2、戦争のリスクをどう見るか
昨日の続きである。状況を考えると、今回の日米軍事同盟の強化は、日本及び、アメリカの世界企業を守る武力協力が第一の目的とみると分かりやすい。次が、巨大な武力で小さな集団の異なる価値観を抑え込む為に、少数派の蜂起をすべからく正義に反するという事なのだっろう。その結果、日本の武力的な安全保障は、リスクが下がる側面と、むしろリスクが高まる側面との両方が、考えられるという事になるのだろう。リスクは武力による反撃を恐れて、攻撃を抑制すると言う事である。リスクが高まるのは、強者の側に立つことで、日本の戦後70年やっと定着してきた、中立性、平和主義が、方向転換したとみられる事であろう。勿論日本は戦後一貫してアメリカの核の傘の陰に隠れて、自己主張を控え、要領よく戦争を回避してきた。その理由として、事あるごとにアメリカの自ら指導した、平和憲法があると言う良い訳が有効だった訳だ。
ベトナム戦争でも、イラク戦争でも、後1歩で直接的武力攻撃を行う所であった。日本は上手く戦争加担を逃れたがために、参加諸国からは、お金で事を済ます汚い奴だ呼ばわりをされ、良くは言われなかった。しかし、韓国の様に積極的に戦争参加した国が、良い目にあったという訳でもない。一方に、日本は武力を使わない、中立的な国だと言う印象を世界に与えることには、わずかに貢献したのではないだろうか。今後、安倍氏の言うように、世界の戦争の危機が高まっているとすれば、大抵の戦争に首を突っ込むアメリカが、日本に対してどういう要求をするようになるかである。一緒に戦ってくれと要請する事は眼に見えている。何度も日本はそういう要請を受けてきた。今も、いつの間にか、ウクライナやクリミヤの問題では有志連合国の一つになっていた。
今回の安倍アメリカ議会演説が、一定の評価を受けたのは、今後はアメリカの言い成りになりますと、受け取られたからであろう。それでも、公明党の粘りで、国会の議決が無ければ参加できないという歯止めはあるようだ。果たしてこの歯止めが有効であろうか。この歯止めが有効であるくらいなら、今回この法律は承認されないはずだ。それでも多分あっというて気な多数である政府案は承認されるだろう。歯止めが有効であると公明党は主張するだろう。アメリカの要請を断れない事は、辺野古基地が由一の方法と考える自民党の姿を見れば、分かる事だ。辺野古以外に様々な道はある。しかし、アメリカがそのように主張する以上、由一の道になるのが、これが安倍政権の姿である。幾らただの平和主義が安倍氏の好みに合わないとしても、積極的という事が、アメリカとの軍事同盟という事では平和主義の看板を降ろさざる得ないだろう。
日本の戦後の平和主義は実は、自ら選択した道ではなかった。世界からそう指導された結果、平和主義のように見せかけることで許しを願い出たという事だったのだろう。その曖昧で、方針の定まらなかった平和の道は、70年続いた事になる。その結果、一応の所日本は好戦的な国ではないとみられるような世界での地位が生まれた。今回安全保障の枠組みの改正を行えば、日本を平和国家とは見ない国が出てくるだろう。また、イスラム国の様な蛮行に理由を与える事になるのだろう。はっきりと日本は、アメリカに隷属的に従う事を世界に表明することになる。アメリカ大使館が狙われるような事件が、日本大使館や海外にいる日本人に向けられる可能性も高まるに違いない。テロ集団にそうした口実を与えるに違いない。すべてを防御するなどという事が出来ない訳である。何処から考えて、日本人の安全性は危うくなるだろうと言うのが結論となる。