な立場の学者がいるだろうし、様々な憲法解釈がある。学問を軽視するようでは、すでに人間として失格だと思う。それは、自分と意見の違う人間を、切り捨ててしまう思想が根底にあると言う事だ。憲法学者の意見が自分の考えと違うとすれば、先ず謙虚に聞く耳を持つべきだ。その上で、自分の考えを再検討して、それでも自分が正しいという結論至れば、その理由を述べる。それが政治の現実主義であろう。安倍政権のあげた、安保法制を合憲とする、3人の、全体から見れば一握りの学者がいる。その一人の日大の教授によると、国連憲章で集団安全保障が認められているからとして、憲法より国際法を上位法制として、合憲を説明した。

安倍氏は丁寧な説明をすると言いながら、一向に何を言っているのかわからなくなってきた。自衛隊ができたときには、大多数の学者が自衛隊を違憲だと主張したが、今は違うと言っている。私は素直に読めば自衛隊も違憲だと思う。しかし、警察が違憲でないように、あくまで警察予備隊の範囲である。国民に向けて、分かりやすい30分ぐらいの安倍氏のビデオレターを制作してほしい。学問であるから、全員同じ考えにになると言う事の方がおかしい。様々な異なる解釈があるのが学問である。学問を否定して、今度は最高裁判決を持ち出している。米軍基地の砂川判決である。カビが生えた60年前の最高裁判決を持ち出したのだ。(1)憲法は固有の自衛権を否定していない(2)国の存立を全うするために必要な自衛の措置をとることを憲法は禁じていない(3)だから日本を守る駐留米軍は違憲ではない(4)安保条約のような高度な政治性を持つ案件は裁判所の判断になじまない。というもの。

しかし、この判決は駐留する米軍に対する判決である。その為に最高裁判決に、アメリカの圧力があり、判決前には最高裁からアメリカに対して、判決文が示された事が分かっている。砂川判決では、確かに自衛権を認めた。国家に自衛権があるという解釈である。攻めてきた敵と武力を持って戦う権利である。しかし、それがホルムズ海峡まで出掛けて行って、機雷を除去する事まで認められる根拠にできるはずもない。自衛のための戦いというより、石油利権の戦いであろう。中国がミサイル攻撃を日本に向けて行う事が想定されるので、先制攻撃をする事が出来るかである。砂川判決では、いわば、先制攻撃的自衛権までは、認められていないのは明らかなことではないか。自民党は武器が当時より進化しているから、自衛のためには、他国の領土に向かって先制攻撃せざる得ないと主張している。しかし冷戦下、核戦争の危機は今よりも、世界情勢が緊迫していた。

加えてアメリカが攻撃されたときには、日本はアメリカのために、日本とは関係のない、国に攻撃が出来る。こう安倍氏は主張しているようだ。それなら、憲法を変えて、自衛のための先制攻撃が出来るものに変えるしかない。現憲法をいくら拡大解釈しても、無理なものは無理だ。実は、自民党も無理は承知でこの法案を提出しているのだろう。背に腹は代えられないと考えるからだ。それが橋下氏が言う現実路線なのだろう。さすがに憲法は簡単には変えられない。それなら、憲法解釈を相当無理をして広げてしまう。どうせ、最高裁など政府の主張に従って、正しい判断はできないとたかをくくっている。砂川判決と同じやり口だ。こうした、まともな正しさをゆがめてしまう、現実主義は日本国をだらしのない独善の国にするだろう。まだ間に合う。誇りある日本国として、ここは汚れた現実主義より未来につながる理想主義で行こうではないか。

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