WTO交渉始まる。
農業者にとって、生活のかかったWTO農業交渉が始まった。今回の交渉が決裂すると、通商交渉全体が、決裂の恐れがあるといわれている。ドーハ・ラウンドと言われている自由貿易の確立を、目指している。問題点を整理すれば、農産物にある関税を、世界中一律の上限を決めようと言う、荒っぽいことが進められようとしている。甘利明経済産業相の閣僚発言では「農業交渉の結果は日本国内に痛みをもたらす」と指摘。「鉱工業やサービス分野でその痛みを十分に相殺できなければ、ラウンドの成果は国内で評価されない。」具体的にお米でいえば、現在の関税額は1キロあたり約340円。 日本政府の妥結目標は約180~260円程度にしたいと言う事らしい。最新の交渉議長案では、先進国の農産品については、「一般品目」と、各国が保護したい「重要品目」に分けて関税を引き下げる。重要品目の関税の削減幅は、一般品目の削減幅の3分の1~3分の2にとどめる仕組みのようだ。
日本農業など、トヨタ一社よりちいさい。こう発言した経団連の役員が居た。海外現地法人からの配当や利子など対外直接投資であげた収益額は2007年度に初めて5兆円を突破。利回りにあたる収益率も9%強と5年で倍増し、債券などの対外証券投資利回りを大きく上回る。法人企業統計でみた07年度の全産業の経常利益(四半期ベースの合算)、約57兆円の1割近いものが、日本企業の海外からの収益だそうだ。日本人の暮らしの、海外依存が急速に進んでいる。良かれ悪しかれ、こうした方向は、さらに進んでゆくだろう。農業分野で考えても、日本企業が、海外で日本向けに生産する形が登場するだろう。関税が低くなれば、安い賃金を求め、安い土地代を求め、より適する気候を求め。農業の海外進出が起こる。日本人にとってそれでいいのか。人間にとってそれがいいのか。大いに考える場面だ。
日経新聞では「WTO交渉を農業改革の好機とせよ。」こういう社説を掲げている。どういう改革かと読むと、日本は国内農業の生産性を高める改革を進めるべきである。と書くだけで、具体的にどんな農業改革をすれば、生産性が上がるのか。一切が書かれていない。書こうにも具体的には何一つ書けない筈だ。生産性の効率化を求めて、企業の海外移転が起こった。農業だけが別物とはいかない。生産性だけで全てを図れば、企業は海外生産になる。まるで、農業分野の努力が足りないようにも受け取れる、発言をするなら、具体的な農業改革を書くのが、報道の責任ではないか。農産品の関税が高い事は、消費者の不利益だと書いている。今時、こんな古臭い、カビの生えた論拠とは、驚く。経済の基本も理解していない、日経の論説委員とは、日経新聞の最近のレベル低下はすごいものだ。
関税が下がれば、食糧自給率がさらに下がるだろう。工業品が売りやすくなれば、その方が日本経済には有利で元が取れるのだからかまわない。国家経営を企業経営のように考えている。何故、食糧は国内で生産すべきか。お金があっても、買えない時代が、遠からず来るからだ。無いとなれば、石油の比ではない。投機対象にもなるし、背に腹は変えられない。穀物価格は忽ち数倍になるだろう。それでも食べない訳にはいかない。食べ物を抑えられれば、ぐうの音も出ない。人が暮す。人間が生きる。この基本線は食糧の自給だ。その上で、自由貿易もいい。食糧の自給をないがしろにして、これ以上進む事は、日本人の崩壊に繋がる。この食糧自給の前提は、消費者の利益でもある。本来、WTO交渉から、食糧ははずすべきだ。入れるとしても、他の工業製品と同列に扱う事は、間違っている。
昨日の自給作業:ジャガイモ堀り等2時間 累計時間:21時間