田んぼの中干し
瀬戸内の島 10号 手前の点描の海の表面と、遠くの島影の実在感。絵ではこの違いは、筆触の違いになる。水である、島であるという意味はどこに行くのだろうか。
毎年であるが、田んぼの中干しを迷う時期である。やるとするなら1回目は始めていい時期だ。中干しの技術が整理されているのは、大規模稲作の場合である。自然栽培で行う場合は、干し田は田んぼごとに独自の観察が必要となる。自然栽培であれば、出来る限り中干しは行わないで行きたい。それが自然の理であるのだから。一番は茎数の確保ということが、自然栽培では大抵の場合この時点ではできない。平均して20本以下の茎数が普通である。私の20年の経験で、棚田の手植えでこれを越えたことはない。無効分げつを抑えるという中干しはいらない。茎数をどう確保するかが水管理の基本である。幸い水は地域全体で干されてしまうということが、久野ではないので、最後まで水を入れ続けることもできる。水が自由にならないところでは、自然栽培は難しい。稲という植物の野生の生育の姿を想像すると。河畔で芽を出し、水位が上がるに従って背丈を延ばし、徐々に水位が下がるのを待って、種を実らすものだ。そして冬の間は稲藁ごと河畔に横たわり、春を待つ。
自然栽培でも中干しが必要な時もある。土壌の状態次第なのだが、この判断が難しい。縦浸透の良い田んぼ土壌であれば、棚田にはそういうところが多いいのだが、土は秋まで酸欠になり腐敗方向に進むことは少ない。これも一般論である。田んぼに入り、何となく土壌が悪く、腐敗方向に進みそうなら水を抜く。土のにおい。あぶくの匂い。ズイ虫の発生などで判断する。そして最も重要な要素が、稲の倒伏との関係である。稲は畝どりを越えると、倒れる場合が増える。そこで稲の根元を固めて物理的に倒れにくくする必要がある。その為には相反する要素があるかと想像している。一つは根が最後まで生きていて、稲藁の軸がしっかりしていれば重い穂を支えられて、倒伏しないということだ。自然栽培では、稲の背丈が高くなる。本来の植物の資質が発揮されるために、背丈が伸びる。その分軸も太くなるので、がっちり大柄の稲ということになる。
以下は平均的な中干しの考えである。
font color="blue">●中干しの程度
(1)茎数の多い、葉色の濃い、排水の悪い、粘土質の田は、土面に1~2cm の割れ目が出来るまで干しこのままの状態を保ちます。極端に乾いて日中葉が巻くようであれば、いったん走り水をして再び干し、これを繰り返します。
(2)茎数の少ない、葉色の淡い、水保ちの悪い、砂質土の田には、土面に細かい割れ目が現れるまで干し、間断潅水(注)を繰り返します。
●中干しの終了
中干し期間は一般に2週間程度を標準としますが、生育の寂しい稲は期間が短く、過繁茂生育の稲は長く行います。以上のようにして、中干し終了後に1株20 本の太い茎を残すことを目標に水管理を調節します。
出穂の25 日前以降の水不足は穂の生育に影響が出るので、遅くともこの時期には中干しを終了して入水します。
一度に湛水状態にすると、酸化状態にあった根が、急激な酸素不足により根腐れする場合があるので2~3回走り水をした後湛水とするのがいいでしょう。
●中干し後の水管理
幼穂形成期から穂揃い期までは浅水管理、穂揃い期以降は7~10 日浅水管理後、1~2日落水管理の間断潅水が理想です。
注・間断潅水とは、田面に軽い亀裂が生じるまで干した後、入水および自然落水を繰り返すこと。これにより根に酸素供給し稲体の活力を保持させる。
3)有効分げつ決定期~穂首分化期
この時期は,過剰な窒素吸収を抑え,遅発分げつを抑制し,病害抵抗性や耐倒伏性の強化を図るため,稲の体質改善と生育調節を行う上で重要となる。このため,目標茎数を確保したら,直ちに中干しに入る。中干しは上の効果だけでなく,地耐力を高め,機械作業能率を向上させる効果もある。中干しの程度は,田面に1cm以内の小ヒビが入る程度(足跡がつく程度)を基準とするが,稲わら施用田や生育過剰の水田では強めにし,生育量が充分に確保されていない水田では弱めにする。中干し終了後は,稲体の活力を低下させないために,水分と酸素を交互に供給する間断灌漑を行う。
4)穂首分化期~穂ばらみ期
この時期は,幼穂の発育期に当たるため低温や干ばつなどの影響を受けやすい。また,梅雨明け後の気温の上昇によって土壌の還元化が進みやすいので,間断灌漑を行う。この期間(特に減数分裂期)は低温による不稔障害を最も受けやすい時期なので,低温が予想されるときは可能な限りの深水にして,幼穂を保護する(参照:図説東北の冷害「深水灌漑」)。
5)穂ばらみ期~開花期
出穂直後の穂は物理的な損傷を受けやすく,体内の水分生理の乱れによって,開花・受精にも影響するので,水分補給を重視した湛水(花水)とする。
6)登熟期
開花後は,間断灌漑を行い,分枝根の発生と伸長を促して,根の活力維持に努める。落水時期は機械収穫を考慮し,出穂後30日が目安とされているが,収量ならびに品質の向上のためには,落水時期は遅いほど良く,収穫日と土壌条件によって落水時期を決定する。
欠ノ上田んぼの平均的な出穂の時期は、8月21日である。これは決まりではないが、私の誕生日で覚えている。つまり出穂の出(いずる)ということである。ということは、7月28日までに干しをするなら、行う限界である。まだ、20本の係数確保が出来ていない。上記の2つの記述を較べても考え方に違いがある。慣行農法の中でも様々な干しに対する考えがある。土壌の還元化を防ぐために干しを行うのだとすれば、棚田では干しの意味は少ないと言える。根張りを良くするための干し、根際を固めるための干し。これが今年どの程度必要で、いつ行うのが適期なのか、まだ迷っている。