生活保護は遺伝する発言
札幌の市長選が行われていた。自民党候補が『生活保護は遺伝する』発言をしているそうだ。その候補者は昨日敗北した。この一連の発言が、いかにも今の自民党の本音が出ているようだ。生活保護受給者の数が過去最大を記録している。この発言の背景には生活保護受給者に対する認識不足が根本にある。受給者の内訳をみると、高齢者世帯・・・・43.7%母子世帯・・・・・ 7.4%障害者世帯・・・・11.4%傷病者世帯・・・・19.2%その他世帯・・・・18.4%となっているそうだ。生活保護増大と不正受給者という捉え方なのだろう。貧困層がどんどん形成されている社会を直視する必要がある。それなりの成功者にはその実感の無い人も多いい訳だが、数字的にみれば、貧困が広がっている。格差が強まっているし、さらに今後格差は広がる社会になると見なければならない。世界との競争に勝つためにという掛け声で、競争社会を徹底しようという方向に進んでいる。大企業では過去最大の給与の上昇だそうだ。
給与上昇の恩恵は経済の好循環になって、社会の末端まで回って来ると言う事らしいが、先ずは、格差が拡大したという現実の方がはっきりしている。私は営業農家ではないが、農業者の取り残され方はひどいものだ。どう考えても農業者の所得倍増計画など、どうなったのかと思う。米価が下がり、輸入飼料は高騰し、苦しくなっている。能力主義、競争主義で農業を考えれば、農業をやめると言う選択以外にない。年々割に合わない分野になっている。製造業は工場を海外に移転してしのいでいる。農業は土地に依存して生産しているのだからそういう選択が無い。ベトナムで生産する農業生産法人などという存在と競争しなければならないわけだ。競争という物は必ずしも公正なものではない事は明らかだ。生活保護が人間をダメにする論は一般化している。その考え方すべてを否定するわけではないが、もう少し実態に即した議論をする必要がある。
生活保護の半数を占めているのが高齢者である。その他母子家庭や、様々なハンディ―を抱えた人たち。生活保護をもらわない限り暮らせない人達が沢山いる社会だ。若いころの暮らしぶりを考えれば、自業自得だと言う人もいないとは言えない。それは様々な人生の結果そこに至ったのだろう。その様々な人生を考えずに、すべての困っている人の生活を保護しようという考え方なのだ。日本人である以上そうすることを憲法で決めたのだ。この事を考えるときに、不正に生活保護を受けている人を例として挙げないことだ。受給しない貧困層の問題も別の事だ。生活保護をもらわない限り、生きて行けない人が貰っている。私も需給のお手伝いをした事があるが、そう簡単なことではない。貰ってからもかなりの制約もあるし、調査もある。セイフティネットと言うが、最後の頼み綱である。社会には必要な仕組みなのだ。人間は千差万別であり、能力の高い人は、能力の不足する人を補う事によって社会は成り立つ。
アメリカは格差社会の代表の様な国だが、文化的にキリスト教精神がある。それが社会の救いになっているのだろう。所が日本の様な社会では、どちらか問えば親の祟りが子に報い的な自業自得の考え方が強い。単純な自己責任論になりがちだ。それが冒頭の自民党議員の、親が生活保護を受けているとそのノウハウを子供が身につけるという発言になる。同時にこの人は、大阪は生活保護受給者が多くて、吹きだまりだとまで発言している。今の自民党の競争の正義だけを見る物の見方が良く表れている。勝者こそ正義の思想。人生は運不運もある。病気になりたくてなるわけがない。弱者の側に立つのが、行政の仕事ではないか。すべての人にとって暮らし良い社会は、弱者に暖かい社会である。