「ニンジンから宇宙へ」
「ニンジンから宇宙へ」赤峰勝人著。1993年に出版された本だ。赤嶺氏は1943年生まれだから、現在、65歳。農業高校を出て、ご両親のやられていた農家を、引き継ぐ形で普通の農家になる。その営農をとおして気付く所があり、循環農業を見つける。それがニンジン栽培からだったので、ニンジンから宇宙へという、気付きに至る過程が書かれている。赤嶺さんが中心に活動されている『なずなの会』はきわめて活発な全国組織で、赤峰さんは全国を講演に歩かれているようだ。農の会にも、田中大樹さんという、大分のなずな農園で研修し現在開成町に就農して、循環農園をやられている仲間がいる。11月29日(土)彼が中心になって、講演会を開催する。田中さんの師匠への思いの籠った講演会だ。開成の福祉会館のホールで行われる。。申し込みは笹村まで、メールでsasamura.ailand@nifty.com までどうぞ。地域で赤嶺さんの話が聞けるということは、本当にありがたいことで、今から楽しみにしている。
こうした農業のスーパーマンは実は全国に存在する。この時代に専業農家を続けているような人は、色々の意味で桁外れの人ばかりだ。丸で哲学者なのかと思うような深い言葉を、言われることが多々ある。それが、少しもぶっていないから、胸にしみる。農業に引きこまれてしまったのは、たぶんそうした人との出合が、あったからだと思う。足柄平野にも10人は存在する。それまで出会う人は、絵画の世界の人。あるいは教育の世界の人。どちらかといえば、人間の情けなさを痛感するようなことが多かった。僧侶の世界で、本当の人間を見せてもらっていたことが、生意気にそんな感想を持つようになったのだと思う。所が、農業に触れるようになって、すごい坊さんと同じような、人物に会えたのだ。宗教家が脱俗ですごいなどとは思わない。欲得までむき出しですごいと思っている。
農業スーパーマンは先ず、体力がすごい。驚くほど働ける。赤峰さんは武道家でもある、多分そこが一番の根だろう。小さな人でも、怖ろしいほどの体力がある人がいる。暗いうちから、暗くなっても働き続けて、疲れない人。最も遠くの存在だけに、はるかな畏敬の念がある。それは、子供の頃から働き続けなければ、到達できない世界。そこから出てくるものは風格。面壁9年程度は当たり前の世界。身体でのみ到達できる、世界観。そうした人の中に、突然変異のように、一般世界に飛び出してくる人がいる。道元禅師だけでは宗教にならないように、自分の農業の普及活動に奔走する人が現れる。赤峰勝人氏はまさに、その代表格といえる。農業分野の末端にいる以上、一度は話を聞いておく必要があろうかと思う。
ニンジンに宇宙の循環の真理が存在するというのは、良く判ることだ。風景画で言えば、草1本たりとも間違った、風のなびき方などしないという事だろう。全ての調和は循環に存在する。調和を崩すと言う事が、人為。人の生きると言う事は随分困ったことだ。その困った存在が、宇宙の循環に入り込むことは出来るのか。畑が、自然に見えることがある。人為が手付かずの自然を越えていると見えることがある。これが、農業のすごさではないか。世界調和を新たに作り出せる仕事。だから川口さんなら、妙なる畑と呼ぶのだろう。どのくらい、自然の循環に沿うたとしても、人間わざはそれだけでは見苦しい物だ。それを作物は補ってくれる。そのありがたいかかわりが持てるか。だから、最小限の畑は美しい物でなければ成らない。美しいと言う事は循環して行くということでもある。
昨日の自給作業:肥料撒き1時間 累計時間:41時間