作物の放射能移行計数
福島第一の放射能は全国、多分全世界中に降り注いだ。海洋の汚染は陸上以上であろう。チェルノブイリの汚染が今でも全世界に残っているのだから、これから何十年影響が続くのである。農業を行い作物を作る者としては、どのように放射能に対して行くかは、考えざる得ない。作物への放射能移行については、把握しなくてはならない。当初はチェルノブイリの事例から、0,1程度であろうと言われていた。そこで稲作など、キロ500ベクレルという暫定基準をもとに5000ベクレル以上の土壌では、行えないことになった。ところが実際沢山のデーターが出てきた中で、それほどは高くないということが見えてきた。ヒマワリなどほとんど放射能を吸収できないということが言われている。一ケタどころか、2ケタ違うと言うデーターが何故か多いのである。移行計数についての整理は、千葉の子供を放射能から守る会の勉強会資料がよく整理されている。
作物の生育のステージで考えた時、栽培途中で放射能が降りかかって汚染されたものと、根からの吸収で作物自体が、汚染したものでは、意味が違ってくる。稲藁のように枯れて田んぼに置かれていたものが、吸着した放射能が何万ベクレルになる場合がある事に似ている。お茶の放射能や、キノコの放射能はそれに近い。キノコで言えば植え付けた木が吸着している場合がある。お茶も樹木自体が吸収した。例えば、春3月に実を膨らませて行く麦は降り注いだ影響が強い。今年の麦は根からの吸収である。稲の放射能は田植えが5月なので、放射能の放出が少なくなってからの事である。その為に今お米に検出されている放射能は、ほぼ根からの吸収と考えてよい。そしてその大半から放射能の検出が無い。もちろん、検出限界の問題があるので、0とは言えないが、10以下と言えるだろう。これは移行計数が、0,1と言うことであれば、100ベクレル以下の土壌と言うことになる。
ところが、1000ベクレルを越えた土壌でも不検出がある。つまり、0,01以下の移行計数と言う結果がある。登米市の稲作のデーターが出ている。様々なデータが出ているが、作物の移行計数は日本の多くの地域で、土壌肥料学会の見解ではもう一ケタ低い0,00台と考えられてきているようだ。このことについては、今後学問的な精査が必要だと思う。安易な結論を出すことはできない。農業を実際に行うものとして、今の所0,0台と考えるようにしたらどうか。つまり土壌が100ベクレル以下なら、0,台の放射能と言うことになる。と言って、小田原のように300キロ離れた地域でも100ベクレルを越える土壌の地域が無いとは言えない。久野であれば平均的に100ベクレル前後であろう。まず農業者は自分の農地の放射能の濃度を計る必要がある。それぞれが自分の圃場の放射能濃度を測定した方が良い。本来なら、その程度の準備は東電がやるべきことだが、どうせ当てにはならない。
何故移行計数が低いのかも解明された訳ではない。土壌の性質によると言うことが一番考えられる。カリウムが存在して、作物に吸収は出来ない土壌であれば、セシュームも似た傾向になる。小田原での実際的な作業としてはプラウで天地返しをすることではないか。反転プラウ(30cm)ではないか。放射性セシウムは深さ15cm~20cm の層に入り、最表層では明らかに濃度は低下した(図1)。2)ほ場の表面線量率は、不耕起:0.66 μSv/h、ロータリ耕:0.40 μSv/h、プラウ耕:0.30 μSv/h。植物による吸収は、ヒマワリの農水省の実験で、移行計数が、0.00674(中間報告)で、除染には使えない。柏市での高濃度地点のように、3月に雨水が流れ込んだ様な地形は要注意。果樹についてはお茶と同じように、長期間付き合わざる得ない。特に常緑果樹は汚染濃度が高い。山の落ち葉は、3月に野外にあったものは小田原でも使わない方が良いだろう。
魚の放射能については、グリンピースが行ってくれた。汚染度合いが最も高かったのはワカサギ(茨城県産)で88Bq/kg。60点の平均値で12Bq/kg。(NDを5として計算)