原子力発電所の輸出

   

トルコの原子力発電所建設計画で三菱重工業などに優先交渉権を与えるなどとした「戦略的パートナーシップの構築に関する共同宣言」や、原子力協定の締結などについて合意した。計画は、黒海沿岸のシノップに原発4基を建設するもので、三菱重工業などの受注が事実上確定した。読売新聞

最悪の事態である。日本の原子力事故が終息も出来ない状況で、何故外国に原子力発電施設を輸出するようなことが出来るのだろうか。安倍氏自身が述べるように、経済のためである。お金のためなら何でもやる。ゼニゲバだ。原子力発電を継続するためには、3つの解決すべき条件がある。一つは、安全性である。もうひとつが核廃棄物の処理法の確立である。そして、原子爆弾への道を閉ざすことだ。安全性については、現在審議が続いているところである。まだ完全には事故原因すら分からないと、国会事故調委員が国会で答弁しているところである。地震でどこまで被害があったのかである。その後の津波ではどうだったのか。そして、電源喪失による冷却不能に対してどんな影響を与えたのか。水素爆発が起きたとされているが、それはなぜ起きて、どう制御すればいいのか。安全についても様々不安要素がまだ存在する。これらを、わかりやすく答える義務が事故を起こしたものにはある。

大問題が放射性廃棄物の埋蔵計画である。地中処理が想定されていても、一向に進まない。そして、原発内に水槽を作り、危険な形で貯め込んでいるのが現状である。これは安全性もあるが、政治的な問題でもある。六ヶ所村にこのまま置いておくわけにはいかない。どこの国でも簡単には解決できないでいる。それで再処理問題が出てくる。再処理してプルトニュームを抽出すれば、今度は原爆の問題と絡んでくる。再処理技術は当分確立できない。「再処理してウラン235とウラン238とプルトニウムを取ったあとの高レベル放射性廃棄物をガラス固化して地上管理施設で冷却・保管し(30年-50年)、その後地層処分して数万年以上に渡り隔離・保管する方法である。」日本はこの方針である。しかし、候補地すらない。どこかの過疎地域に押しつけようとしても、さすがに受け入れる地域は今後とも出る見通しもない。これは世界的な傾向であるが、特に日本は地震国であり、何万年という地下埋蔵のリスクを受け入れる地域が出るとは思えない。

放射性廃棄物の日本に溜まっている量たるや、今回福島原発事故で放出した放射能量の数万倍だそうだ。こんな解決困難な状況でも、原発推進が経済のためにと言えるのだろうか。それは、目先の経済のためであり、将来の日本の経済の負担になるばかりだろう。そのように自分の国での始末さえできない、原子力発電所を海外に輸出することはやってはいけないことだ。まず自分の国での3つの問題を解決することだ。解決に何のめども立たないうちに、原発輸出など人間としてやってはいけないことだ。その程度のことが分からないゼニゲバには、なってはならない。経済さえよくなればという人が多いことはわからないではない。しかし、それが国家という単位でそうした理念を失うのでは、美しい国日本が泣いているだろう。

安倍政権は福島で原発事故ああったことを忘れたのだろう。確かに、自民党時代の原発推進政策は、まったく聞く耳を持たないものだった。裁判所も安全で問題が無いを繰り返していた。その結果事故が起きたのだ。しかも、その責任を誰もとろうとはしない。日本がもし原発輸出国になり、そのどこかで原発事故が起きた場合、その賠償を日本政府は取れるのだろうか。すでにアメリカ三菱重工製の原発では、損害賠償請求が起こっている。福島原発の始末さえ付けられないのに、輸出先の原発事故の製造者責任など取れる訳もない。世界の大きな方向は、脱原発である。原発をエネルギーの柱にしようという戦略はすでに失敗だったのだ。失敗にしがみつかず、一日も早く、次に進むべきことだ。自民党政権は過去の高度成長期に戻るような発想しか出来ていない。人から、コンクリートへだ。いまさら原発産業の推進もないものである。こんな陳腐な発想では経済の新展開が出来るわけがない。

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