北方4島とウクライナ

   

庭の図 10号 庭は一番描く場である。庭は自分が作った風景である。荒れているように見えるが、自然に対しての「手入れ」である。

ウクライナがいよいよ戦闘状態に入ってきた。世界は不穏である。北方4島が返ってきる場合、そこに住んでいるロシア人はどうなるのだろう。ロシア人はそのまま残って返還という考え方も、以前言われていた。もう何十年もそこに住んでいて、各々の生活も出来上がっている。出ていけと言われても、そう簡単なことではないだろうということだ。現在4島には17291人のロシア人が住んでいる。面積は国後は沖縄本島、択捉は大きく島根県、ぐらいである。歯舞は小笠原諸島ぐらいで、歯舞が隠岐本島 規模である。誰が住んでいた島かと言えば、そもそもはアイヌの人たちである。アイヌの人たちは、ロシア極東地域から、千島列島、北海道を中心ににすんでいた先住民族である。ロシアも日本も、奴隷的な扱いをしたり、軍事的圧迫の歴史がある。政府は、一度も日本以外の領土に成ったことのない、固有の領土であると断言している。果たしてこういう考え方は、アイヌ民族から考えた場合、少しおかしな考えではないだろうか。

そもそもロシアだけを交渉の対象に考えることが、北方4島ではおかしなことになる。ロシアでは、アイヌの人たちをロシア人の一員であると位置づけて、そのアイヌの人たちの住んでいた場所なのだから、本来北海道までアイヌ人に返すべきであり、アイヌ人はロシアの一民族だという、考え方を持っている。これはウラジオストックの民族展示館にそのような表示がある。ウクライナでも、ロシア系住民というものをどう考えるのかという問題と関連している。なかなかないことだが、もしも北方4島が日本に帰ってきた後、日本人がどれだけ北方4島に移住するのだろうか、どこの過疎地域も同じことだが、産業が成り立たない場所は間違いなく、人口減少地域になるだろう。観光や漁業関係者が移り住むとしても、それほどの移住は起きないと考えた方がいい。この4島にどれほどの税金が使われることになるかは、覚悟しなければならないだろう。そして、日系人が少数派の状態で、将来住民投票が行われ、ロシアに所属したいということになった場合どうなるのだろう。

たぶん、ウクライナと同じで、ロシアの軍事的圧力ということが言われるのだろうか。住民の意志というものがどのように扱われるのか気になるところである。つまり、将来の禍根を残すような解決だけは良くないということだ。私の考えとしては、国後、択捉はロシアのままでいいと思う。そして、どうしても島に帰りたいという人の為に、歯舞、色丹を返してもらえばいい。旧島民のアンケート調査でも、戻るという人は、極めて少ない。先年亡くなった、旧島民の須賀さんという知り合いは、絶対に戻らないと強調していた。生活できるわけがないと言われていた。結局は公共事業中心の離島対策ということになる。一時、2島返還をソビエトが主張したことがあった。日本政府はあくまで4島一括返還を主張して、譲らない為に話はまとまらなかった。領土というものにそれほどこだわる必要はない。どの道住む人もいない北の島に多額の税金を使うことが、日本の為とは思われない。

領土問題は大したことではない。こう書くとたちまちいきり立つ人がいるのを知ってはいるが、出来れば国などという範囲するない方がいい、と考えている。自分が今暮らしているところを、暮らしの土地として、育ててゆく。次にどこの誰が将来暮らすとしても、そこで作り上げる文化が、次に暮らす人に豊かなものとして、役立つようにして行くこと。そういう民族としての歴史を思い出すことだ。私の暮らしは私が死んで消える。しかし、私が十二分にここで暮らし、生きた歴史というものが、日本人という民族に繋がっていて、そこから学んでいるものであることは間違いがない。私的なことが、私で終わらず、民族の文化として、永続するような世界。過去を否定しながら暮らす競争の世界ではなく。過去から学び、未来につなげる暮らし。その為には、領土問題で興奮させられ、戦争にまでなるなんてあまりに馬鹿げている。

 - Peace Cafe