美味しん坊:鼻血と放射能
国府津の海 10号 海は自由だ。どう描いても良い。どんな色もある。形も自由だ。自分の思いだけを追っていける。
美味しん坊という漫画(作者・雁屋哲)で、福島の放射能汚染の問題が提起されている。放射能によって、健康被害が起きているという主張。大阪のような場所でも、放射能汚染のがれき処理をした為に、健康被害が出ているということまでもが書かれている。杜撰な下調べだ。読んでいないというか、読みたくもないので伝聞である。小田原でも放射能の影響で子供たちが鼻血で倒れている。死んだ者もいるというようなことを言って歩いていた人がいた。たぶん今でもそう信じているのだろう。今になってこのことを漫画として書くのだから、かなり確信的行為であろう。物議になることを覚悟の上で、作品として主張したのだから、かなり思い詰めた結果と想像される。確かこの作者はオーストラリアに住んでいるのではなかったか。ブログを書かれていて、時々読んでいた。考え方は近いところもあると思っていた。以前ブログは炎上して辞めたことがあった。何故、日本を離れたのだろうかと思っていた。
このことで、日豪プレスにインタビュー記事がある。これを読むとかなり本意が分る。自分が福島の原発事故現場を取材して、鼻血が出たという、実体験が出発点のようだ。そこから色々の人にインタビューをして、放射能の健康被害を確信したのだと思う。しかし、大阪のがれき処理に伴う健康被害ということになると、少々行きすぎていないだろうか。原発反対で、天皇に手紙を渡した山本太郎議員の時もむしろ問題化がマイナスに作用した。原発を反対する者こそ、紳士的な姿勢で、冷静な科学的な態度で反対をしなければ、国民全体に反対を広げることはできない。確かに放射能の人体に対する、影響は解明された訳では無い。良い影響があるとして、ラドン温泉の様なものもあれば、放射能が発する地域に湯治する人たちもいる。人体に何らかの影響があるのは確かであるが、福島からの汚染放射能の濃度は、距離によって相当に異なるはずだ。なんでも、ごちゃごちゃに取り上げると、非科学的になる。一定量以下の放射能の影響は、人体の回復機能で蓄積されることはない。
南足柄での、岩手の魚網の焼却処理での反対運動が小田原にもある。全くの汚染が無いとは言えないが、岩手のごみも南足柄のごみも、小田原のごみも、同程度の放射能を含んでいる。持ってきたごみの量は、全体のごみ量から見れば、何万分の一である。何故、岩手の津波被害のごみ処理に協力することを、それほど拒絶しなければならないのか。その原因は、鼻血と同根である。良く分らないが、鼻血が出た。だから、ともかく放射能は避けた方がいい。こうした心理が働く。科学的態度とは言えないだろう。科学的ではない感情的反応で、あるいは戦略的なやり方で、原発反対を行っても説得力がない。むしろ実害が出る。何でも反対の連中だから、相手にしない方がいい位に追い込まれる。原発は再稼働反対である。浜岡が事故を起こせば、都市が近い。法にある過疎地は距離の見直しが必要だ。福島の事故で分った事だ。六ヶ所村の再処理工場は何が何でも止めるべきだ。
反原発の一番の攻めどころは、放射性廃棄物の処分問題である。放射能の健康被害の問題を、安易に伝聞に基づきアピールすることは、福島の被害者を追い込むことにもなる。自分で一定のラインを引いて、それを徹底して守ること。その為に広く沢山の食糧や環境を測定すること。政府には、自ら作ったラインを変えさせないこと。原発事故が起きてしまったということは、受け入れ諦めるしかない。もう悔やんでも仕方がない。今までのすべての人の努力が足りなかったのだ。当事者の安全意識も、反対運動の力量も。国の方向が間違っていたのだ。この事態に至っても、原発輸出や、原発の再稼動ばかり考えているのが政府だ。経済の為にはそれしかないといっても、これは一部の原発関連大企業の為の政策に過ぎない。雁屋さんも当然同じ思いだ。しかし、こういうやり方でオーストラリアから主張をすると、却って異端にされてしまう。