産業競争力会議の農業政策
政府は18日、日本経済再生本部の下に設置した産業競争力会議(議長:安倍晋三首相)の第2回会合を開き、農業については、林芳正・農林水産相から、現在4500億円の輸出額を1兆円に拡大する目標や、競争力強化に向けて構造改革を加速する方針などが示された。安倍晋三首相も会議の中で「産業として農業を伸ばす。従来の発想を超えた大胆な対策を行う」意向を示した。
同会議は、今後、1)産業の新陳代謝の促進、2)人材力強化・雇用制度改革、3)立地競争力の強化、4)クリーン・経済的なエネルギー需給実現、5)健康長寿社会の実現、6)農業輸出拡大・競争力強化、7)科学技術イノベーション・ITの強化──についてテーマ別会合を開き、集中的な議論を行う。構成メンバーは各委員の希望をもとに決める予定
安倍首相は産業競争力会議において「大胆な農業対策を」主張した。どんな対策なのかとみてみると、大胆どころか旧態依然とした、又かというような主張である。「規模拡大と企業参入」そして、参入する企業への補助金による助成。農業の実体験のない人達は、何度でもここに戻る。これは、普通の農家の競争力を弱めると言う事になる。同じ分野で補助金をもらっている所と、貰っていない所が、市場において競争しなければならないと言う事は、全く不平等である。それを良しとしているのは差別である。仕事のない企業が補助金を貰いたいから、あるいは利益の出ている企業が税金の対策として、農業分野に参入する。それは確かに耕作放棄地を減らす一つの方策ではある。しかし、補助金などもらわないで同じ品目を作っている農家にとっては、不平等な競争を強いられることになる。これが工業製品ならどういう事になるだろうか。大きな企業には補助金が出て、町工場には出ない。こんな競争は許されるわけがない。
何故、瑞穂の国日本を掲げる安倍氏の大胆な農業政策が、こんな国壊しの農業政策に向かうのだろうか。竹中平蔵氏に洗脳されているのか。昨日も参議院の予算委員会の議論で、建設業の疲弊問題でみんなで盛り上がっていた。その最たるものが、現場の大工さんや左官屋さんの老齢化だと、財務大臣が嘆いていた。こんな状況で、大企業の建設業に補助金を入れたらば、益々、現場の中小の建設業者は廃業せざる得ない。ただでさえ、誇りを捨てて大企業に雇用され生き延びようと言う、建設関係者が多い。大企業さえ優遇しておけば、海外の産業との競争力は高まる。これは韓国で先例がある。しかし、韓国国内がどうなっているか、やっと報道もそこに目を向けるようになったが、格差社会になっている。日本が世界との競争を考える時に、その辺の農家ではだめだから、企業に農業をやらせようという発想は、確かに一部の農産物の協総量は高まるだろう。しかし、農業全体は衰退することは明らかだ。日本の産業を支えている力は中小企業であり、小さな農家である。
日本の農業の労働集約的な性格は、熟練の労働力が必要な産業分野である事を示している。大工や左官と同じであろう。だから、狭い耕作地でこそ、高品質な農産物を生産してきた。日本の気候や土壌に適合した農産物であれば、それこそ世界で1番の作物を生産してきた。この一子相伝ともいえるような、農業技術を普遍化することは、極めて難しい。十万羽飼育する養鶏業であれば、雇用労働者で可能であるが、1000羽までの自然養鶏では、到底無理だと思う。産卵鶏養鶏の一番は良い卵を生産することである。良い卵とは生命力の強い卵である。常温で70日生きている卵である。大規模養鶏でそういう一番の卵が生産できるはずがない。何を一番とするかは、確かに人それぞれだろう。安いほどいいというのが、最近の傾向である。しかし、最高の品質を目指すという事を捨ててしまえば、それこそ中国との競争に負ける。中国の規模拡大は日本以上である。
農業の大胆な改革と言えば、農地制度を変えることである。農地を財産と見る考えを変えることである。企業が参入するのは悪いこととは思わないが、工場用地の取得が、土地の値上がりの先行投資であるような形が不安である。、農地を企業が大量に購入し、一応農業を始めるかもしれない。その農地が将来、工場に転用されたり、住宅地に変わったりしないとも限らない。これが外国の企業である場合どうなるのだろう。中国の企業はアフリカの農地を購入しているという事がある。そういう事が出来ないように、どのように担保するのだろうか。企業が倒産し、担保として違う分野の資本が所有した場合、農地はどうなるのだろう。TPPが結ばれれば、そうしたことにも歯止めが無くなる。企業が購入するのでなく、政府から借りると言う形を取るべきだ。政府がまずいのであれば、農地を管理する組織を作る。公的なものが企業に貸し付ければいい。