食料・農業・農村基本計画
昨年3月今後5年間の日本農業の方向を決める、基本計画が閣議決定された。「攻めの農業」を旗印に、1、年間1%ずつの自給率の向上。2、農地の集積。3、環境保全と関連させる。4、食の安全の確保。などが方向付けられた。
1年が経過して、その結果はどうだったか。先ずわかりやすいのが、自給率の向上が推進されたか。現状はむしろ、実現どころか更に低下の方向にある。この基本計画では、畜産飼料の自給、と言う事が自給率の向上の考え方にあった。休耕地や転作を飼料用作物の生産に結びつけることが方向付けられた。すばらしいし、可能性があることだ、但し経営的に可能なやり方が提案されなければ、取り組みは増えないだろう。と見ていた。休耕地は更に増加の方向にある。田んぼに牧草を作って、飼料作物にするという発想は、良く無い。田んぼでお米を作り、余る分を備蓄米として食料安全上、多量に保存する。そして翌年にはこれを飼料米として、利用する。この流れを作ることが飼料自給の唯一の道。
農地の集積は進んでいる。集落営農が、最初の大枠より運用ではかなり取り組みやすい形で、先ずは定着させる方針のようで、地方から取り組みは進んでいる。集落があるいは地域が、一つの農業会社として経営してゆく、と言う考え方で、その集団性の問題点と、合理性とが混在している。取り組み方によっては経営的可能性が出てきているのだろう。しかし、集団に入れない小さい農家は、更に外に出てしまった訳で、日本農業の抱える、農家が経営体では無い、という問題はここでは更に、深刻化していると思う。集団から取り残される不安。しかし、個別的な農家の事情の複雑さ。
環境保全を織り込むのは、どの政策も同様で、環境を盛り込めば了解が得られやすいと言う事なのだろう。それくらい具体性を見れなかった。バイオマスと言う事も盛り込まれていた。農産物や、農業、あるいは食品残渣をエネルギー資源として見直すと言う事が、簡単に良さそうに言われる。稲藁から、エネルギーを取り出す研究への支援をする。食べる物で無いものを生産する農業、安全性と関係の無い農業の登場。遺伝子組み換え作物の開発、化学肥料、農薬を多用する農業。環境破壊型農業。森林や草原を、化石燃料で農地として開発して、バイオマス資源の農地に転用する。資源の節約になるのだろうか。2酸化炭素の削減になるのだろうか。暮らしの方はより快適を求めて、自然から離れる方向で温存したまま、循環型社会の模索は不可能だ。農業が経営効率を求める中で、すでに土壌からの搾取型になっている。この傾向が、バイオマスはより深刻化する方向に現状なってきている。
食の安全が言われたが、この1年、鳥インフルエンザやBSE牛の問題がさらに深刻化した。アメリカからの牛肉輸入は結局、押し切られる形で解禁。鳥インフルエンザは深刻な予兆として、再発。どちらも畜産における安全性の方向が見えないまま、何の手も打たれない中、ただ国民が悪く慣れてしまうことを待っているだけ。報道が飽きたし、解決は見えない。大規模畜産が不可能と言う現実の一端が、見え隠れしている。鳥を何十万羽一箇所に飼うリスク。これに気付かず、より工業的な自然から離れた養鶏を推進すれば、必ず畜産由来の新しい病気は登場する。不二家の食品工場を見ればわかる。食品工場ですら、ネズミが出る。養鶏場でどう管理すれば、自然から遮断できるのか、現実には不可能な理屈だ。
基本計画の1年目は、集落営農の今後が注目点と言う事か。