日本の存立危機事態とは
皮肉なことだが、日本の存立危機事態とは、安倍政権の成立だと思う。国会は95日間延長された。ぜひとも有意義な議論を展開してもらいた。今までの国会での議論は有意義な議論が行われているとは、誰も思わないことだろう。議論をしているふりをしながら、問題の周辺で空転しているように見える。一番の原因は集団的自衛権というものが、憲法違反というのは、総理大臣ですら本音では考えているように見える。憲法を改定して、集団的自衛権の行使のできる法律を作りたいというのが、本筋であると従前より主張してきた。しかし、それはなかなか難しそうなので、まず当面の対策として、憲法解釈を変更して、集団的自衛権を行使できるということにする。その根拠は、憲法より上位に国連憲章というものがあり、世界の軍事的行為を規定するものとして、集団的自衛権が認められているということのようだ。日本国憲法の解釈を国連憲章に従って解釈すれば普通の国になるということの説明をするが、意味不明である。
そして、集団的自衛権が行使できるときは、3つの要件がある事態としている。。(1)日本と密接な関係にある他国が武力攻撃され、日本の存立が脅かされる明白な危険がある事態(存立危機事態)(2)我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がない(3)必要最小限度の実力行使——の新たな3要件ということのようだ。この新3要件がなぜ、集団的自衛権につながるかの説明に、ホルムズ海峡の機雷の除去が出てきた。国民を守るということは、石油が日本に来なくなる事態を、取り除くこともそのひとつだという説明である。つまり、国民の暮らしの経済を守るためには、軍事力を行使できるという意味になる。日本が経済封鎖された場合、経済封鎖した国を攻撃することも、日本国民の暮らしを守るということだと説明されている。この説明をよく考えてみれば、いつでも経済のためには戦争はできるということになりそうである。北朝鮮が日本を攻めてきたとしても、それは、経済封鎖をしている日本としては、北朝鮮の権利として、覚悟しなければならないということなのだろう。
これらの説明がことさらに分かりにくいのは、アメリカの意向を忖度して、この法律を作ろうとしているからである。アメリカに隷属することが日本政府の長年の習い性になっている。アメリカに評価される事が、自分の立場を守るということになる。アメリカに逆らった。鳩山由紀夫氏、田中角栄氏が総理大臣にまでなった人ながら、どのような末路をたどったのか思い出してみればよくわかる。もし、その昔にこの法律ができていた場合、朝鮮戦争のとき参加することになったのだろうかと思う。アメリカの要請はあったのだ。ベトナム戦争のときもうそうだ。韓国のように参加したのか。そしてアフガン戦争では。イラク戦争ではどうなったのだろう。現在時点でいえば、イスラム国の攻撃には加わることができるのだろうか。こうした過去の事例を取り上げて、明確に議論してほしい。それが具体的でわかりやすい議論であろう。
アメリカが北朝鮮がミサイルを撃とうとしているという情報を日本に向けて出す。ミサイル基地の先制攻撃の要請が来た。北朝鮮は建前は気象衛星の打ち上げと主張している。この時に日本の自衛隊は、集団安全保障に基づき、北朝鮮のミサイル基地を攻撃することができるようになる。果たして日本の安全は高まるのであろうか。世界情勢がより危険が度が高まっているという情勢判断である。中国の武力的圧力の増加ということが言われる。中国と領土問題になっている尖閣諸島を国際司法裁判所に提訴することが、日本人の安全を高めるのではないのか。わざわざ棚から下ろしたのは石原氏のやったことだ。その意図は憲法改定である。中国のアジア進出をさえぎるために、わざわざ中国との対立を高めたのだ。日本人の生命を守るためには、どういう選択が正しいのか、正面から議論してもらいたい。