乳酸菌大活躍

   

現代農業の4月号の特集である。オカラの乳酸発酵について記事を書かせてもらった。読んでもらえればと思う。「現代農業」は農村漁村文化協会の出している、月刊誌である。狭い範囲の知識しかないが、日本で最も期待できる出版社だと思っている。農家の知恵を集める。現代農業の編集方針のようだ。反骨の出版社である。もちろん大きな会社だから、怪しげと言えば怪しげな所も無いわけではないのだが。例えば、どぶろく解禁論。前田敏彦さんと言う方が、マスコミを集めてどぶろくを造る。「作る自由を!」と言う論陣を張る農文協。正面から違法行為を支える出版社。この気骨に、惚れ込んでしまった。都会で絵を描きながら、初めて手に取る、農業雑誌。アーサーミラーの「チェリーブロッサム」である。いつかさくらんぼ農園を作りたい。そういう夢を育ませてもらった「現代農業」

農業に憧れた訳ではない。炎天下の桑畑の延々と続く、草取りをやらされた人間である。ただ、子供の頃から、鶏は好きだった。この小さな眠っていた火種が、手に取った現代農業を開くたび、少しずつ火が吹き上がって行く事になった。鶏が又飼える様な暮らしがしたい。自分の鶏を作出する夢が膨らんでいった。現代農業は都会暮らしの救済のようなものだった。宗教書を読んで、救済されると言うような素直な性格ではなかったのだ。技が技術に展開されてゆく所に、救われてゆく感触があった。実は絵を描いていてもそうで、「技・わざ」という物のない絵が描きたかった。マチスへの憧れである。上手くならないすごさ。誰でも出来る分かりやすい一つ一つで、人間精神の根源に到るすごさ。マチスから出発できる幸運。農家に眠っている、無限の技を技術に育てる、コミュニケーションツールとしての現代農業。

渋谷で「ゆうじん画廊」をされていた、和田敏文氏が書かれた「木内克の言葉」も農文協が出していた。人間選書と言ったと思う。和田さんの絵の見方から学んだものが沢山ある。農文協という出版社については、彫刻家の本を出す出版社としての印象の方が先なのだ。農村漁村文化協会と言うぐらいだから当然かもしれない。『近代化は、あらゆる場面で生産効率を高め便利な生活をもたらしましたが、自然と人間の関係を敵対的なものに変えてしまいました。 農文協は、農と食・健康・教育を軸心として「いのちの流れ」を呼びおこし、都市と農村の関係を変え、自然と人間の調和した社会を形成することをめざして、総合的活動を展開する文化団体です。』杉並にあった農文協図書館には、戦前の養鶏の事を調べに通った。そこで、近藤康男先生に指導いただけた幸運。農文協にはお世話になっている。

是非とも、多くの人に現代農業をささえてもらいたい。回しものでも、差し金もないが、この雑誌は日本に必要な出版物だ。環境問題に感心のある人なら、実用知識が満載だと思う。教育関係者であれば、実践教育の事例が様々にある。観念ではなく実際の技術から、環境や教育に繋がっている。もちろん日本の農業の未来を考える上では、必読書である。それは統計や世界情勢のような上からの情報でなく。農家の声の中に、例えば田んぼの除草技術の一つに、未来が潜んでいる。4月号は乳酸菌特集である。「米ヌカから、ヨーグルトを作る。」と言う記事がある。乳酸菌と言うからには、つい牛乳である。実践的に実用している人達の知恵が、乳酸菌を研究する学者に必ず繋がってゆくと思う。それが普遍的な技術となって、循環型の暮らしを支える技術になる。今回10冊の現代農業の4月号が手許にある。希望される方に差し上げます。是否年間購読者になってもらいたい。

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